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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第188話 ダーナン子爵令嬢、ゴーテ辺境伯領城の応接室へと向かい、ゴーテ辺境伯令嬢からの申し出を受ける

(ダーナン子爵令嬢視点)

ダーナン子爵令嬢は、ゴーテ辺境伯領城の応接室へと向かい、ゴーテ辺境伯令嬢からの申し出を受けることになります。


[『いいね』いただきました皆様に深く感謝申し上げます]

 朝食後、あたしはゴーテ辺境伯令嬢様=マルカ様のお呼び出しを受けて、お姉ちゃんたちとは別行動になったの。

 お姉ちゃんたちは、隣国=聖国の聖職貴族様に何か大事な用があるみたいで、予定もいっぱいあるからってことで、あたしは護衛の女騎士様に付き添われて、マルカ様がお待ちの応接室(?)へと向かったんだ。


 うん、信じられないよね。

 このあたしに、女騎士様がお二人も付き添ってくださったんだよ?


 確か、エル様とカーラ様。

 お名前からするに、騎士爵家のご令嬢みたいだし、マクエニ商会の孫娘程度じゃ、ははあって感じしかしないんだけれど、あたしがそのエル様、カーラ様から敬意を払われているっていうのが今も信じられないくらいだよ。


 これも、多分、あたしがその……ダーナン子爵様の庶子って分かって、お姉ちゃんと同じ聖女様(?)であるらしいってことになったせいなんだよね?


「メルー様、こちらが応接室になります」


「今確認いたしまして、扉をお開けいたしますね」


 と、扉くらい自分で開けられるし……。

 お貴族様のご令嬢って、いつもこんな感じなのかな? って思っちゃう。


 扉の前には、お二人衛兵の方がいらっしゃったんだけれど、エル様とカーラ様をご覧になられた途端、ビシッとされて、緊張感が高まったのが分かったの。

 うん、衛兵の方より、お二人の女騎士様の方が身分が高いってことだよね?


 そんなお方に護ってもらっているとか、まるで現実味がないよ。


「メルー様、どうぞお入りくださいませ」


 衛兵の方が一度応接室内に入って、マルカ様の確認を取ってくださったようで、エル様とカーラ様があたしのために扉を大きく開けてくださるの。


 ううん……本当にあたし、そんな敬意を払われるような人間じゃないんだけどな。


 こんなの余計に緊張しちゃうじゃない!


「おはようございます、メルー・サンクタ・ヴァイクグラフォ・ダーナン聖女猊下。

 昨夜はゆっくりお休みになられましたでしょうか?」


 朝日の差し込む、あまりにもキラキラとした応接室で、ウェーブがかったショコラブラウンのお綺麗な御髪をたなびかせながら、おっとり系美少女なゴーテ辺境伯令嬢様=マルカ様がそうご挨拶してくださる。

 お姉ちゃんたちもそうだけれど、やっぱり、お貴族様たちはあたしとは違い過ぎるよ!


 商会近くに住む幼馴染たちに、こんなお美しいマルカ様を見せたら、確実に声も出なくなっちゃうと思うのよね!


「猊下?」


 ……え?


 今のメルー・サンクタ・ヴァイクグラフォ・ダーナン聖女猊下とかいうの、もしかして、あたしのこと?


「ぉ、おはようございます!

 あの、あたしのことは、普通にメルーとお呼びください。

 さ、さ、昨夜はあれほどご立派な客室に、お泊めくださり、感謝いたします!」


「ふふ、メルー様、それでは、わたしのことも……昨夜も申しました通り、マルカとのみお呼びくださませ。

 さて、急なお呼び立て、申し訳ございません。

 大事なお話がございましたもので……その、どうぞおかけくださいませ」


 あたしが立ったまま、マルカ様のご機嫌を窺がっていると、そのマルカ様から椅子に座るようおっしゃってくださり……何と、侍女の方が椅子を引いてくださる。

 大広間の朝食のときもそうだったけれど、あれは『両隣がお貴族様だったから』って思っていたのに、本当にあたしのためにそんなことしてくださるんだ。


「失礼します」


「ふふ、メルー様、本来であれば、わたしの方が失礼のないように気を付けなければならないところなのですの。

 何せ、メルー様は、セラム聖国中央教会……いえ、神より聖女猊下として認められしお方なのですから」


 辺境伯令嬢様に、失礼のないように気を遣っていただくとか、意味が分からないよ!?

 お姉ちゃんの妹分って、そんなに特別な存在ってことになるのかな?


「あの、あたし、ぃ、いえ、わたしはそんな大層な人間ではありませんので」


「いいえ、既にメルー様はメリユ様同様、最重要警護対象となっておりますの。

 メルー様がお持ちの聖なるお力は、王国防衛の要であられるメリユ様にとっても欠かせないお力。

 それを潤沢にお持ちになられ、かつ、メリユ様にそのお力を譲渡可能なメルー様は、王国とってもはや不可欠なお方なのですのよ?」


 さ、さ、最重要警護対象!?

 このあたしが!?


 ぅ、ううん……昨日も似たようなことを言われたような記憶はあるけれど、まるで実感が湧かないよ。

 一体どうしてそんなことになっちゃったんだろう!?


「……やはり、昨夜はあんなことがございましたし、メルー様もお疲れでいらっしゃいましたから、色々ご理解されていらっしゃらないのも当然なのでしょう。

 では、僭越ながら、このわたしからご説明させていただきますの」


 真剣な面持ちになられたマルカ様が、目配せをされるとお茶を用意してくださっていた侍女の方々が応接室から出て行かれる。

 やっぱり、お姉ちゃんに関係するお話って、そんなにも重要重大なことなんだって、あたしはゾクッとするものを感じながら、マルカ様のお言葉を待つことになったんだ。






「お姉ちゃんが……使徒ファウレーナ様の生まれ変わり………」


 第一王女殿下=メグウィン様の目の前で鏡の御柱を出現させられ、ハラウェイン伯爵令嬢様=ハードリー様のおられるところでキャンベーク川の土砂崩れを消去され、マルカ様のお命のピンチに駆け付けられたというお姉ちゃん。


 昨日はね、魔法なのか、聖なるお力なのか、よく分からないまま、とにかく凄いことができるんだってお姉ちゃんの力を受け入れてしまっていたんだけれど……お姉ちゃんは使徒様の生まれ変わりで、神の元ご眷属として、この世の理に直接干渉することができるだなんて聞かされたら、お姉ちゃんの見方だって変わっちゃうよね?


「じゃあ、お姉ちゃんが空から駆け付けられたのも」


「ええ、メリユ様は使徒様だったとき同様、仮初のお姿とはいえ、使徒様のお姿で今もお空をご飛翔なさることが可能なのですの」


 そう……あの悪い大男をやっつけられたときも、直前まで空からあたしを見守っていてくれたからなんだ。


 本当に……凄い!


 これってもう神話に出てくるようなお話だよね?

 使徒様に救われた少女が、実は、その使徒様と姉妹だったみたいな。

 どうしよう、今までの人生の中で、多分、一番ドキドキしちゃってるよ、あたし!


「メルー様、くれぐれも、メリユ様が使徒ファウレーナ様の生まれ変わりであるということは決して触れないようにお願いしますの」


「はい、分かっています。

 お姉ちゃんは……使徒様として扱われるのを望まず、『人』としていたいってことなんですね?」


「ええ」


 元使徒様か。

 あんな悪者相手にも怯まず、あたしを助けてくれたときのことだって、ううん、助けてくれた後、あたしを実の妹のように優しくしてくれたのも、元使徒様だったからって言われたら、すごく納得できるよ。


 第一王女殿下=メグウィン様、ハードリー様もとても良い方々だけれど、お姉ちゃんみたいに誰に対しても分け隔てなく、受け入れるくれるような包容力のようなものは全然違うもの。

 考えてみれば、お姉ちゃんの、今の辺境伯令嬢様っていう高位貴族のご身分で、あんな風に優しく振る舞われるなんて、普通あり得ないもん!


 元にあるのが使徒様、使徒ファウレーナ様の御心で、『人』としてご成長なさったから、今のお姉ちゃんがあるのだと思う。


「それで、メルー様にもう一つ大事なお話がございますの」


「は、はい、何でしょうか?」


 あれ、もう一つ大事なお話って何だろう?

 あのマルカ様がそわそわされていて、何か変?


 お姉ちゃん同様に神から聖なるお力を託されているっていうのは分かったけれど、このあたし相手に、そこまで緊張するようなことなんてあるのかな?


「事後承諾のような形になってしまい、大変失礼なことと存じますが、わたし、マルカ・マルグラフォ・ゴーテに、メルー・サンクタ・ヴァイクグラフォ・ダーナン聖女猊下のディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードとなることをお許しくださいませ」


 ディレクトロ デ サンクタ アドミニストラード?


 確か、それはハードリー様が……お姉ちゃんのディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードだって聞いたような気が?


「ぁ、あの、マルカ様が、あたしの、わ、わたしのディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードになられるということなのですか!?」


「はい、実は、既にサラマ・サンクタ・プレフェレ・セレンジェイ聖女猊下にもご了承いただいておりますの。

 わたしの勝手な立候補で……本当に恐縮なのですが」


 待って待って!?

 辺境伯令嬢様が、あ、あ、あたしの部下(?)みたいなのになっちゃうってこと!?


 さすがに、それは目が回っちゃいそうだよ?


「ど、どうして、そんな……」


「はい、ハードリー様がメリユ様のディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードとして聖なるお力の管理などをされていらっしゃいますように、わたしがメルー様のお力の管理と、聖なるご命令のご練習をお手伝いできればと思いまして」


 ……聖なるご命令のご練習?


 もしかして、あの『ショウ・コンソール』とか言っていたアレ!?


「サラマ様には、耳の良いわたしなら、メルー様のお役に立てるだろうとおっしゃっていただいておりますの。

 聖なるご命令の発声も、色々難しいものもあるようですし、少しでもご助力になれればと思っておりますの!」


 そういえば、マルカ様が偽聖女様を捕まえられたのも、聖国の言葉以外の訛りを感じられたからってお話だったよね?

 お姉ちゃんの知っている、聖なるご命令をマルカ様が聞き取られて、あたしにその発声方法を教えてくれるってことなのかな?


「ええ、そういうことですの。

 万が一の場合には、メルー様にも聖なるご命令を発していただくことになるかもしれませんし、ある程度はメルー様にもお使いになっていただきたいということで、既に話し合われておりますの」


 ……そ、そういうことだったんだ。


 聖なるご命令。


 あたしなんかが、お姉ちゃんみたいな、神のご眷属としてのお力を使っちゃって、本当に良いのかな?

 お姉ちゃんは元使徒様だから、正しく、間違いなく、聖なるお力を振る舞われるんだろうけれど、あたしみたいなおっちょこちょいが使って、大変なことになったりしないのかな?


「ご心配は要りませんの!

 そのために、わたしがメルー様のディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードに着任いたしたく考えておりますの!」


 うん……とってもありがたいお申し出だとは思うけれど、普段会話することもできないような高位貴族のご令嬢様に手伝っていただくとか、正直、申し訳なさ過ぎてどうにかなっちゃいそうだよ?


 でも、多分、これをお断りする方がすごく不敬なことになりそう、なんだよね?


 じゃあ、もうしょうがないのかな?


「あの、じゃあ、お願いします」


「はい、確かに拝命いたしましたの!」


 あたしはマルカ様からお借りしているドレスの背中の部分が痒くなってくるのを感じながら、キラキラした笑顔でそう答えられるマルカ様を眩しく思っていたんだ。

『いいね』、ご投票で応援いただいている皆様方に深く感謝申し上げます!

マルカちゃんの耳の良さ、一応伏線になっていたのでございますが、ここでヒロインちゃん=メルーのディレクトロ デ サンクタ アドミニストラードに着任するのに役立ったようでございますね!


本当に(元々ヒロインサイドだった、メグウィン殿下やハードリーちゃんたち含め)ヒロイン勢を見事自陣に引き込んだ悪役令嬢メリユ=ファウレーナさん、なかなか見事なことかと存じます。


さて、次回でございますが、都合により振替休日の再来週月曜が更新日となる予定でございます。

少しばかりお待たせしてしまい申し訳ございませんが、何卒ご了承くださいませ。

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