第230話 (?)、エルゲーナにて悪役令嬢の活躍を見守る
((?)視点)
(?)は、エターナルカームの世界において悪役令嬢の活躍を見守ります。
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「いやはや、若いって良いねぇ」
ファウレーナたちが砦に到着した『人』の定めた聖女とミスラク王国第一王子たちを迎えているのを眺めながら、思わずそう漏らしてしまっていた。
今そこにある光景は、『人』と共にあるのを望んだ彼女だからこそ、実現できたことだと言って良いだろう。
こちらの引いた道筋からは少し外れてしまったが、彼女が望むことを敢えて捻じ曲げるつもりはないのだ。
しかし……まさか、このようなことになるとは……今となっては、彼女のあの選択は正しかったと言うしかないだろう。
このエルゲーナに『人』として生を受けるだけでは、彼女本来の力をうまく使いこなすまでには至らないであろうというのは予測の通りだったが、テラにて生を受けることで(彼女本来の記憶を取り戻さなくとも)これほどまでの力の行使が可能になるとは、正直驚きだったと言って良い。
ついでに、この分体がテラにおいてゲームプロデューサーという立場を得てしまったというのも、これまた予想外のことだったと言って良いだろう。
全ては彼女の選択があってこそのものなのだ。
「願わくは、彼女たちに最高のハッピーエンドを……」
本当にそう願わずにはいられない。
せめて、前回苦しんだ分くらいは取り戻せるよう幸せになってもらいたいものだ。
とはいえ、彼女を応援するにしても、この分体に許容される力の行使は中途半端なものだ。
とかく力の加減が難しい。
介入した結果、エルゲーナごと滅ぼしてしまう可能性も二割ほどあるのだから。
はは、ここからはできるだけ介入を控えることとするか。
また彼女に叱られてしまう。
それがいつのことになるのかはまだ分からないがね。
数十年先か、数百年先か。
その彼女が上機嫌であることを願うばかりだ。
「ふふふ、何にせよ、今生がサブカルチャーの豊富な彼の地で良かったと言うしかないのかね」
正直、テラで楽しんでしまっている己自身に驚いているのもまた事実。
このゲーム会社というのは、異世界の管理代行者たちに活躍の場を与えるのにもうってつけであるしね。
何、『人』の生を願ってしまったのは、ファウレーナに限ったことだけじゃない。
あっちの彼女も、次に動いてもらうことになりそうだしね。
「はあ、しかし、ルーメイラさんの要求レベルも高くて、結構面倒なんだけれどね……」
アドミニストラ システモ デ ダイバーサ モンド。
これを英語ベースのスクリプト言語で動かすのは、意外とうまくいっていて、テラに生を受けた彼女らの資質からすれば、容易とすら言えるのだ。
いや、本当にテラを選んだ彼女の慧眼には恐れ入るよ。
エルゲーナに生を受けただけではこうもうまくはいかなかったろう。
何せ教育レベルも違えれば、科学技術、その技術体系すらも全く違う。
アドミニストラ システモ デ ダイバーサ モンドを動かすための概念をエルゲーナで教育を受けた『人間』たちでは理解できないだろうからね。
とはいえ、エルゲーナでの受け皿を失うという訳にもいかない。
だからこそ、彼女のアニモを二つに分けざるを得なかったのは、正直痛恨だった。
「一応、アニモ間のリンクは、片側制限に留めているけれど……はたして、どうなるだろうか?」
彼女の願いは可能な限り叶えてやりたいとは思う。
とはいえ、テラで生を受けてしまった彼女をエルゲーナに送……いや、それはエルゲーナの彼女がうまく対処してくれるだろうか?
何にせよ、この分体でしてやれることは限られているのだ。
多少は大目に見てもらいたいというのは……ケチ臭いと言われるだろうか?
最低限でも、エルゲーナで生を受けた彼女がその生を終えるそのときまでこの分体でサポートするということで勘弁してもらえないだろうかと思ってしまうのだった。
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