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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第120話 ゴーテ辺境伯令嬢、会談の後片付けを見守りながら振り返る

(ゴーテ辺境伯令嬢視点)

ゴーテ辺境伯令嬢は、悪役令嬢とゴーテ辺境伯、ゴーテ辺境伯令息との会談の後片付けを眺めながら、これまでのことを振り返ります。


[『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 お姉様がお休みされていらっしゃる貴賓室に向かったわたしは、殿下=メグウィン第一王女殿下と幼馴染のハードリー様から『お姉様をお支えするのを手伝って欲しい』と真剣な面持ちでお願いされたの。


「もちろん、喜んでお受けいたしますの!」


 そんなの断る訳がないのだわ。

 お姉様はわたしの命の恩人で、我が領の救世主でいらっしゃるのだもの。

 わたしの全てを賭して、お姉様をお支えするのに決まっているの!

 そして、お姉様が『人』としてあり続けたいと願われる限り、わたしはお姉様の妹分として寄り添い続けたいの!


 そんなわたしの思いを殿下とハードリー様にこそっとお伝えしたところ、お二人ともホッとされたご様子で、わたしの手を握ってくださったのよ!


 本当に、本当にカーレ第一王子殿下から、お姉様のことを伺っておいてよかったと心の底から思ったのだわ。


 もしわたしがお姉様を使徒様=ファウレーナ様として崇拝するような態度を取っていれば、きっと殿下とハードリー様から警戒されていたのではないかしら?

 もしくは、懇切丁寧にお姉様のことをご説明いただくことになっていたのかもしれないけれど。






「それにしましても、お姉様、自重されませんのね……」


 神の目でご覧になられている景色の縮図を貴賓室内に浮かび上がらせられたときは、本当に腰が抜けそうになったのだもの。

 昼夜関係なく昼間の明るさで、そして、そこにいる人の動きまで、手に取るように分かるのよ?

 これを奇跡のお力と呼ばずして、何と呼ぶのよ?


 『人』になられていても、元は神の眷属でいらっしゃったというのを今更のように実感させられたわ。

 これほどのお力をお持ちになられているお姉様に、味方についていただいているなんてどれほど幸運なことか!

 全ては神の思し召しなのかもしれないけれど、常に感謝の心を忘れてはいけない。


 そして、今『人』となられているお姉様に何かあってはならないのだから、常にお姉様に寄り添い、お支えしなければならないのだわ!


 そう、そう決意はしているのだけれど……。


「はあ」


 お姉様の補佐役を買って出られた殿下とお世話役をされているというハードリー様。

 お二人が、お父様とお兄様に堂々とご説明されていらっしゃるお姿はあまりにも眩しくて、王女殿下や貴族令嬢であっても、これほどまでに大人相手に立ち振る舞われるものなのだと、感動してしまったの。


 ええ、もちろん、一番は王国で唯一、神より聖なるお力を賜られ、国王陛下からも国防に関してのご依頼を受けられていらっしゃるお姉様なのだけれど……お姉様、殿下、ハードリー様たちは、わたしが望んでいた通りの王族・貴族女性の在り方そのもので、わたしだってきっとそのようになれるのだわと、とても勇気付けられたの!


 もはや、お兄様、いいえ、お父様だって、十一歳の貴族令嬢だからって、お姉様を侮られるようなことは決してないだろうし、むしろ敬意をもってその言動を尊重されることだろう。


 わたしもそのようになりたい。

 そう思わずにはいられないのは当然のことなのよ!


「それでは、バーレ連峰の景色とバリアの方、解除させていただきますね」


「はい、お手数をおかけしますが、何卒よろしくお願い申し上げます、メリユ様」


 お姉様がコンソールに向かって、神への手続きをされていらっしゃる!


 はあ、何て凛々しいお顔をされるのだろう。

 男性、女性関係なく、この世界でお姉様にしかできない御業!

 あまり格好良さに、思わず『ほぉ』と吐息が漏れてしまいそうになる。


「今からバリアの消失に伴い、また風が少し吹き荒れる可能性がございますので、皆様、どうぞご注意くださいませ」


「「承知いたしました」」


 空中に浮かぶ小さなガラスのタイルのようなものを叩かれ、手続き内容を何度かご確認されるお姉様。


「メグウィン様、ハードリー様」


「「はい」」


「「「三、二、一」」」


 パシュン


 お姉様のベッド周囲に広がっていたバーレ連峰の縮図と、天井を貫いていたバリア=鏡の柱が消え去り、その柱に向かって空気が流れるのが分かる。

 あの奇跡のような光景が消えてしまったのは、残念な限りなのだけれど、いつまでも出しておけるものでもないのだわ。


 特に明日の朝までバリアが残り続けていれば、我が領にいる他国の密偵にその異変を察知されてしまうだろうし、そもそもこの領城にだって、密偵が絶対にいないという保証はない。


 お姉様のお力を知っている人間は可能な限り、少ない方が良いというのは当然のことよね?


「……そういえば、歓迎の晩餐会はどういたましょう?」


 お姉様のお食事を最優先に準備させたのだけれど、それとは別にサラマ聖女猊下、カーレ第一王子殿下、殿下=メグウィン第一王女殿下や近衛騎士団の方々の歓迎の晩餐会も準備が進んでいるのだわ。

 もちろん、お父様がご判断されれば、中止というのもなくはないだろうけれど、領城周辺に他国の密偵がいるのだとすれば、きっと怪しまれてしまうに違いないの!


 そう、表向きは、猊下、殿下の皆様を歓迎して歓迎会を催すべきなのよね?


「マルカ様、晩餐会のご準備は進められているという理解でよろしいでしょうか?」


「はい、そもそも、我が領としましては、サラマ聖女猊下の復路にお寄りいただいたということで、対応の準備を進めておりましたので」


「確かに、万一ゴーテ辺境伯領城の動向を他国に探られていた場合、中止というのはよろしくないのでしょうね」


「そ、そうでございますね」


 殿下は少し考え込まれてから、お姉様の方をご覧になられ、


「メリユ様、大変恐縮ではございますが、わたしたちは晩餐会に参加させていただこうかと存じます。

 暫くお部屋を離れることとなり申し訳ございませんが、ご了承いただけますでしょうか?」


 少しお辛そうなご表情でそう告げられるの。


「もちろんでございます。

 むしろ、わたし一人が、先に食事を取る形となってしまい、恐縮な限りでございます。

 晩餐会に参加することもできず、申し訳ございません」


「ぃ、いえ、メリユ様はまだ本調子でいらっしゃらないのですから、優先されるのは当然のことですわ!」


「マルカ様やゴーテ辺境伯領城の皆様にもご迷惑をおかけしてしまい謝罪いたします」


「と、とんでもないことですの!

 お姉様がご回復されましたら、領城をあげて再度歓迎の晩餐会をさせていただきますの!」


 ああ、本当にお姉様の驕られないところが素敵過ぎるの!

 それでなくとも、聖女猊下でいらっしゃる以上、本来はサラマ聖女猊下と同じ国賓同然の扱いでなければならないというのに!


 しかも、こうしてゴーテ辺境伯領の危機をお救いいただけるというのだから、当然それ以上にもてなさせていただかないと気が済まないというものなの!


 わたしは、全てが落ち着いたときには、お礼の意味も込めて、お姉様のための晩餐会をしなければと心に決めたのだった。

『いいね』、ご投票でいつも応援いただいている皆様方に誠にありがとうございます!

そろそろお話を動かすようにいたしますね!

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