佐々木、首相の説得を始める。天皇による反乱軍指定
佐々木警備局長付は長野県警からの情報でようやく長野市内に逃亡していた首相を保護(拘束)し、このクーデター部隊に対処する自衛隊に防衛出動命令を出させるべく説得を始めた。しかし学生運動家から市民運動家に転身して政治家になった首相は体制側の人間(警察官僚)である佐々木の言を信用せず、中国人民解放軍の介入を言い出すほどであった。自身の中国とのパイプによって人民解放軍の武力介入を要請したが、クーデター部隊の正体が不明なことや海を越えての陸上兵力展開が部隊の輸送や補給の問題から現実的ではないこと、さらに人民解放軍が大挙して上陸することで日本人に無用の威圧感と反中感情を与えてしまうことなどを理由に断られた。一方、米大統領は日本政府の要請を待たずに在日米軍の出動を命じようとしたが、首相が無事だということと自衛隊部隊の大半が戦力(隊力)を維持していること、クーデター部隊に自衛官が参加していないと思われること、自衛隊が健在であるにもかかわらず武力介入をすることが日本政府と自衛隊の面子を潰すことになる等の理由から在日米軍総司令も統合参謀本部議長も介入に反対、大統領もその意見を容れて在日米軍に静観を命じた。そして米中の真意は別のところにあった。左派系政党が政権与党となったことで日本国内で保守系の思想を持つ者たちを中心にナショナリズムがめばえつつあった。このまま放置して日本全国で内戦状態になったところで武力介入して情勢を安定させることができたなら日本に恩を売ることになる。そうすれば日本の国際的地位の低下と、領土や貿易などで自国に有利な条件を呑ませることができる。そういった思惑では米中は一致していた。
佐々木の粘り強い説得に加え、東京からも保守系主権在民党幹部も説得に加わって翌朝、ようやく首相の防衛出動命令を引き出すことに成功する。(しかし、早朝の話だったために後に首相に「防衛出動命令を出してない」という迷言を言わせる結果となる。)同じ頃、横浜駅前広場で続々と集まりつつあったネット右翼に武器弾薬を渡して膨れ上がっていたクーデター部隊に動揺が走った。朝になってNHK、民放各局により、今上天皇の「いかなる事態になろうともこのクーデターによる政権を認めない(認証しない)」とのお言葉が発せられた。天皇による認証がなければいくら政権を発足させたところで「自称首相」に過ぎない。文字通りの「錦の御旗」を失った大宝寺は反乱軍となったのであった。大宝寺に協力を約束していた主権在民党の内通者は放送を見てすぐに約束を反古にした。大宝寺の決起に同調するはずだった地方の右翼団体も決起を断念、動画投稿サイトを通じて大宝寺との関係を否定する。さらに大宝寺の部隊に加わったネット右翼の隊員たちも次々と武器を捨てて戦場離脱を始めた。大宝寺は戦場離脱をする隊員を見せしめに銃殺にするなどして崩壊を止めようとするが、士気の低下は如何ともし難く、攻撃を強行して国会議事堂などの重要拠点を占領することによって事態の打開をはかることとなった。