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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第170話 悪役令嬢、王女殿下やハラウェイン伯爵令嬢らとの関係を見詰め直し、ダーナン子爵令嬢を受け入れる

(悪役令嬢視点)

悪役令嬢は、自分の正体にすぐ気付いた王女殿下やハラウェイン伯爵令嬢らとの関係を見詰め直し、ダーナン子爵令嬢を受け入れることにします。


[『いいね』いただきました皆様、誠にありがとうございます]

 わたしの力を魔法だと信じて、素直に領城まで来ることを受け入れてくれたメルーたんを連れて、領城の貴賓室まで瞬間移動したわたしたち。

 先に時間の停止状態を解除してから飛んだのは、はっきり言ってわたしのミスだったのだけれど、まさかこの姿=メルーたんの姿のままでいるわたしにメグウィン殿下とハードリーちゃんが抱き付いてこられるとは思いもしなかった。

 そう、ミューラの姿になっていても、メルーたんの姿になっていても、メグウィン殿下とハードリーちゃんには、わたしが誰なのか分かってしまうんだ。


 もうね、頭をこうガツンと殴られたような衝撃だった。


 メルーたんの姿に変身したことに、そして、メルーたんがこのメリユスピンオフに登場したことに、浮かれていた自分が情けなくなる。

 エターナルカーム本来のヒロインであるメルーたんが隣にいても、メグウィン殿下もハードリーちゃんも彼女の方を見向きもしない。

 本当に、わたし=メリユのことをちゃんと見てくれているんだと感じられて、胸の中が熱くなって、苦しくなって、わたしが本来向き合うべきは誰なのかを突き付けられたように思うんだ。


「お姉ちゃん、お姫様にあんなに大事に思ってもらえてるんだ。

 あたし、なんか羨ましいな」


「メルー、何を言うの?

 あたしはあなたのことも大事に思っているんだから」


 口ではそう言えるけれど、多分メルーたんにもわたしの気持ちは見透かされているんだろうと思う。


 最初はタダ、ゲームをプレイしているだけのつもりだった。

 メグウィン殿下もハードリーちゃんも、良くできたAIが反応を生成しているだけのタダのNPCだって思っていた。


 でも、今は……一人、一人の『人間』として、メグウィン殿下やハードリーちゃんたちがとても大切。


 そりゃね、プレイヤーキャラであるメルーたんがここで登場してくれたことで、ちょっと舞い上がっちゃったのも事実だけれど、メリユとして、メグウィン殿下やハードリーちゃんたちの関係を大事にしたいって思いの方が今は遥かに強いのよ。


「メリユ様、メリユ様でいらっしゃいますよね?」


 メグウィン殿下とハードリーちゃんが控室に向かったことで、今まで距離を取られていた銀髪聖女サラマちゃん、ルーファちゃんが近付いてこられる。


「はい」


 やはり、二人にはメルーたんの姿になっているわたしがメリユだと分かりづらいのだろう。

 うん、やっぱり、メグウィン殿下とハードリーちゃんが特別なんだわって改めて分かる。


「はあ、驚きました。

 まさか、そのようなお姿にご変身なさるだなんて」


「へ、変身……?

 ぇ、変身ってどういうことなの、お姉ちゃん!?」


 銀髪聖女サラマちゃんに続くルーファちゃんのお言葉に、メルーたんが不安そうに尋ねてくる。


「ごめんなさいね、メルー。

 あたしのこの姿は、神より賜った一時的なものなの、今はあなたと全く同じ姿になっているけれど、これは仮初のもの。

 本当のあたしの名前は、メリユ・マルグラフォ・ビアドと言うの」


「マルグラフォって……へ、辺境伯令嬢様!?

 お姉ちゃんもお貴族様だったの!?」


 ショックを受けたように、わたしから少し距離を取るメルーたん。

 逆に銀髪聖女サラマちゃんは驚きを隠せない様子で距離を詰めて来られる。


「メリユ様、神よりメルー様のお姿を賜られたというのは本当でございますか!?」


「はい、どうやら彼女もまた聖女として神に認められたようでございますわ」


「「聖女!?」」


 銀髪聖女サラマちゃんとルーファちゃんは揃って口元を手で押さえられて、強く驚かされたご様子。

 まあ、仕方のないことよね。

 本編での聖女匂わせはあったけれど、わたしだって、聖女としてメルーたんがここで出てくるだなんて思いもしなかったのだから。


「し、失礼いたしました、まさか、今聖紀、三人目の聖女が誕生するとは。

 それだけ神も本気で世界の危機にご介入されるおつもりということなのでございましょう。

 ただちにメルー様の聖女認定を行うよう、聖都と王都にいらっしゃる教皇猊下へ早馬を走らせます」


 (身長では今のメルーたん=わたしとそう変わらない)銀髪聖女サラマちゃんが真剣な面持ちでそう告げられる。

 メルーたんはまだ銀髪聖女サラマちゃんのことがよく分かっていないみたいで、きょろきょろとわたしたちの顔を見回すばかり。


「あの、え……聖女って……何が……」


「メルー、急なお話で驚かせてしまってごめんなさいね。

 実はあたし、わたしも聖女で、あなたも聖女なのよ」


「はい、わたくしもセラム聖国の聖女を務めさせていただいております」


「聖女様っ!?」


 一度は銀髪聖女サラマちゃんの紹介はしていたはずなのだけれど、やはりメルーたんは理解できていなかったみたい。

 まあ、メグウィン殿下の紹介があった時点で、普通に混乱に陥ってしまうわよね?


 今はまだ商会会頭の孫娘というだけで、貴族令嬢にすらなっていなかったのだから。


「失礼しましたっ!

 どうか不敬罪だけは、お許しをっ!」


 混乱しておどおどしているメルーたん。

 学院入学直後の、本編のメルーたんを思い出すわね。

 マジかわゆす……でも、そんなことを考えている場合じゃないわね。


「落ち着いて、メルー、あなたはそんなもの気にする必要なんてないの」


「でも、でも、ごめんなさい、ビアド辺境伯令嬢様、いえ、聖女様っ!」


 わたしは無理やりメルーたんの腕を掴んで引き寄せると、そのまま抱き締める。


「わたしのことは、今まで通り、お姉ちゃんで良いの。

 でも、あなたには、聖女としてわたしたちのお手伝いをしてもらいたいかな?」


「む、無理だよ、無理です、あたし、タダの商会会頭の孫娘でしかないんです。

 聖女様とか、お貴族様のお役に立てるようなことなんて、何一つできないんです」


 ふふ、どんな逆境にもめげないメルーたんだけれど、たまにこうなっちゃうときがあったのよね。

 本編では、メグウィン殿下やハードリーちゃんたちに支えられていたっけ。


 でも、メグウィン殿下とハードリーちゃんがわたしに付いてちゃっている今、メルーたん、あなたのこともわたしが守るから。

 多分、これもまたこのメリユスピンオフでのメリユの役割に違いないのだもの。


「大丈夫、ここにいる人たちは皆あなたの味方よ?

 それにここにいれば、あなたの安全は保障されるわ」


「でも、聖女様は……あたしのお姉ちゃんじゃ、ないんですよね?」


 わたしの腕の中にいても、震えているメルーたん。

 本編よりも早く、過酷な現実に放り込まれてしまったメルーたん。

 こんな反応を見せる彼女が、AIだなんてそんな訳ない。


「さっきも言ったでしょう、わたしはあなたの姉になるために神からこの姿を与えられたの。

 たとえ仮初のものであっても、メルー、わたしは姉としてあなたを守るわ」


「……お姉ちゃん、神から姿を与えられたって……どういうこと?」


「そうね、わたしはわたしがなるべき『人』の姿を神より賜っていて、あなた以外にも何人かわたしの大事な『人』になることができるの。

 そして、今のわたしは、あなたの片割れ、あなたの姉として、存在しているの」


「ぐすっ、意味が分からないよ、お姉ちゃん」


 それでも、少しだけ心を開いてくれたようで、メルーたんはわたしに身を寄せてくれる。


「メルー」


「ねぇ、お姉ちゃん、お姉ちゃんはわたしの『出生の秘密』を知っているって言っていたよね?」


「ええ」


 う……まさか、ここでその秘密を明かしちゃって良いのかしら?

 いえ、この展開に至って、わたしがそれを秘密のままになんて……うん、とてもできないわよね?


「メルー、あなたは、ダーナン子爵のご令嬢、庶子に当たるわ。

 だから、メルー・ヴァイクグラフォ・ダーナン子爵令嬢ということになるわね」


「っ!?」


「「ダーナン子爵令嬢!?」」


 わたしがそう告げると、メルーたん以上に銀髪聖女サラマちゃんとルーファちゃんが驚いたような声を漏らされる。


「ダーナン子爵様と言えば、ビアド辺境伯領に近く、数代前にビアド辺境伯家の分家筋から嫁がれた方がいらっしゃったのでは?」


「ええ、なるほど、メルー様も、直系ではないにしても、メリユ様と同じく聖人イスクダー様の血を継がれておられるということになるのでございましょう」


 うん……どういうこと!?

 え、何!?

 まさか、メルーたん、もしかして、メリユの遠縁の親戚だった!?

 そうだったっけ?


「あの、それって、お姉ちゃんは親戚のお姉ちゃんということなんでしょうか?」


 素直に銀髪聖女サラマちゃんとルーファちゃんの会話を聞き、うまく咀嚼したらしいメルーたんが尋ねる。

 うん、多分遠縁の親戚になるってことなのかな……?


 ……えええぇぇぇ!!?

 メルーたんの邪魔をしまくっていた悪役令嬢メリユが遠縁の親戚だったとか、マジ衝撃なんだが!


「かなり遠縁ではございますが、メリユ様と同じく聖女の血の発露があるということでしたら、そう言えるかと存じますわ」


「そうですわね」


「そう、そうなんだ! じゃあ、お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだ!」


「ひぅ!?」


 な、何、メルーたんが急に積極的に抱き着いてきたんだが!?

 わたしはHMDのLEDパネル越しにもはっきりと分かるほど、ギュッとされているらしいメリユの身体を感じながら戸惑う。


 いや……でも、そうか。


 メルーたんは父方の血縁関係が今まで不明で、血の繋がった兄弟姉妹もいなかったのよね?

 遠縁であっても、年近い(……いや、同い年だけれど)親戚のお姉ちゃんがいるとなれば、そりゃうれしいのかもしれないわよね?

 わたしは、タッチコントローラでぽんぽんとメルーたんの背中を軽く叩いてあげる。

 すると、メルーたんが抱き付き直してきて、わたしの視界はまたグラグラと揺れたのだった。

『いいね』、ご投票でいつも応援いただいている皆様方、誠にありがとうございます!


メルーちゃんは、完全妹枠(?)に収まりそうでございますね!

メリユは遠縁の親戚のお姉ちゃんですから、安心でございましょう!?

メグウィン殿下とハードリーちゃんこそ不動のヒロイン枠(?)でございますから!


まあ、何にしましても、エターナルカームヒロインも悪役令嬢メリユと姉妹関係(?)となり、少なくとも悪役令嬢という立場からは完全に脱した様子でございますよね!

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