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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
227/322

第226話 悪役令嬢、このゲームの終わらせ方について考えてしまう[一部修正]

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢・ファウレーナは、このゲームの終わらせ方について考えてしまいます。


[『いいね』、いただきました皆様方に深く感謝申し上げます]

 メグウィン殿下、マルカちゃん、ルーファちゃんたちが執務室から戻ってきて、少し休憩をしてから、軽くお昼ご飯を取ることになったみたい。

 まあ、その何というか、皆、正装しているから、眼福っていうか、とにかくすごい光景ね。

 メグウィン殿下のティアラがキラキラしていてとっても綺麗だし、ドレスのフリルもとっても華やかだし、それと対照的なルーファちゃんの聖国のドレスだって、清楚な感じなんだけれど、これまた細かなレースに聖職貴族らしさが出ていて素敵だしね。

 いやー、これ、昔ながらの手描きアニメなら、ドレスの作画が大変なことになりそうよね。

 そんなことを思ってしまう。


「それにしましても、あの司教猊下が天に召されたときの無様さにはスカッとしました!

 快哉を叫びたくなるっていうのは、まさにあのことですよ!」


「ええ、全くです。

 まさか、殿下にあんな態度を取られるとは!

 司教猊下でなければ、不敬罪で即刻牢にぶち込みましたのに!」


「アリッサたち、気持ちは分かりますけれど、ルーファ様たちの前なのですから、多少は控えて頂戴ね」


「はっ、し、失礼いたしました」


「申し訳ございません、殿下」


 本当に身分に関係なく、ワイワイガヤガヤできるこのメンツが好き。

 まあ公式の場では絶対に無理なんだろうけれど、メグウィン殿下たちは、女性騎士さんとも垣根なく話されていて、なんかすごいなあって思ってしまう。


 ああ、こうやって皆を見ていると、わたし、ゲームやっているつもりで、皆をピンチから救ってこられたんだなって。

 よく救ってこられたよなって思ってしまう。


 だってさ、結構紙一重で命の危機から救えた子だっていた訳じゃん?

 まあ、多嶋さん=神様がわたしのためを思って、わたしと繋がりのある子のピンチを教えてくれてくれていたから、何とかなったんだけれど、正直失敗していた可能性だって十分にあったと思うのよ。


「わたしは……リプレイ不可能な向こうの世界で、やるだけやったのよね?」


 いやー、もう……もし今更時間を過去に戻せるって言われても、もう一回同じことをやり直せる気なんてしないよ。


 それくらい精一杯やったつもり。


 もうすぐわたしのプレイは終わるのだろうけれど、『どうか皆が幸せになりますように』って願わずにはいられない。

 もちろん、わたしのアバター、メリユも含めてね。


「でも、本当にメリユって、どうなるんだろう……」


 多嶋さんに言われるがまま、あの日のメリユに成り代わり、向こうの世界をピンチから救う業務に就いたわたし。

 あの瞬間から、メリユ本人の時間は止まったまま……なんだと思う。


 成り代わるまでは、メリユには本来のメリユが宿っていて、(あのミューラが言っていたように)エターナルカーム本編と同じように周囲に意地悪ばっかりしていた訳で……多分わたしが完全ログオフし、メリユアバターとのリンクを失えば、その彼女本人が戻ってくることになるんだろう。


 そうなれば、メリユの性格は元通りに戻ってしまう訳だし、それに、あのときからこれまでの間の記憶を失ってしまっている訳でしょ?

 だから皆は、そんなメリユに混乱するんじゃないかって思うんだ。

 そして、あのときからこれまでのメリユはメリユでなくて、別の誰か、偽者だったんだって気付いちゃったりするんじゃなかろうか?


 うん、もし……メグウィン殿下たちが、あのメリユが偽者だったと知れば、どう思うんだろう?


「そもそも、わたしは皆の勘違いを正していないもの……」


 だいたい、本物のメリユは、ビアド辺境伯領で密かに国を護るような、聖務(?)だっけ、そんなのをやっていた訳じゃない。


 以前のカーレ殿下、ソルタ様たちがそう認識していたように、本物のメリユは、本当に意地悪な我儘令嬢で……エターナルカーム本編の時間まで進めば、まさに悪役令嬢と呼ばれるまでになってしまうような子なんだ。


 多分わたしが去ったあと、メグウィン殿下たちは[すぐ]あのときからこれまでのメリユが偽者だったって気付くと思う。

 そして、その間のメリユが、別の誰か=偽者=わたしに操られていたことを知るだろう。


 その誰かが、何者かって、彼女たちは気付くだろうか?


 まさか、こちらの世界からわたしが向こうの世界のメリユを操っているだなんて、普通は思いもしないよね?

 今までの話の流れからすると、天使に操られていたとか……そんな風に思ってくれたりするのかな?

 天使、そう、天使ファウレーナ。

 多嶋さん曰く、大天使ファウレーナ。

 いや、本当に多嶋さん=神様、事前に情報操作して、向こうの世界にファウレーナという天使の名前を撒き散らしていたりしないよね?


 まあ、でも……ファウレーナがメリユが去ったという形でなら、わたしも……少しは納得できそうな気もする。


 現実には、わたしがメリユとのリンクを断ち、向こうの世界との関わりも断つことになる訳だけれど、似たようなものよね。

 天界に帰るか、こちらの世界に戻るか。

 いずれにしても、メグウィン殿下たちの世界を去ることには変わりない。


 はたして、彼女たちは偽メリユ=わたしが向こうの世界を去ることを、関係を断つことを、惜しんで、悲しんでくれるだろうか?


 いや、嘘つき令嬢ファウレーナがいなくなった程度じゃ、悲しまない?

 ううん、そんなことはないよね?


 わたし、どうしよう、涙止まらなくなってきちゃった。

 ああ、もう多嶋さん=神様のせいだからね。

 『このゲームが終わった後のことも考えてある』なんて言うから、『終わり』について考えずにいられなくなっちゃった。


「はあ」


 わたしのメリユとしてのロールプレイが終わったとき。

 本当に、多嶋さん=神様は、今わたしが考えている通りの形で、このゲームもどきを終了させてくれるのだろうか?


 ううん、多分違うような気がしてきてる。

 すごく嫌な予感しかしないよ。


 だって、これは向こうの世界のリアルなの。

 タダのゲームだったら、『こんな形でハッピーエンドになったの』『この後のことは、皆で好きに想像してね』で終わることができる。

 世界の問題が解決して、喜び合うヒロインちゃんたちのカップリングを好きに妄想しながら、ホッとしながら終わらせることができる。


 でもね、向こうの世界で、わたし=偽メリユのやってきたことを残すのはあまりにもリスクが高い。


 それくらいは分かるわよ。

 だから、多分、多嶋さんは『辻褄合わせ』をするつもり、なんだと思うの。


「一体どう、辻褄合わせをするっていうのよ?」


 もう一度、多嶋さんのあの言葉について考えてみる。


 『このゲームが終わった後のことも考えてあるから、君は君の思うがままにその力を振るうが良いさ』


 これ、わたしが多少荒ぶっても構わないって意味よね?

 『世界を滅ぼしても良い』とか言いつつ、実のところ、わたしがそんなことをしないって分かっていて、多嶋さん=神様はああ言っていたはず。


 それって、後始末をする準備はできているっていうこと?

 で、一体何をどうする気なの?


「うん……」


 一番簡単な『後始末の方法』をわたしは知っている。


 この手のお話の定番パターンだ。

 『皆の記憶を消す』

 それしかない。

 たくさんの勘違いによって生じた、矛盾だらけの存在、偽メリユ=ファウレーナ。

 それをなかったことにすれば良い。

 そうよね?


 でも、でもね。

 その偽メリユは今『メルーちゃんの姿になっている』


 それもきっと伏線なの!

 多分、そう……そうとしか思えない。

 偽メリユがしてきたことは全てメルーちゃんがしてきたことになる、そうなんでしょう?


 多嶋さん=神様、それで正解なんでしょ?


 『起承転結』の『結』が近付いてきたタイミングで突然現れたメルーちゃんだもん。

 多嶋さん=神様にとってのメルーちゃんの担っている役目くらい、普通に分かるわよ。


「はあ」


 良いよ。

 わたしはメルーちゃんが正しく聖女になれるなら、それで良いと思う。

 わたしのしてきたことだって、全て彼女にあげるのは構わない。

 エターナルカームでメルーちゃんとしてプレイしてきたわたしだもの、別に取られたとか思わないよ。


 タダ、メグウィン殿下たちとの思い出だけは消さないで欲しい。


 彼女たちの記憶がメルーちゃんとのものになったとしても、わたしの記憶だけは消さないで欲しいなって思う。


「はあ、うぅぅぅ」


 涙が止まんなくなっちゃった。

 エンディングまでまだ結構かかるっていうのに、反則だよ、変なネタバレしないで。

 わたしの心が折れちゃうよ。


 いや、さっき、メルーちゃんに抱き付かれて、ハードリーちゃんに心配してもらって、気力は少し回復したかな?

 戻ってきたメグウィン殿下に微笑んでもらって、ちょっとは元気になったかな?


 はあ、メグウィン殿下たちと今のわたしの繋がりまでは奪わないで欲しいと思う。

 ああ、もう、どんな泣きゲーよ。

 これさ、プレイ終わって、メルーちゃんが正ヒロインに戻って、わたしの存在が消えたときが多分一番泣けるよね。


 向こうの世界はハッピーエンド。


 でも、わたしにとってはバッドエンド。

 ゲームじゃないけれど、こんな酷いゲームあるかっての!

 こんな泣き方させるって、本当にないよっ、多嶋さん!


「まあ、覚悟しとけってことなんだろうけどさ。

 それまで、せいぜい、メグウィン殿下たちとの時間を大事に過ごせよってことなんでしょ?」


 まあね、事前予告してくれたのは、ある意味では良かったのかもしれない。

 事前予告なく、戦争が終わって、王国が平和になりました、めでたしめでたしってタイミングで、偽メリユ=ファウレーナの存在が消えて、誰もがメリユ、そんなところにいたっけ? みたいになったら、本気でわたし……絶望しちゃっていたかもしれないしね。


 はあ、こんなことして、多嶋さん、メグウィン殿下、ハードリーちゃんとチュッチュッするの、止まらなくなっても知らないからね。


 ああ、こんなに終わって欲しくないゲームは初めてだよ。


 ここまで来たら、ハッピーエンドまでの流れってもう分かるじゃん?

 多分、王都騎士団とか、聖騎士団とかも集まってきて、味方全員集合みたいになって、敵さんやっつけて、『やったー』ってなるの。

 わたしがいる限り、怪我人なんて出させやしないわよ。


 良いよ、そういう流れに絶対に持っていってあげる。


 ふふ、戦争終わったら……一日か二日くらいは、メグウィン殿下たちと抱き締め合ったりして皆で大喜びする時間くらいは残しておいてよね?

 それくらいのサポートはしてくんなきゃ、多嶋さんの会社には絶対就職してやんないから!


「メリユ様、お茶のご用意ができましたよ」


「お姉ちゃん、一緒に飲もう」


 わたしはハードリー様とメルーちゃんに引っ張られて、皆の笑顔が揃うテーブルの方へと向かったのだった。

『いいね』、ご投票いただきました皆様方に深く感謝申し上げます!


早くも、ファウレーナさんはこのゲームがどう終わるのかについて考え始めてしまったようでございますね……。

本当にファウレーナさんの考えているように終わることになるのでしょうか?

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