中年女性をターゲットにする結婚詐欺グループとその女性の間で起こる公園を舞台にしたドタバタ劇。
モモコは何時もの様に榴ヶ岡公園で、黄色服を着て、午前中を過ごした。黄色ヘアバンドをしてスマホの電子書籍を読んで居た。何時ものメンバーの散歩である。と言ってもモモコが親交を深めているのは犬等で、(人間とは当たり障り無く接するのが信条です。)犬も飼って居ないのに犬である。焦げ茶のダックスフンドは今日も進むべき道を探しているし、パグは、少しでも僕を愛してとどの人間にも言っているし、茶色の目のクリっとしたチワワは宇宙の神秘を信じると言って来るし、何時も通りである。今日は偶に来る、モモコよりちょっと年上の、膨よかな緑の服を着て青いヘアバンドをして、珍しく気の合う女性が座った。最初の会話は生まれ変わりって信じる?だった。犬って結構会話する。人間の生まれ変わりが多いから。で共感した。聞けば昼間は占い師をしているそうである。
今日は週末なのでする事がある。因みにスマホのFacebookで最近チェックした、大都市のあのマンションに住んでいる元亭主の家族は、子供が3人出来円満に暮らしているらしい写真がアップしていた。
品物が切れていたので補充しなければ。いつも行くコンビニで、元亭主の写真を100枚コピーする。用紙が不足したのでコンビニのお兄ちゃんにお願いすると、舌打ちされた。いつもの100店でクッションを沢山購入して、袋何枚必要ですかと聞かれ、持参の大きな袋を出してちょっと驚かれた。それと、妹に体に良いからと言われている果物を忘れずに買った。
今日は二週間に1度の精神科の診察日である。囚人服と見間違いそうな、横縞の長Tと辛うじて違う、縦縞のキャロットをいつもの様に着て、診察を受ける。いつものように薬の説明を受ける。「気分の沈んだ時は赤い薬。気分の高揚した時は青い薬。もし間違って飲んだ場合、世界が滅びるので気を付けるように。」そして「頭のおかしな者の相手は疲れるわ。」という医者の小言が後ろで聴こえる。
在る日、モモコ月1度の発作を出来るだけ鎮めながら、ある意味規則正しい生活を送っていると、遠くの方で初老の痩せた女性が、犬の散歩中に足を挫いたかの様な姿勢で居た。常のモモコなら、差し障りの無い対応を心掛けるので、最低でも大丈夫か確かめる声を掛けるのが通常だった。丸メガネを掛けたショートカット女性が、これも同じく犬の散歩中に駆け寄っていた。これは是非行動を起こさなければならない場面だったが、初老の女性の連れていた、ゴールデンレトリバーが「この人飼い主じゃないし、借り犬で連れて来られたけれど、行きたくない方向に、それもぐぃぐぃ引っ張られるし、絶対躓いていないし、痛くも無いだろうし、この人の行動に納得出来ないし、賛同出来無いな。」と言った。若い女性の連れていたコギーも「私も借り犬で連れて来られたけれど、やはりぐぃぐぃ引っ張られるし、なんかぶつぶつずっと言ってるし、この人嫌い。」「それに今初対面の会話してたけど、さっき2人で打ち合わせしていたよね。」と犬が会話していたので辞めた。
おかしな事もあるなと、モモコが感じた数日後、モモコがいつものように、犬との会話を楽しんでいると、隣りに70才位のイギリス紳士然とした男の老人が座った。気分を害されたらいけないと思い、静かにしていたら、勝手にペラペラと話し出した。小さな会社を経営していて、社長秘書として雇い入れたいという事だった。職安に行っていた時だったら、飛び上がりたい程の話だったが、やはり連れていたゴールデンレトリバーが、この人さっき台本みたいなの読んでたよ。と言ったのを聞いて、世間話をして来ても一切無視した。少しして帰って行った。犬もホットした様だった。
公園から離れて、結婚詐欺グループは話し合っていた。「小金を持っていて、中年になっても理想が高く、女の務めを果たそうとしない、我儘者を懲らしめる為に私達は行動しているんだ。」「しかし、あの女は住まいがマンションかと思ったら、ひとり暮らし用のアパートだし、小金も持ってなさそうだけど。」「生命保険を掛けて殺し、保険金を取り、脳死状態にし、臓器を売れば大金が入る。」「俺達は頭脳プレーで夢を売るのが商売。残虐なことは一切しない。暴力的な事はチンピラグループに任せる。完璧な分業作業だ。」「最後の最後まで、白馬の王子様が来たと夢を観させ、毒を飲ませる事位はするが、もしかりに気付いたとしても、それは直前に決まっているし、そこは素早くチンピラの出番で、首吊り自殺仕上げてくれるさ。」