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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第149話 悪役令嬢、聖国アディグラト家令息に訓示を与える

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、聖国アディグラト家令息と向き合い、訓示を与えてしまいます。


[『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 お前、お前ね。

 まあ大国のセラム聖国の聖職貴族令息としては、ミスラク王国の辺境伯令嬢なんて下に見ているってことなのかしらね?

 初対面時の感じの悪さでは、ソルタ様と並ぶ感じだったけれど……まだ分からないことだらけだし、うん、取り合えずディキル君の感触がどんなものか確かめることにしましょうか。


「失礼いたしました、ディキル様。

 お言葉ですが、ディキル様も、他国の貴族令嬢を『お前』呼ばわりされるのはいかがなものかと存じますわ」


「ふん、お前が偽ビアド辺境伯令嬢なのは分かっているんだ。

 つまり、聖女猊下というのも嘘なんだろう?」


 お、もしかしてミューラの容姿から、違和感に気付いたのかな?

 まあ、仮にも才女ルーファちゃんの弟君だものね。

 それなりに頭も切れるって言うか、情報収集もちゃんとしている感じなのかな?


「偽ビアド辺境伯令嬢とは?」


「小……ミスラク王国の北の辺境伯家は赤毛の血筋だという話だったはず。

 夫人はともかく、ビアド辺境伯令嬢もまた赤毛のはずなんだ。

 その髪の色でビアド辺境伯令嬢を名乗るのは無理があるだろう?」


「なるほど」


 小王国だなんて馬鹿にしていた割には、その小王国の辺境伯家の特徴まで知っているだなんてやるじゃない。

 ふーん、意外と良い目の持ち主なのかもしれないわね。


「そもそも、お忍びで聖都をご訪問されるにしても、第一王女に王国の近傍警護が一人も付いていない時点でおかし過ぎる。

 お前も、聖女を名乗っているクセに、どうして姉上の古着のドレスを身に纏っていたんだ?

 あんなものはいただけない!

 聖女であれば、もっと身の回りにしっかり気を配るべきだ」


 あー、ガラフィ枢機卿猊下に会うのに、聖国風のドレスの手持ちがなかったから、ルーファちゃんのを借りていたからねー。

 そのご指摘はごもっともだわ。

 本来であれば、セラム聖国中央教会の重鎮にお会いするのに相応しいドレスを新たに仕立てるべきところだったんだろうなあ。


 ま、状況的に無理だったけれどさ。


「まあ、耳の痛いことでございますわ」


 わたしが苦笑いしながら、受け流していると、急にディキル君が怒り出す。


「笑うな!

 そりゃあ、僕だって先ほど姉上からアディグラト家の仕出かしたことについては聞かされた。

 僕だって、指摘されれば、思い至る点がなかった訳じゃない。

 しかし、お前たちだって、身分詐称など悪さをして、聖都で何かをしようとしていたのだろう?

 人のことを言えるのか?」


 ああ、うん……そういう風に捉えた訳ね。

 アディグラト家の不正・腐敗の話を聞かされて、そう言えば、そうなのかもと納得できる点はあったんだろう。

 でも、わたしらがしていることは何なのかと。

 銀髪聖女サラマちゃんたちも悪どいことをしているではないかと、そう言いたいんだね?


「では、ディキル様は、わたしたちのことをどう見ていらっしゃるのでしょう?

 わたしは一体何者だとお考えになられていらっしゃるのでしょうか?」


「オドウェイン帝国の動きを掴み、弱体化する可能性のある聖国の聖職貴族に付け込もうとしている第三勢力。

 よりもよって、我が聖国の聖女猊下を巻き込むとは言語道断だ。

 不正に加担したアディグラト家の一員として、こんなことを言う資格はないのかもしれないが、聖国を掻き乱そうとする悪を僕は許す気にはなれない」


 ふーん、意外と、義心溢れる少年なのではない?

 思っていたよりかは、まだマシだったというか、うん、意外と攻略対象に入れても良かったんじゃないかなあと思えるキャラだよ。


 まあ、タダのNPCとは、もうとても思えないんだけれどさ。


「はあ、残念ながら不正解でございますわ」


「じゃあ、何だと言うんだ。

 わざわざ一人、こんなところにまで出向いて、僕と話しているんだ。

 本気で正体を明かすつもりはあると言うつもりなのか?」


「ふふ、わたしの正体は、既に明かしております通りでございますわよ?」


「は?」


 わたしの言葉は予想外だったのか、目が点になったかのように言葉詰まるディキル少年。


「目に見えているものだけが真実だとは思わないことですわ。

 髪の色も、顔、姿も偽ろうと思えば、偽れるものでございますから」


「なるほど、毛染めに変装をしているとでも?

 とはいえ、それにしたって限度というものがあるだろう?

 ……はあ、お前も姉上と同じ頭でっかちな女なんだな」


 おい、最後の台詞は何だ?

 どういうことだ?

 さすがに聞き捨てならないぞ!


「頭でっかちとはどういうことでございましょう?」


「お前も姉上の同類なのだなと言っているんだ。

 誰に焚き付けられたのか知らない。

 それでも、少し良い頭をしているからと良い気になって、うまい話に乗せられただけなのだろう?」


 ああ……やっぱ、ソルタ様の同類だったか。

 エターナルカーム、この辺が微妙にイラッと来るんだよねえ。

 本編は、シナリオライターさんが意図的にやっていたのかもしれんけれど、多分……その手を離れている、このメリユ・スピンオフで、どうしてこんなキャラが出てきてしまったのやら。


「姉上にもいつも言っているんだ。

 そんなに勉強したところで、聖職貴族間の婚姻には何の役にも立たないと。

 むしろ、婚姻を結ぶ相手よりも頭が良いとか、普通に嫌がられるだろうと。

 だから、姉上は婚約者ができないんだ!」


 おま、いくらなんでも失礼過ぎるやろ!

 理系女子としては、超イラッとくる話なんだが。


「なるほど、ディキル様はご自身よりも頭の良い女性はお好みではないと?」


「当たり前だろう?

 僕がいずれ家を継いで、当主になるとして、婚姻を結ぶ相手が僕より頭が良いなんて、うれしい訳がない。

 口煩く家の方針に口出ししてくるような女なんか願い下げだ」


 おい、コイツに一発拳骨落としても良いかなあ?

 ソルタ様と同じく、性格の矯正が必要だろう。

 お前、いつの時代の人間だよ……って、中世ヨーロッパ風の時代設定だったっすわ……。


 はあ、すぐに頭に血が昇っちゃうのはダメね。

 冷静にいかないとね。


「ディキル様、ご自身の伴侶に、そう低くあることをお望みになられるのはいかがなものかと。

 家を盛り立てるのであれば、優秀な女性である方がよろしいのでは?」


「はあ?

 家に入れば、子を成すことが何よりも大事で、あとは社交をちゃんとやってくれるだけで良いのに、なぜそこまで優秀である必要がある?」


 あー、うん、いかにもっぽい中世ヨーロッパ風世界の貴族令息って感じの意見だわ。

 まあ、現代にだって、残っちゃいるところではあるけどさあ。


「では、見方を変えてみましょう。

 例えば、サラマ聖女猊下について、ディキル様はどのようにお考えでいらっしゃいましたか?」


「つい先ほどまでは、そこそこ有能なのではと思ってはいたが?」


 うん、わたしらが何か一緒に何かやっているっぽいんで評価を下げたって訳ね。

 いちいち、癪に障るなあ。

 はあ、ふぅ、深呼吸深呼吸。


「それは、つまり、サラマ聖女猊下は有能なお方で、今後も活躍していただきたく思われていたと?」


「まあ、そういうことで構わない」


「つまり、ディキル様は、サラマ聖女猊下が女性であろうとなかろうと、その一人の個人としての資質、能力には不満はなかったということになりますでしょう」


「うん……?」


 そう、大事なのはこの時代設定でも、ちゃんと活躍している女性はいるということ。

 そして、その活躍が男性にも認められているということなのよね。


「よろしいですか?

 男性がそうであるように、女性も将来の夢や、やりたいもの、取り組みたいと思っているものがあり、それを成すために励んでおられる方々も多くいらっしゃるのですわ。

 サラマ聖女猊下は、まさにその成功例と言えるお一人でしょう。

 例えば、そんなお方がディキル様のご婚約者となられるとして、それをご不快に思われるのでしょうか?」


「ぃ、いや、そんなことは……」


 ふふふ、崩れた!

 前提条件が崩れたよね?


「ええ、ご不快に思われることはないのでございましょう?

 では、サラマ聖女猊下でなくとも、ディキル様の伴侶として、ディキル様の苦手なところを埋められる頭の良いお方が現れたのでしたら、それもご不快とは感じられないのではないでしょうか?」


「ぅ、五月蠅い、話をすり替えるな!

 そもそも、お前の正体の話をしていたのだろう?

 お前が姉上の同類だとして、一体何者なのだと言うんだ?」


 顔真っ赤にして怒鳴っちゃって、やっぱり、男の子だなあ。

 女性に言い負かされるのは、そんなに嫌?

 まあ、男子って、マウント取りたがるもんねぇ、色んな意味で。


「ふふ、今はまだ口に出して言うことは叶いませんが、わたしの姿が仮初のものであるということだけはご理解しておいてくださいませ」


「はあ?」


 できれば、アバターデータの入れ替えをしたいところではあったんだけどさあ、MPが減っちまうかもしれないんで、透明度の変更だけで勘弁したってくださいや。

 多分、この程度なら、一パーセントも減りはしないはず。


「“Set transparency of avatar-of-meliyu to 0.5”」


 はい、一、二、三……


 ミューラの姿のアバターが半透明になるのが分かる。

 手も腕も、何もかもが透けて見えるの。


「え………」


 ディキル君が、また目を見開いて、ううん、目を限界まで見開いて、わたしを見てくる。


「か、身体が、と、透明にっ!?

 ま、まさか、そんなっ!?」


 いや、五十パーセントだから半透明なんだけれどね。


「ふふ」


 わたしは手を伸ばして、ディキル君の手に重ねようとして、それがすり抜けるのを見る。

 うん、コリジョンディテクション(衝突判定)も切っているんだから、そうなるわよね。


「ひ、ひぃぃぃ!???」


 なのに、まるでお化けと遭遇してしまったかのように、悲鳴を上げるディキル君。

 自分の手をすり抜けたわたしの手と、わたしの顔を交互に見て……何と、ディキル君はバタリと失神してしまったのだった!?

※休日ストック分の平日更新です。

いつも『いいね』、ご投票で応援いただいております皆様方に厚くお礼を申し上げます!

はい、ディキル君を攻略し始めてしまったようでございますね、、、

まあ、当面メグウィン殿下、ハードリーちゃんにまず認めてもらえなさそうなので……排除対象となってしまいそうでございますが、どうなりますでしょう?

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