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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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プロローグ

『傾きし国と天魔』の姉妹作品です。

テンプレ悪役令嬢+VRゲームで、悪役令嬢の運命を変えるお話です。

プログラミングのできる女子大学生がチート技?を駆使しながら、本来であれば追放されることになる母国を救います。

「は? 乙女ゲーのVR化ですか?」


「ああ、中世ヨーロッパ風のVRデモ環境を試しに作っていたんだけど、せっかくだから、エターナルカームのシナリオでも組み込んでみようかという話になってね」


 多嶋さん、ネットで知り合ったゲーム会社の人から、Zooom上でとんでもない話を聞かされて、わたしは驚きと歓喜のあまり飛び上がりそうになった。

 エターナルカームは、わたしもやり込み済の乙女ゲーだ。

 中世ヨーロッパっぽいけれど、微妙に文化が違っているらしいファンタジー世界の小国を舞台にヒロインが第一王子やその取り巻きの一人一人と恋愛関係になっていくノベルゲーム。

 ハーレム展開はなく、誰にフラグが立っても純愛ものであるのがわたし好みだった。

 私一押しの絵師さんの描くスチルは、大変に尊く、じっくりと鑑賞させていただいたものだ。


 それがまさかのVR化とか、思わず『神か!?』と素が出そうになった。


「ぇ……えっと、本編ですか?」


「いや、あくまでデモだしねぇ、本格的な実装は予定していなかったんだけど、ライターさんからヒロインたちの学院入学前をVR化してみたいって話が出てね」


「そ、それはまた……ぜひプレイしてみたいです!」


 まあ、本編をそのまま移植とかはさすがに無理だろうとは分かっていたけれど、学院入学前っていうのは何気にうれしい。

 まだ少し幼いカーレ第一王子殿下、ハロ侯爵家子息のイミ、南の辺境伯子息のアデラ、西の辺境伯子息のソルタといった面々を3Dで見られるのかと思うとドキドキする。


「せっかくだから、悪役令嬢のメリユ視点でやってみるかって話に……」


「はあ!? なんでですか、ヒロインでなくて、まさかのメリユ視点!?」


 とうとう素が出てしまって、わたしは慌てて自分の口を押さえるものの、わたしの素も知っている画面の多嶋さんは苦笑いだ。


「いやー、学院入学前だと、ヒロインが上の面々と顔合わせできないでしょう?

 可能性があるとしたら、北の辺境伯令嬢のメリユくらいで……それでも、本当はデビュタント前だから、まあ父親に連れられて王都に来たときにたまたま面識を得たくらいのシチュエーションなんだよね」


「……なるほど」


 多嶋さんの説明に、頭に血が上ってしまっていたわたしも思わず納得してしまう。

 ヒロインの子爵令嬢という立場では、学院入学前に攻略対象たちと顔を合わせる機会がないはずなのだ。

 目立つキャラの中で、学院入学前に攻略対象たちと顔を合わせた可能性があるのは、やはり悪役令嬢=北の辺境伯令嬢メリユということになり、今回のメリユ視点VR化という話になったのだろう。


「そもそもVR化だと、メリユ視点だから、鏡でも見ない限り、メリユの姿が視界に入る訳じゃないしね」


「確かに……ノベルゲームだとどうしても立ち絵やスチルに入ってきてしまいますけど、VRだと見てる本人視点ですから、メリユを見ないで済むんですね」


「そう、だから、メリユ視点にしようとなった訳だけど。

 もう一つ理由があるんだ」


「な、何です?」


「キャラの反応をAI生成にしたことで、メリユの悪役令嬢固定化を回避できるかもしれないと踏んで、別ゲームとして楽しんでもらうのもいいかもって意見も出てね」


「まあ」


「なぜか妙にテスト開発チームが盛り上がっちゃって、何かそれっぽいVRゲームができちゃったんだよね」


 は?

 できちゃった?


「も、もうプレイできる状態ってことですかっ?」


 これはもう食い付かない訳がないでしょう。

 いつもアルファ版テスターさせてもらってるわたしですよ?

 多嶋さんがこういう話をわたしにするってことは、テスターさせてもらえるって話に決まってる訳で、いや、もう連休前だろうが何だろうが大学休みますわって感じだ。


「まあね、一応プレイできちゃうんだけど……結局のところ、AIの訓練データ不足が露呈してね。

 結局既存シナリオの台詞データとネット収集の大量の訓練データを流し込んでそれっぽいAIはできたんだけど、ネット収集データの著作権絡みで公開できそうになくて、今回は単なるシステムテストで終わりそうなんだよね」


「そんなあ」


 あんまりだわ。

 AIの中身はまだまだブラックボックスだと聞くし、その辺り誤魔化せないものかしら?


「まあ、社内では、一般公開はできないって結論に達してしまったんだけど、ここまで作ったらもったいないしねぇ……せっかくだから、やる?」


「やるやる、やります、やらせていただきます、今すぐやらせてくださいっ!」


「はっはっは、さすがは、ファウレーナさん、自分に正直だね。

 おじさん、おまけに管理者権限付けちゃうよ」


「はあ!?」


 またとんでもないことを言い始める多嶋さんにギョッとしつつも、わたしはノートパソコンの傍に置いてあったヘッドマウントディスプレイ(HMD)=オケラスを手にゲームの準備を始めるのだった。

まずは現実世界のお話からスタートです。

次回からは悪役令嬢のゲーム世界に入っていきます。

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