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星降りそそぐ 燃えた世界で

作者: いもけんぴ

初めまして!いもけんぴと申します。拙い点や未熟な所ばかりかとは思いますが、読んでくださると嬉しいです!

その夜、少女は友達と文章を送り合えるアプリで会話をしていた。


『ねぇねぇ、ちょっと連歌ってのやってみようよ!』

『えぇいや、そんなに簡単にできるものなの?』

『やって見なきゃわかんないって!ちょっと上の句考えるから下

の句はそっちが考えてね』

『わかったよー』


『出来たよ!


夜の下 君とふたりで 約束を』


(おおー、どんなのにしようかな。夜…星がいっぱい見えるかな、溢れんばかりの星……溢れて落ちてくる。流れ星なら綺麗だろうなー。でも燃え尽きなかったら火球になるんだっけ。火球が降ったらその星燃えそう。……イコール世界の終わり…か。)




『星降りそそぎ 燃えた世界で』





.☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.



その村は山のほぼ頂上にあった。

そんなに高い山でもないが周りの山よりは幾分か高い。

そんな山の頂上から下に向かって段が作られ、木造家屋30軒ほどからなるとても小さな村がへばりつくように存在していた。


その日、村は静かだった。


別にいつもはうるさい訳では無い。あまり子供は居ないし、人口も減少の一途を辿る途中だから。


だからといって鳥のさえずりが聞こえないはずがないし、木の葉が擦れる音がしないのもおかしい。


その日はどう見ても異常だった。

でも、誰も不思議には思わなかった。

何故なら、もう一月も前にどこかの城付きの呪い師によって予言されていたから。




〘世界の終わり〙を。




最初は誰もが信じなかった。当たり前だ。そんな戯言を信じるのは呪いに心酔している者か、終焉にしがみつきたい者だけだろう。


しかし毎日毎日世界中の人が、星が降り注ぐ夢 を見たら信じるしかなくなるだろう。

終焉がやってくると理解するまでその夢を見せられ続けた人々は誰もがしまいにはそれを受け入れた。



そんなわけで、村には死に場所を決めた人ばかりが最後の一日を静かに過ごしていた。

綺麗な湧水があることで行商人の間では話題になっていたから、村の人間だけでなく見ない家族もちらほらいた。


一人の少女がいた。名前は碧花。碧花はこの村に住む孤児だった。両親は山の不運な事故で喪った。

他の人は家族や恋人と過ごしているが碧花はそういう訳にも行かないので、村中の畑を見て、何も知らないで生きている作物達に声をかけて回った。


「ごめんね」「また育てられたらいいな」とか。


歩き回っていると、後ろで物音がした。普段なら正体が分かるまで追い回すが、こんな日だ。気にならないこともないが、捕まえても意味もない。

それに無視してたら、どこかに行った気配もした。


もう気にすることも無くなった碧花は、山の頂上にある一際大きな木の枝の上に寝そべって、目を閉じた。




どれくらいそうしていただろうか。もしかしたら眠っていたかもしれない。碧花が目を開けると真っ赤な夕焼けが収束しようとしていた。

木から降りて、空が視界いっぱいに見えるところで再び横になった。


一番星が見えていた。どんどん増えていく。10と少しまで数えて諦めた。


ただただ星空を眺めていた。

いつもより星が明るく大きいような気がする。

茜が完全に見えなくなり、紺色の空になった頃、



〘世界の終わり〙が始まった



空を星が覆い尽くし、いくつかが流れ始める。いくつも幾つも。


ああ、終わるんだな。と特に感慨も湧かないような身も蓋もない感想を浮かべながら見ていた時、隣で草を踏む音がした。


さすがに首を回して見たら、横に同い年ぐらいの少年が座っていた。村で見たことがないから商人に連れられた子供だと思った。


いよいよ流れ星のうち、一つが燃えている様子が見えて、視界の端に消えていった。次の瞬間、



ドオオオォォォン



地面が振動した。

落ちた、と嫌でもわかる音を立てながら。


「親は」


少年は答えた。


「いない」


「ふぅーん」


おおよそ碧花と同じような孤児だったのを商人が下働きにでもしたのだろう。そこまでは分かった。



ドオオオォォォン



二つ目が落ちた。空はなおも星で溢れて零れている。

さっきより近いところに落ちたような気もした。


「なんでここにいるの」


別に碧花はその子が嫌いとかではなくて、単純に気になったから聞いただけだった。少々上に気を取られて、きつい言い方になったかもしれないが。


「え……、ダメなの……?」


いくら碧花でも泣きそうな声で聞き返されてはそちらを見る。

何故か知らないが少年は碧花に拒絶されるのが悲しいようだ。


「別にそうじゃないよ!気になっただけ」


「良かったぁ。あのね、僕、君と一緒にいたかったんだ」


ほっとしたような顔で、空に再び戻っていた碧花の視線を向けるように言葉を紡ぐ。



ドオオオォォォン…



さっきより長く揺れが続いた。音も反響している。何個か同時に落ちたのかもしれない。


「ずっと君が好きだったんだ。ほとんど一目惚れだけど」


流石に碧花も驚いて少年を見つめる。こんな子見たことあったかなー、っていうかなんで?と。

少年は上を向いた。寝そべっている碧花からは顔が見えなくなった。少し耳が赤いから照れ隠しだろう。



ドオオオォォォン ドオオオォォォン



どんどん間隔が狭まってきた。遠くが明るくなった。火だ。


「最初に見たのは何年か前だよ。ご主人様にひっついてこの村に来た時だった。大人の話の間僕は暇だからうろうろして子供を探してたんだ。だけど転けちゃって、泣いてたら近くにいた君が水を持ってきてくれて洗ってくれたんだ。覚えてない?」


全くもって記憶にない。首を振った



ドオオオォォォン



いよいよ火の手が見えた。遠くの森が燃えている。


「そっかぁ、その後、それでも泣き止まなかった僕を何とかしようと、泥団子を一緒に作ってくれたんだよ。僕の方が上手かったけどね」


子供…転けた…水…泥団子…?なんか引っかかる?可愛らしい顔立ちの幼児の笑顔が見えるような…?この少年があのちっさい子か。なるほどよく見ると整った顔だ。


「思い出したよ」


「ほんと!?うれしいなぁ」


パアアアという効果音が聞こえるような笑顔でこっちを見る。



ドオオオォォォン ドオオオォォォン ドオオオォォォン



今いる山の麓に落ちた。洒落にならない揺れだ。思わず飛び起きて近場にあった少年の足を掴む。

…手を取って繋がれた。


「…で、どうして欲しいのよ」


少年の顔が曇る。慌てて言い直した。


「ああもうだから、何がしたいの?教えてくれる?」



「あのね、君に……」ドオオオォォォン「たいんだ。頷いてくれる?」



…正直全く聞こえなかったが、碧花の中で彼の印象は(顔がいいめんどくさいやつ)だったため、適当に頷いた。

また寝そべって上を見る。なおも綺麗に星が輝いて、こちらに向かってこぼれ落ちてくる。紺色が濃くなったような気がする。


「…うれしい。」どこか悲しそうに言葉が返ってきた。


どうして悲しそうなのか聞きたかった。けどその前に綺麗な顔が迫ってきて、柔らかいものを唇に当られた。



ドオオオォォォン



火が上がってきた。山火事は火が廻るのが速い。

もう幾分も時がないことが、全身で感じられる。


目を閉じた。

何故か嫌ではない。では好きなのか?自問する。…そうかもしれない。自答。きっと吊り橋効果とか言うやつなんだろう。納得させて目を開き、空いている方の手で肩を押し返した。



ドオオオォォォン



もう何処に落ちたのかすら分からない。村はまだ無事だろうか。


「…ありがとう」 やっぱり悲しそうに笑う。


「なんで…そんなに」

ドオオオォォォン




村の方に落ちた。凄まじい勢いで火の手が上がる。こちらにも迫ってくる。あまり熱いとは感じなかった。どこか非現実的でさえあった。


手を少年の頬に添えてみる。その上から少年が手を被せた。背景には変わらない星空が見える。


「次、生まれ変わったら逢いに行くよ」


少年は言う。


「ははっ、じゃあ待ってるね」



ドオオオォォォン



もう火に囲まれた。こちらの方に落ちる星が見えた。


最後だ。


「あなたの名前は?」碧花は聞く。繋いでいる方の手をきつく握った。


「…輝夜。夜に輝く」


「じゃあ私と二人で一人だ。碧に咲く」




目を閉じてもう一度唇を重ねた。



轟音も灼熱も感じなかった。







ただ、意識が途切れた。







.☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.:*・°.*・゜ .゜・*..☆.。.:




目の前に景色が浮かんだ。想像なんてもんじゃない。ハッキリと、そう、経験したことを思い出すかのように。



『おおーー!めっちゃいいじゃん!綺麗な景色が目に浮かぶよー!』


我に返った。慌てて返事をする

『そう?ありがとう。上の句のおかげだよー』

『そろそろ寝ないといけないから終わるね。おやすみ』

『あ、わかった!おやすみー』


とりあえず会話を終わらせた。次いで家を飛び出す。親が何か言ったかもしれないが、聞き取る余裕は無かった。


何処に向かっているのかは分からないが、足が勝手に動いた。

ある程度走って坂の上の見晴らしのいいところに着いた。


誰かが木の上で寝ている。


木の下まで行き、見上げた。


あんなに見えた星は、都会では見えない。


だが、間違いなく瞼にはあの零れ落ちる星空が焼き付いている。


垂れている手を掴んだ。確信があった。



「輝夜?」


手が握り返された。


「…碧花」


「逢いに来てくれるんじゃなかったの?」


「これでもすごく遠くから来たんだよ。それに……碧花は青空に咲くって自分で言ってた。」


涙を流しながら答えた。


「そうね。輝夜は夜に輝くものね。どおりで見つけられたわけだわ。」



涙が零れて街灯の光を反射して、煌めいた。星のように。

読んでくださった方、ありがとうございました。

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