第123話 悪役令嬢、聖国聖女猊下(=サブキャラ)に対する疑惑を抱きつつ、王女殿下との約束を思い出す
(悪役令嬢・プレイヤー視点)
悪役令嬢は、サブキャラである聖国聖女猊下のキャラメイク・AI性能に対する疑惑を抱きつつ、第一王女との約束を思い出します。
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『メリユ様、わたくしは、ぐすっ、教会の不正を正し、腐敗を一掃するためでございましたらっ、この命を、ぐすっ、捧げる覚悟は、できておりますっ!
どうぞ、わたくしの命、いかようにもお使いくださいませ!』
頬を染めながら、大粒を涙を零し、自分の覚悟を語ってくれたサラマちゃんの表情が脳裏に焼き付いて離れない。
尊い、尊過ぎるよ、なんで、サラマちゃんがサブキャラなの?
本当にそう思っちゃう。
本編では一度たりとも出てこないはずのサラマちゃんにここまでの役割が割り当てられてるとか、おかし過ぎない?
シナリオライターさんが意表を突いてきているという可能性はあるけれど、サブキャラにここまでのリソース割いてるっていうのは、正直理解できないのよね?
2022年のAI革命、23年には対話型AIを使用したノベルゲーが登場し、ベースシナリオから外れない範囲で、キャラがユーザからの呼びかけにそれらしい反応を返してくれるようになった。
一方で、エターナルカームは、対話型AIを導入せずに、古き良きノベルゲーとして、そこそこなヒットをしたのだけれど、対話型AIなしという点で一部ユーザーに叩かれたのも事実。
だから、今回のVRテスト版のAI導入は……多嶋さんの会社もとうとう入れたかあという感じだったのだけれど……サブキャラ群全てでAIによる自然な対話でここまで成り立っていること自体、最近の乙女ゲーでもあり得ないレベルなんじゃないのって思えちゃう?
そう、おかしいのよ!
一体どんだけAI用サーバに注ぎ込んだのかって思っちゃうし、これをテスト版で済ますってマジあり得ないって思っちゃう!
「サラマちゃんだけでも、普通に押せるレベルだもんなあ」
「メリユ様?」
いけね、ミュートのままだったわ。
「いえ、このような精密な地図を拝見させていただいてもよろしいものかと思いまして……」
「何をおっしゃられるのですか!
この世にメリユ様に対して隠さなければならない秘匿情報なんて存在する訳がございません!」
ううん……本当にね、サラマちゃんには、タダ『地図見せてくんない?』って程度の協力をお願いするだけのつもりだったのに、どうしてこうなったし!
身長、体格とかはメグウィン殿下、ハードリーちゃん、マルカちゃん、もちろん、わたし=メリユとさほど変わらないのに、サラマちゃん、カーレ殿下と同い年なんだよね?
このキャラメイク、めちゃあざといよ!
マジかわゆす!
こんな傍で、ちょこまかとわたしのために地図の準備をしてくれているサラマちゃんが本当にてぇてぇ!
「(あー、もう語彙崩壊するわ……)」
「それで、メリユ様、聖都のどちらに赴かれますでしょうか?」
「はい、まずはアディグラト枢機卿の御屋敷に向かうつもりでございます」
今はまあ、とにかくアディグラト枢機卿の孫娘ちゃんの救出を優先しないとなあ。
マルカちゃんのときもそうだったけれど、多嶋さんからああいう連絡が来るって時点で、結構危うい状況になってるんだと思うし!
「アディグラト枢機卿邸でございますか!?
ま、まさか、ルーファ様のご救出に!?」
ふーん、孫娘ちゃん、ルーファちゃんっていうんだ。
取り合えず、ここは頷いておこう。
「そうでございますか……いえ、メリユ様のお考えが、それだけであるはずがございませんでしょうね。
では、やはり、アディグラト枢機邸にある不正、腐敗の証拠書類を押収するのも同時に行われるということでよろしいでしょうか?」
うん?
「さ、さすがでございますね。
時間を停止させて、瞬間移動にて、アディグラト枢機卿邸から書類の押収を行い、更に不正、腐敗に関わっている者たちの情報も得ていくと」
え……わたし、今頷いたっけ?
何だか、めちゃくちゃ感心されているんだが。
「ああ、メリユ様、教会の書類関係でございましたら、ぜひこのわたくしめをお役立てくださいませ!
必ずや教会を清浄化させてご覧に入れます!」
えええ、サラマちゃん、何また目をうるうるさせてんの!?
なんか、圧がすごい!
「ぉ、お願いいたします」
「はい、わたくしはどこまでもメリユ様にお供いたします」
ん……ちょって待て、今の話の流れって、もしかしてサラマちゃんが付いてくるってこと!?
いやいやいや、わたし一人で、ちょちょいと聖都まで行って、孫娘ちゃん=ルーファちゃん(?)を救出したら、すぐ戻ってくるつもりだったんだけれど?
そもそもさ、晩餐会の主賓であるサラマちゃんがいなくなっちゃったらマジヤバイじゃん。
「(うん?)」
あー……、待って、今すごく嫌な予感が。
メグウィン殿下たちも晩餐会でいなくなったし、こそっと済ますつもりだったけれど、ここでサラマちゃん連れて行って、もしそれがバレたら……あー、メグウィン殿下たちの好感度ダダ下がりですわ!
いやー、約束させられちゃってるもんなあ、勝手に力を使うなって。
うん、あの約束思い出すと、罪悪感パないですわ。
「(えー、どうするべ?)」
はあー、しゃあない!
晩餐会に向かっているメグウィン殿下、ハードリーちゃん、マルカちゃんもこっちのローカルタイムインスタンスに紐付けして、ワールドタイムの時間停止状態のまま、説明してから行くか!
「メリユ様?」
「ありがとう存じます、サラマ様。
本当に頼もしく存じます!
タダ、出立前に、メグウィン第一王女殿下、ハードリー様たちにお伝えしなければならないことがございまして、少しばかりお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「は、はい、神兵様方に何かお伝えされるということでしたら、ぜひご優先していただければと存じます!」
神兵様………あー、サラマちゃんにまだ勘違いさせたままだったっけ?
うーん、この機会にちゃんと説明し直した方がいいのかなあ?
このときのわたしは、タダ、サラマちゃんの神兵様の誤解を解き、メグウィン殿下たちのご了承をもらって、パパッと聖都に飛び、すぐに帰ってこれるものと信じて疑わなかったのだけれど……まさかあんなことになるとは思いもよらなかったのだった。
そう、ルーファちゃんの救出は、一筋縄ではいかないものだったのだ。
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はい、どうやってサラマちゃんを仲間に引き入れるかという状況だったのでございますが、サラマちゃんが当然のように付いて来ようとしたために、メリユ=ファウレーナさんも(ようやく)メグウィン殿下とのお約束を思い出したようでございますね。
誰にも気付かれないまま、完全時間停止状態で救出を終えられれば、何とかなったのかもしれませんが……サラマちゃんを巻き込んだ時点でそれは無理ですし、メグウィン殿下たちにちゃんと打ち明けようとしたところは進歩かなと存じます、、、
まあ、怒られるのは確定でございましょうけれど、、、




