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名づけるなら転生前の話

 夜も遅い丑三つ時、ありふれた一軒家の一室。

 そこはアニメから特撮までの幅広いジャンルのフィギュアやライトノベル、漫画などが所狭しと並んでいるいかにもオタク部屋といった様相の俺の部屋。

 そこにあるパソコンのモニター画面では、可愛らしいアニメのエンディング曲が流れており、フリフリの衣装を着た少女らがそれに合わせて踊っている。

 それは、深夜アニメというより、日曜朝のアニメを思わせる明るく元気な印象を受け、実際ネットでの評価は深夜8時30分アニメであった。

 そして、アニメキャラに合わせて俺も踊っていた。

 可愛らしい曲とキモオタの俺ではミスマッチが過ぎるが、今週も楽しませてもらったことに対する感謝のダンスである。妥協はできない。

 振り付けは完璧、さらに両親と近隣住民の皆様に配慮し、音は一切立てない。

 長いオタク人生の中で、俺が身に付けた無駄に洗練された無駄な動きがここにはあった。


 「ふぅ、今週も良かった」


 エンディングも終わり、俺は椅子に座りこむ。

 物語の内容を反芻するためモニターの電源を切ると、軽く汗をかき、呼吸の荒くしたブサメンが映った。

 俺だ。

 先ほどまで運動していたせいで思考がすっきりし、冷静となったことで、ある種の賢者となった自分が俺を笑う。いやいや、自分の顔はどうでもいい。もう20年以上の付き合いだ、親の顔より見た顔とはまさにこのこと。

 手近に置いてるタオルで汗を拭きながらベッドに座り込む。


 先ほどまで俺が観ていたのは「英雄少女外伝プレイアース」という所謂魔法少女ものと呼ばれるジャンルのアニメだ。

 知らない人のために軽く説明すると、外伝とついている通り、「英雄少女シリーズ」のOVAも含めて6作目にあたる作品である。

 シリーズの内容は王道で、中学生の女の子が別世界から来たマスコットキャラクターに出会って力を授かり、また別の世界から来るプレイヤーと呼ばれる悪人と戦って、勝つ。

 よくある物語。

 そんな王道ド直球な魔法少女アニメが深夜にやる訳ないだろ、いい加減にしろ。どうせ魔法少女が化け物になったり、殺しあったりするんだろ、俺は詳しいんだ。

 それなりに深夜アニメを見たことがある人は、そう思うだろう。俺も思っていた。

 しかし、そんな斜に構えた俺を、英雄少女は真っすぐに貫いた。

 王道、しかしありふれてはいない。

 1作目は、突如現代社会に現れた敵に魔法少女、それらに対応する警察。物語中盤から連携して敵を倒していく様は、ゴールデンタイムのドラマの様。さながら大人向け女児アニメといったところ。

 これが好評で続きが作られたのだが1作目のことは関係ないので閑話休題。

 大事なことは、その1作目に出てきた敵が平行世界を股に掛ける組織であり、いくつもの世界で殺人ゲームをしている。ということだ。

 つまり、外伝である今作は、1作目とは別世界の話ということである。

 プレイアースは外伝世界で戦う魔法少女チームの名前であり、敵組織の1部隊ピーシーズとの闘いを描いている。


 「次回から幹部戦かぁ、物語も折り返しに来たな」


 今週は、特訓と称したドタバタ回で、ギャグチックにツイスターゲームなどをするちょっとしたお色気要素ありの良回であった。息を荒くする美少女、いいよね。なお敵は尺の都合で雑に処理された模様。残当。

 深夜アニメといえば基本1クール、12話。今週が5話だったので物語も半ばに差し掛かっている現状、これまでのシリーズとは違い子供向けの印象が強いと感じる。

 例えば、英雄少女シリーズといったら敵が人体改造を受けた殺人鬼といのが定番だが、今作では日曜朝にやっているような怪物を幹部が作り、それと戦うといった方式になっている。

 それは、ピーシーズの目的が、あくまでその世界がプレイヤーにとって楽しめるのかを調査するためであり、少人数の先遣隊だからだ。よって、日常があり、怪物が現れ、プレイアースがそれを倒す。それが、これまでのテンプレートとなっている。

 作画のレベルも高く、キャラもかわいい。シリアスよりの作風じゃない今作からこそ、安心してみていられる。


 「だけど、劇場版に繋げるためにバッドエンドにしますって放送前に明言してたからなぁ」


 ごろりとベッドに寝転がった俺は目をつぶって、事前に告知された事実を思い返す。

 あぁ劇場で救われると想像がつくはいえ敗北エンドはいやだなぁ。


 だって、愛と平和のために戦う魔法少女なら、勝たなきゃダメだろ?


 ……なんだか眠くなってきた。ファンアートを描こうと思っていたのに。



 瞼が重い。今日は早起きもしてないのに……

 まあ抗う理由もないから睡魔に身をゆだねることにする。




 「ごめんね」


 完全に眠りに落ちる直前、聞き覚えのある幼い声が聞こえた気がした。


 

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