表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
149/323

第148話 悪役令嬢、己の力の大きさに怖れを抱きつつ、聖国アディグラト家令息と向き合う

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、自分自身の力の大きさに怖れを抱きつつ、聖国アディグラト家令息と向き合うことにします。


[『いいね』、ブックマークいただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 正直、どうしてゲーム本編に登場させたのか、謎存在だったディキル・スピリタージ・アディグラト少年は、女性陣の全会一致により、窓のない部屋に閉じ込められることになった。

 ……うん、わたしは『そこまでしなくても』という感じだったのだけれど、皆が怖い笑顔で『今のディキル様にメリユ様の秘密を明かすのはいかがなものかと!』と言うんで反論できなかったんだよね。


 まあ、不敬罪の適用を免除する代わりに、一日半の謹慎という扱いなら、まあ良いか。


「はは……」


 一応、ディキル君は、あの夜が昼になった奇跡をわたしが引き起こしたとは、微塵も思っていない様子で、男の子らしく興奮していたようではあったけれど、大丈夫だよね?

 取り合えず、窓のない部屋なんで、一日以上夜が明けないことに混乱させるようなこともないとは思うけれど、心配であると言えば心配。


 まあ、食事どきに一度くらいは顔を出してあげようかなとは思っている。


 そもそも、攻略対象ですらないのにモブ登場したディキル君には興味あるしね。

 ファンディスクエディション(ダウンロード版あり)で攻略対象になるんじゃないかって予測していたものの、結局出ないまま、今回のメリユ・スピンオフに来てしまった訳だし、超気になる!


「まあ、美少年だし。

 タダ、性格がちょい難ありって感じか」


 まあ、あのアディグラト枢機卿の孫だしねぇ。

 ルーファちゃんが天使過ぎただけで、普通にディキル君のような性格になりそうとは思う。

 ああ……今気付いちゃったけれど、ゲーム本編だと、このタイミングで聖国の聖職貴族の腐敗を何とかできないまま突き進んじゃっていたから、ディキル君の入学時期でもアディグラト家は贅沢できていたんだろうな。

 というか、戦争自体、起きていなかったし……あれは、オドウェイン帝国が戦争を起こすのを数年単位で遅らせていた世界線なんだろうか?


 でもなあ、それだとゲームタイトルにそぐわないんだよなあ。


「戦争かあ」


 ディキル君の謹慎で閉じ込められてすぐワールドタイムインスタンスを停止させたけれど、時間を動かせば、もう数日で戦争が始まっちゃうのか。


 謎MPシステムさえ無視できれば、わたしの管理者権限で……それこそオドウェイン帝国を滅ぼすことくらい訳ないんだよね、多分。


 いや、最初はキューブバリアで何とかするつもりでああ提案して、こんなことになっちゃっているけれど、アクター、オブジェクトを簡単に“Delete”できることも確かなの。

 所詮はゲームのテスターだからと軽く考えていた時期もあったけれど、変に遠慮している間に、色々工作やら暗殺やらされてしまって、身近にいる人たちが命を落としてしまったら……っていう恐怖が今はある。


 そうよね。

 もし今メグウィン殿下、ハードリーちゃん、マルカちゃん、銀髪聖女サラマちゃん、ルーファちゃんたちが命を落としそうって言われたら、オドウェイン帝国の帝都を滅ぼすのも、わたしは躊躇わないかもしれない?


「バッチ自体は、多分すぐ書けちゃうんだよね……」


 特定の範囲内にあるアクター、オブジェクト群のIDリストを取得して、オール“Delete”するだけで、それらはこの世界から完全に消去されてしまうだろう。

 ううん、“Clipper”使うだけでも、跡形なくオドウェイン帝国を世界から抹消できると思う。


 タダ、システムのリアリティが上がっている今、それをやると周辺国を巻き込む未曽有の大災害になりかねないように思っちゃう。

 『土砂ダム』消しただけで、(爆発、爆縮の違いはあれど)気化爆弾並みの威力があったもの。

 もしオドウェイン帝国領全域を“Clipping”して、そのクリッパーインスタンスを“Delete”してしまったなら……核戦争超える被害が周辺国にまで及んじゃう?


 あはは、まさかね。


 ウソでしょ。

 手の震えが止まらないよ。

 うん、分かってる、わたしだって分かってるよ。

 オドウェイン帝国にだって、普通に暮らしている善良な人々がいて……彼らがNPCでないなら、わたしはとんでもないことをしてしまうことになる。


「そもそも、乙女ゲーであんな現象起こせること自体、異常なのよ」


 そう、そんなコードを簡単に書けてしまうこと自体が怖い。

 わたしが怒りに任せて書いた数行のコードで、簡単に国が滅ぶとか、恐怖以外の何ものでもないわよ。


 はあ、多嶋さんたち、そういうところまで含めて、『お試し』しているんじゃないわよね?


「お姉様、新しい水袋をお持ちいたしましたの」


 ワールドタイムインスタンスの時間を停止させた世界で、唯一動かし続けているローカルタイムインスタンスに紐付けられたマルカちゃんが水袋を持ってきてくれたみたい。


 聖国風のドレス姿もまたよく似合っているマルカちゃん。


 着替えを持ち込まずに聖国に来てしまったわたしたちだけれど、古着を提供してくれたルーファちゃんには感謝しかないわよね。

 それに何たって、白や淡い色が基調になっている聖国風のドレス姿が皆すごく新鮮で、最高過ぎるもの。

 てぇてぇ過ぎんか!


「どうもありがとう」


「いえ、ご体調はいかがでしょう?」


「今のところ大丈夫よ」


 わたしは充電済のタッチコントローラで手を動かしてみせて、大丈夫アピールをしてみせる。

 なんか流れでマルカちゃんにまで姉らしさを求められてしまったんだけれど……本編ヒロイン勢のお姉さんになってしまうとか、超絶神展開過ぎんか!


 ……なんて、多少現実逃避もしないとやっていられないわよね。


 わたしが見詰めると、マルカちゃんが少し頬を赤らめてニッコリと笑い返してくれる。

 少し垂れてきた前髪(って言って良い?)が揺れるところまで見えて、そのリアリティの高さにドキリとしてしまう。

 ガラフィ枢機卿に会うために、皆で髪や服装を整えたときのこともはっきり覚えているのだけれど……AIがそこまで行動生成できるとしたら、さすがに、新たなシンギュラリティが起きたかと思ってしまうわよ!


「お姉様?」


「ふふ、何でもないわ」


 わたしはそう誤魔化して、また『晩餐の用意ができたら、わたしの食べられそうなものを持ってくる』というマルカちゃんを見送るの。

 そして、たまたま一人きりになったこのタイミングを利用して、ディキル君に会いに行ってみようと思ってしまったのだった。






 食事の準備も随分手馴れてきてしまった王女殿下や聖女様や貴族令嬢って、どうなのかと思わなくもないけれど、べったりになりつつあるメグウィン殿下とハードリーちゃんが食事の準備で離れてくれたこのチャンス以外、多分ディキル君に接触できる機会なさそうなのよね。

 さっきは食事どきに思ったけれど、多分わたしが会いに行くなんて言うと、絶対皆反対するだろうしなあ。


 ディキル君がメリユ・スピンオフでどんな役目を負っているのか、それともルーファちゃんを出すついでのモブのままなのか?

 少しでも確かめておきたいという気持ちがある。


 だから、わたしは


「“Inactivate collision detection for all objects”」


 コリジョンディテクション(衝突判定)を切って、謹慎中のディキル君のいる部屋に入り込んだのだった。


 客室ではないのだろう。

 窓はないと言いつつ、板扉が締め切られているだけ。

 まあ、窓ないと通常使用でも窒息というか、酸欠になりそうだし、そりゃそうか。


 うん、元は使用人部屋的なものなのかもしれない。

 まあ、ベッドもあるし、(安っぽい)机もあるし、謹慎させるなら、こんなものかなとは思う。


 そして、肝心のディキル君はベッドに腰掛けて、項垂れていた。


「こんばんは」


「ひっ!?」


 扉を開いていないのに入ってきたわたしに驚いたのだろう、ディキル君がベッドの角で飛び上がる。

 そんなお化けにでも出くわしたかのような顔しないでよ。


「誰だっ!?

 ……って、そば……いや、聖女猊下?」


 はあ、今『そばかす女』って言おうとしたよね?

 まあ、そんなにすぐ性格を矯正するとか無理か。


「少しよろしいかしら?」


「は、はい、どうぞ、聖女猊下」


「今ここには、貴方とわたししかいないのだから、そんなに畏まらなくていいのよ」


 ミューラが十六歳で、ディキル君が十一歳。

 で、ミューラの中身のわたしはJD。


 まあ、生意気盛りな小学生男子なんてこんなものかなと思いつつ、眺めてしまう。

 うん、間違いなく美少年なんだけれどね! よき!


「ぃ、良いんでしょうか?」


「ええ、もちろん」


 ディキル君は、恐る恐る、わたしの顔色を窺い、そして後ろに皆の気配がないかも確かめているよう。

 まあ、わたしの『お試し』同じく、試されている可能性ってあるものね?


「はあ……本当に姉上たちはいないんですね。

 で、何の用なんです?」


「ふふ、ルーファ様が助けたいとおっしゃっておられた弟君がどんな方なのかと思って、少し抜け出してきてしまっただけなのよ」


 わたしの答えに拍子抜けした様子を見せるディキル君。

 けれど、お姉さんのルーファちゃんが『助けたい』と言っていたことには、少し反応を見せてくれたように思う。


「はあ、お前、まるで聖女らしくないな。

 一体どんな手を使って、サラマ聖女猊下に認めさせたんだよ」


 それでも、それ以上に素を見せてくれたディキル君にわたしはニヤつくのを抑えきれなかった。

 まさか、見た目年上のお姉さんに対してもこうとはね!

 さて、一丁やったりますか!


 わたしはディキル君が登場した理由を探ろうと、彼と向き合うことにしたのだった。

『いいね』、ご投票で応援いただきました皆様方に心よりの感謝を申し上げます!

また新規にブックマークいただきました皆様方に大変感謝いたします!


お待たせしてしまい申し訳ございません、、、

仕事が立て込んでおり、ペースが乱れてしまい恐縮でございますが、少しまたペースを上げていければと存じます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ