第224話 悪役令嬢、多嶋さんのぶっちゃけ話のことを思い出しながら、ダーナン子爵令嬢、ハラウェイン伯爵令嬢と向き合う
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢・ファウレーナは、多嶋さんのぶっちゃけ話のことを思い出しながら、ダーナン子爵令嬢、ハラウェイン伯爵令嬢と向き合います。
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ヒロインちゃん=メルーちゃんに管理者権限を付与した、ね。
まさか、多嶋さんがタイミングを見計らってそんなことをしていたとは思いもしなかったわ。
つまり、それって、わたしが偶然メルーちゃんを助ける形になった、あのときには既にメルーちゃんに管理者権限を付与していたってことよね?
あれ……ちょっと待って、わたしがメルーちゃんの悪漢どもに襲われているところに飛び込むことになったのって本当に偶然?
わたしは抱き付きから、腕にしがみ付く体勢に変わった(尊い)メルーちゃんを眺めながら、そんなことを思ってしまう。
あの流星騒ぎで直接エンジン介入してきた多嶋さんよ?
わたしが(メルーちゃんを害しようとしていた)あの悪漢を足蹴にできたのだって、着地点修正を多嶋さんがしてくれていたんではなかろうか?
「あり得る……」
そうだよね。
わたしがベースシナリオを狂わせたようなことを言っておいて、都合の良いように、わたしを掌の上で転がしているのは、やっぱり多嶋さんなんじゃないの?
うん、今そう考え直してみると、普通にゾッとしちゃうよ!
異世界の神様がわたしを手駒として使って、動かして、向こうの世界の運命を書き換えようとしていたっていうことだよね?
それも、エターナルカームっていう乙女ゲーを伏線扱いにしてまでして、準備をしてきたってこと、なんだよね?
じゃあ、わたしが、わたしたちが……テスターとして、エターナルカームを繰り返しやったのは、テスターの中から向こうの世界を救える『人間』を探すため?
そして、向こうの世界、特に、キーになる『人物』たちの知識を身に付け、彼らを救うことのできるような、融通の利きそうな『人間』として選ばれたのが……わたしだったってこと、なのかな?
いやいやいや、怖過ぎでしょ?
それって、エターナルカームは、神様たちの未来シミュレーションの一つなのか、それとも、別の世界線の未来の姿だったっていうことなのかも?
それこそ、多嶋さん=神様は、時空すらも超越した存在だったりしない?
うん……まあ、今のわたしも時間跳躍こそできないとはいえ、時間を停止させたり、時間の流れを制御できたりするもんね、神様ならもっとすごいこともできそうか。
う、でも、そう考えると、神様がわたしを『大天使』って皮肉るのも分かる気がしてしまう。
時間を止めるのも、クリップしたオブジェクトを消去するのも、それこそ、アクター=『向こうの世界の人間』を消去することだって、音声コマンドか、スクリプト介入実行するだけで簡単にできてしまうわたし。
メグウィン殿下には打ち明けちゃったけれど、普通にドン引きされるような権限、持たされちゃっているのよねぇ、わたし。
「……お姉ちゃん?」
上目遣いにメルーちゃんに見詰められているのに気付いて、ズキューンってきて、尊死しそうになってしまうわたし。
かわい過ぎんか!?
いや、メグウィン殿下やハードリーちゃんも負けず劣らずだけれど、ヒロインちゃんの甘えんぼモード、心臓に悪過ぎだわ。
「……ふふ、メルーも、いいえ、メルーは、きっとわたしを超える聖女になるでしょうね」
よくまあ、わたしもこんな台詞がすらすら出てくるものだわ。
乙女ゲーをやりまくってきたおかげって言うのか、何と言うのか?
「ええ!?
そ、そんなことないよ」
でも……本当に、わたし、メルーちゃんをよく助けられたわよね?
メルーちゃんがあのタイミングで登場するなんて、このメリユ・スピンオフ……いいえ、この世界でメリユ代役を始めたときに考えてもみなかったもの。
エターナルカームという乙女ゲーでは、十一歳のメリユがこうしてメルーちゃんたちと接点を持つことはあり得なかった。
それなのに、次々と起こる『よくないこと』を何とかするために、ハラウェイン伯爵領、ゴーテ辺境伯領、聖都ケレン、そして、最終的にまたゴーテ辺境伯領と場所を変えて、お爺さんの商隊にくっ付いてきたメルーちゃんと出会いを果たすだなんて、事前予測できる訳ないじゃない?
神様の掌の上で転がされていたのだとしても、一部では、わたしも神様を転がしていたっていう見方もできる訳だし。
わたしがメルーちゃんに変身しているのも、メルーちゃんが管理者権限持ちアクター=聖女になっているのも、全ては『運命』だったと言えるのかもしれないわよね。
「ぅ、運命?」
あれ、もしかして、声に出しちゃっていた!?
まずっ!?
「……そうよ、わたしがメルーを助けることができたのも、こうして、メルーとわたしが聖女として聖なる力を扱える権限を持っているのも、天に定められた運命なのでしょうね」
「そう、だよね?
あたしが、お姉ちゃんたちと出会えたのは『運命』、なんだよね?
絶対にそうっ、あたしだってそう思うよ!」
うぅっ、そんな目を潤ませながらに言わないで!
てぇてぇ過ぎて、お姉ちゃん、どうにかなっちゃいそうだよ!?
「だからね、お姉ちゃん、あたしがお姉ちゃんを超えるとか、そんなこと言わないで。
あたしにとって、お姉ちゃんはずっとお姉ちゃんで、あたしはずっとお姉ちゃんに寄り添って、お姉ちゃんを追いかけていたいもの」
「そう?」
「それに、さっきのお姉ちゃん、あたしを置いて、どこかに行っちゃいそうで、怖かった」
あ……そういう風に聞こえちゃったのか?
まあ、でも、わたしもそれを意識していなかったのかと言われると嘘になる。
だって、多嶋さん=神様だって、メルーちゃんという聖女を誕生させたら、わたしはお役御免みたいな雰囲気を出していたしね。
もちろん、オドウェイン帝国を何とかするまで、わたしがお役御免になることはないんだろうけれどさ。
それでも……この世界の本来の聖女は、あなただもの。
「お姉ちゃん?」
ありゃ、ちょっと怒っちゃった?
ふふ、さすがは、メグウィン殿下とハードリーちゃんを陥落させた、察しの良いヒロインちゃんね!
「大丈夫よ。
ご聖務が続く限り、メルーとわたしは、お互い、聖なる力、聖力を満たし合いながら、この世界を護っていくのだから。
これからもよろしくね、メルー」
「もう、お姉ちゃん! 当然だよ!
あたしだって、お姉ちゃんから絶対に離れないんだからね!」
聖力を満たし合いながら、ね。
わたしもよくそんな臭い台詞、飛び出してくるものだわって思うけれど、それを口にしたとき、メルーちゃんの目のウルッ度が少し増したのにドキリとさせられちゃった。
「っと!?」
急に反対側に引っ張られて何かと思えば、(真っ赤な顔をした)ハードリーちゃんがわたしの腕を抱き抱きして、メルーちゃんから引き離そうとしてる?
「わたしだって、そうです!
さっきのお言葉、本当にゾッとなってしまったんですから!
メリユ様は、こうして捕まえておかないと、勝手にどこかの誰かを助けに向かわれてしまいそうで怖いんですから!」
ああ、察しの良いメルーちゃんだけでなく、ハードリーちゃんも不安にさせちゃっていたかあ。
いやあ、『めんごめんご』って、軽く謝罪を言える空気じゃないよねぇ。
はあ、もう、多嶋さんも罪作りな人……神様だよね。
ゲームの終わらせ方がどうのって言っていたけれど、本当に何を考えているのかしらん?
多嶋さんに言われなくたって、わたしも、メグウィン殿下やハードリーちゃんたちが好き過ぎて、この役目を終わらせるのが……滅茶苦茶怖くなってるわたしがここにいるわよ!
妹分のメルーちゃんだって、一人ここに残す訳にはいかないって思っているけれど、いつかこのゲームのごときロールプレイも終わってしまう!
でも、そんなの、言える訳ないじゃない!
もちろん、わたしの力で、絶対に皆を不幸にしないって心に決めているし、(多嶋さんも想定できていない)乙女パワーを炸裂させて、この世界を一番良い形に変えてやるんだって今もちゃんと思ってはいるよ。
とはいえ、メリユがわたしの手を離れるときは来る。
さっきも考えた通り、そのときは絶対に来るの。
そのときが来たら、メグウィン殿下、ハードリーちゃん、メルーちゃん、マルカちゃん、サラマちゃん、ルーファちゃんたち、カーレ殿下、ソルタ様、ディキル君たちともお別れしなきゃいけないじゃない。
……ああ、ダメだ。
まだ世界も救っていないのに……もうそんなことを考えちゃうようになっちゃった。
そして、それをメルーちゃんやハードリーちゃんたちに悟られるようになっちゃうとか、ヒロイン失格、だよね?
「メリユ様、お涙が……?」
「ふふ、うれし涙ですわ、ハードリー様」
こんなに心配してくれるハードリーちゃんがとっても愛おしい。
ああ、もう……こんなVR使わなくても、多嶋さん自身、この世界に物理的に来れるって言うのなら、わたしも……お別れのときには……ちゃんと連れて行って、最後に一目、皆に会わせてよね?
わたしは、そんな風に思ってしまうのだった。
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(誤字脱字のご指摘、気付くのが遅れ、大変失礼いたしました、、、)
ついにブックマークが100件を突破いたしました。
地味に更新を続けている拙作ではございますが、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます!!
それにしましても、察しの良いメルーちゃん、さすが本編ヒロインキャラでございますね!
とはいえ、ヒロイン力ならメグウィン殿下、ハードリーちゃんたちも負けていない訳で、妹分でなくパートナー分では、お二人の勝ちでしょうか?
悪役令嬢メリユ=ファウレーナさんはもう別れの予感を感じ取ってしまっているようですが、大丈夫でしょうか?




