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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第121話 悪役令嬢、失念していたことを思い出し、動き出す

(悪役令嬢・プレイヤー視点)

悪役令嬢は、多嶋さんからの連絡に失念していたことを思い出し、動き出します。


[『いいね』、ブックマークいただきました皆様方に深く感謝いたします]

「はあ、これ、一体どこまで続くのかしらん……」


 わたしは、晩餐会に向かうメグウィン殿下、ハードリーちゃん、マルカちゃんたちを見送って、ベッドに横たわってから、HMDをずらしてPC版Li-neをチェックしていた。

 多嶋さんとシナリオライターさんからのお試しというか、試練というか、入社試験(?)

 いつまで続くのかしらねーって思ってしまう。


 だいたいさ、エターナルカームってゲームは、戦争ものじゃないのよ。


 永世中立国スイスとまではいかなくても、それっぽい立ち位置にあるミスラク王国を舞台にした中世ヨーロッパ風恋愛シミュレーションゲーム=乙女ゲーなのよね。

 だから、今起きていることは、タイトル詐欺に近いっていうか、いくらメリユスピンオフだとしても、酷いって思う訳!


「前も、戦争っていう要素が入ってきてるからこその管理者権限付与とも考えられるって思ったけどさあ、こんなのわたしらテスターでも、デバッガーに少し足踏み入れてる連中しかマジ無理じゃんよ」


 防音室なのをいいことにわたしはぶつぶつ文句言いながら、Li-neをチェック……って、多嶋さんから何か着てる!?


 えっと、何々?


 『アディグラト枢機卿の孫娘ちゃんの方もそろそろよろ……』

 うわわあ、忘れてたっ!

 えっと、何日放置してたっけ、これ!?

 え、もしかして、減点、減点とかされちゃうのっ!?

 多嶋さんとか、シナリオライターさんをがっかりさせちゃったかなあ?


 あああーっ、マジやっちった!


 いやね、シナリオライター見習いになるつもりも、それに近い立ち位置のスクリプターになるつもりもなぃけ……いや、それはあるのか?

 どっちにしろ、シナリオ進行上、重要なキャライベントを無視してたってか、忘れてたっていうのは、かなりまずいわよね?


 まあ、メグウィン殿下たちと一緒にいるのが超楽しいとか、特にメグウィン殿下に対して姉として振る舞える特権が最高過ぎるとか、そんなので浮かれていたのは否定できないわ。

 マジ油断してたし!


「ぐむむぅ……ま、まあ、ちょうど晩餐会で、みんなもいないし……部屋にいるのは、ミューラだけだし。

 よっし、抜け出すか!」


 前にマルカちゃんの件で抜け出したときはバレちゃったからねー。

 AI制御なしのアクターにメリユのアバターデータを放り込んで、ベッドに寝させておけば、わたしがいないことにならないって感じの対策は準備済なのよ!

 わたし、偉い!

 じゃあ、行くか!


 ………って、どこに行くつもりやねーん?


 アホか、わたし、アディグラト枢機卿の孫娘ちゃんの下調べ、全然できてないやん!?

 うぅ、突っ込みのために似非関西弁が出てきてしまうほど、ダメダメだった。


「……あ、銀髪聖女サラマちゃんいるわ」


 まあ、今はちょっと立場がかなり悪くなっていてねー。

 サラマちゃんが編成した聖騎士団がメグウィン殿下たちの暗殺未遂とかやらかして、聖騎士団は解体、王都送りになって、無関係だったサラマちゃん(とそのお付き)だけが……えっと、同道(だっけ?)を希望されて、(国際的に認められたその立場で)少しでもお役に立てればってことで付いてきてくれてるのよねー。


 いかん、ちょっと放置し過ぎたかな……。


 えっと、普通に考えたら、好感度激下がりだわ。

 メグウィン殿下好き過ぎて、すっかり放置プレイしてしまったぞな。

 スマソ。


「いや、マジでこれも減点食らってそう……。

 っていうかさあ、エターナルカームって、元々ハーレムエンドなしの硬派ゲームでしょう、なんで複数キャラの好感度管理をこうも複雑にやらなきゃいけないのよ!」


 んー、可能性としては、エターナルカームスピンオフ以外のゲームを出す予定とかかなあ。

 今度の乙女ゲーはまさかのハーレムエンドあり?


 何それ、超気になる……。


 一応テスターとしては、複数キャラ好感度管理あるならあるで、把握しとかないとねー。

 ま、今はメリユスピンオフに専念しないと、試練失敗とかになりかねないし。

 よっし、頑張るぞい!






 で、まずはワールドタイムインスタンスに干渉して、時間停止させて、メリユ(予備)アクターをベッドに配置、そして、銀髪聖女サラマちゃんのところに飛ぶと。

 問題は、銀髪聖女サラマちゃんも晩餐会に出席するってことよね?


 ヤベェ、サラマちゃんもそろそろ広間に向かってもおかしくない頃合いじゃん!?


 頼む、間に合ってくれ。

 わたしは時間が静止した世界で、こそこそとサラマちゃんのいる貴賓室への移動を開始したのだ。


「うむ、ルジアさんたち、護衛業務ご苦労」


 真剣な面持ちで、わたし=メリユのいる部屋の警護に当たっているルジアさんたちに敬礼してから、別階にある貴賓室に向かう。


 ……にしても、ゴーテ辺境伯領城も凝り過ぎだよね。


 前来たときも思ったけど、アーチみたいな感じの廊下の天井といい、ハラウェイン伯爵領城の使い回し要素は全くないし、やっぱりAI生成なのかな?

 まあ、調度品の類とか、人間がレイアウトしていたら、元取れないだろうしなあ。


 そもそも学習データの元は、本編時の取材……だけってことはないわよね?

 膨大な学習データが必要なはず。

 本当にどうやっているのかが謎過ぎる。


「あー、そういや、著作権云々って話も謎なのよね?」


 最近は、画像生成系ならライセンス上問題ない学習データセットも世界で販売されているみたいだし、グレーっぽいフリー素材のデータセットもあるみたいだし、そもそもAIに学習させるだけなら著作権問題は発生しないはず。

 タダ、台詞生成系は……版権ありの台詞が完全再現されると著作権問題が起きるとかって揉めていたような記憶もあるけどさ。


 んー、それなのか、多嶋さん?


 今度聞いてみたい。


「おっと、ここか」


 三階の廊下を進むこと、二十メートル、角を曲がったところで、例の二人を見付けた。

 銀髪聖女サラマちゃんのお付きの二人。

 何だっけ、アルーニーとか、ギシュとか、そんな名前だったはず。

 うん、イケ面だ。


 時間止めてると、こう悪戯したくなってくるのは、わたしの性根が曲がっているからなのかしらん?


 まあ、多嶋さんに監視されてるのは分かっているからしないけど。


「えっと……この二人が廊下にいて、向こうから領城のメイドちゃんが向かってきてるってことはぎりセーフってことか?」


 良かったーっ、ていうか、今回もぎりセーフって感じやん?

 多嶋さん、マジ狙ってる?


 ……いや、今回はLi-neの確認が遅れたから、わたしが放置し過ぎたのが原因か。


 何にせよ、間に合って良か……んん、間に合ってなくね?


「あ、時間停止解除したら、お迎えすぐ来ちゃうじゃん!?」


 あああ、これじゃダメだ。

 どうしよう?


 何か、こうね、サラマちゃんだけ時間を……あー、それで『ローカルタイムインスタンス』か!


 そう、メリユだけが今こうして時間停止している世界で動けるのは、ワールドタイムインスタンスとは別のローカルタイムインスタンスを用意しているから。

 サラマちゃんもわたしの使っているローカルタイムインスタンスに接続してやれば、サラマちゃんも同じように動けるって訳よ!


 多嶋さんがNPCでもいけるみたいに説明してくれてたけど、このためにあったのね!


「よし、よっし、何とかなった!」


 わたしはうきうき気分で扉を開けると、貴賓室の中に入っていく。

 そこで蜜蝋のシャンデリアに照らし出されるは、正装姿の銀髪聖女サラマちゃん!


 うはあ、晩餐会用に着替えた聖女サラマちゃん、マジよき!


 髪の編み方も変えているし、白いドレスもレースが何重にもなっていて、聖女っぽくて超かわゆい!

 これは『お姉さんがかわいがってあげよう』ってなっちゃいますわ!


「あれ、サラマちゃんの着替えって誰が手伝って……あー、ハードリーちゃんが部屋に戻ってくる前に寄ってたんだっけ?」


 本当にお世話好きなのよね、ハードリーちゃん。

 ああ、そういえば、伯爵令嬢しかも長女なのに、王太子妃になったヒロインちゃんの専属侍女になってたくらいだもん。

 ……今になってみると、あの後、どうなったのか、超気になって仕方ないんだが。


 よし、このメリユスピンオフ終わったら、シナリオライターさんを問い詰めよう。


「にしても、この髪をハードリーちゃんが編んでたのかと思うと、お姉さん、ちょっと妬けちゃうなあ、あはは」


 わたしは『いつでも出れる』状態の銀髪聖女サラマちゃんに近付いて、サラマちゃんのアクターIDをピックすると、わたしが使っているローカルタイムインスタンスに紐付ける介入処理をコンソール上で進める。


 まあ、そんな難しいことはないんだけどね。


 これくらいはささっとできなくちゃ、テスターでスクリプトバグ見付けられないわよ。


「オッケー、これでサラマちゃんを動かせるわね。

 “Add picked actor to local-time-instance 1”」


 音声コマンド実装で、いつでもできるようにしておくのは大事よね?


 はい、三、二、一!


「っ!??」


 一歩前に扉の方に進もうとされたままフリーズしていたサラマちゃんが動き出すと同時にビクッとなって、目を真ん丸にして、わたしを見詰めてくる。


 あー、真正面にわたしが現れたら、そりゃびっくりするか。


「メ、メリユ聖女猊下?

 はあ、驚きました……も、もしかしまして、今のこれは、瞬間移動でこちらにいらっしゃったのでしょうか?」


 相手がわたしだと分かったサラマちゃんはホッとしたように左手を胸元に当てて、そう尋ねてこられる。

 ふふん、それが違うんだなあ。


「いいえ、この世界の時間を停止させました」


「は、はい………?

 いっ、今何とっ!?」


 カーレ殿下と同い年でありながら、今のわたし=メリユと同い年のようにしか見えないサラマちゃんが顔を引き攣らせる様子に、わたしは思わず『てへぺろ』ってしてしまいそうになってしまうのだった。

※休日ストック分の平日更新です。

いつも『いいね』、ご投票で応援いただいている皆様方、厚くお礼申し上げます!

また、新規にブックマークいただきました皆様、本当にありがとうございます!


はい、悪役令嬢メリユ=ファウレーナさんがすっかり放置してしまっていた案件でございますが、例によって多嶋さんからの連絡で思い出し、動き出したようでございまね、、、

多嶋さんからの連絡……神託かっ!?

ついでに放置されていた銀髪聖女サラマちゃんもお話に絡んでくるようでございますね!

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