喧嘩上等
「ねね、ヒトハ君」
「なんすか?てか、あんまり僕話しかけないほうがいいっすよ。あんたも虐められるだろうから」
「え、イジメられてんの?」
「たぶんそうすね」
「なんで敬語なの?」
「うるさい奴だな。お金持ちのあんたには分かったことじゃねぇよ」
「ねぇ。なんでそんなこと言うの?ていうか私のこと忘れたの?」
「は?初対面なのに気持ち悪いな」
「私も憶監から来たのよ?」
「あんたみたいなかわいい奴はいねぇよ。昔はいたが」
「え?最後なんて言った?」
「なんでもねぇ」
「あっそ。私ね、8歳のころに悪い大人にさらわれたの。何をされるかわかんなくて怖かったの。でもねそれを助けてくれたのが名門財閥の阿形家だったの。だから私は阿形家の養子なの」
なんでこんな大事なことを忘れていたんだ。あの日じゃないか、スラムに大人がいなくなった日じゃないか。マリがいなくなった日だったじゃないか。
「お前だったのか」
「やっと思い出してくれた?」
「ああ。久しぶりだな、マリ」
「うん!久しぶり」
これが感動の再開というものなのかと余韻に浸っていると、後頭部に激痛が走った。そしてそのまま椅子から転げ落ちる。
「お話は終わりましたかな?」
「マリさんと軽々しく話すとかスラム出身なのに生意気」
「死ねよお前。この世界にいらねぇんだよ」
腹に重い蹴りが入った。
「よええなお前やっぱ」
「てめぇらいい加減にしろよ」
「は?」
全員キョトンとしていた。僕も驚いた。自分でもこんな声が出るとは思っていなかった。
「スラムスラム言いやがってよぉ」
周りにいたやつらは顔がこわばっている。
「てめぇらにけがさせないために何もしてこなかったが、スラム出身だから喧嘩だって強いんだぜ。タイマンでもいい、束になってかかってきてもいいぜ」
「じゃあ、遠慮なくやらせてもらうぜ」
右から頬に向かってこぶしが飛んできた。殴りかかってきたやつの足にけりを入れた。奴は足がもつれて盛大に転んだ。そこから思い切りけりを腹に打ち込む。
「グハッ」
僕は倒れているそいつを見て、
「一番強いのは失うものがないもないものだ」
「ふざけるな!どうせタイマンしかできないんだろ?」
「お前ら一気に行くぞ!」
掛け声に合わせて5人ぐらいの男子が走ってくる。1人は椅子を持って走ってくる。
「っけ」
僕はまず、椅子を持ったやつを狙った。椅子を振りかぶっておろしてきた。
「遅いな」
すぐさま僕は身をかがめ、腹にタックルをした。奴は椅子を落とした。足の付け根に椅子が当たっていたむ。だが僕はお構いなしに突き進んだ。運よく後ろにいたもう1人にもあたって、ロッカーまで押していった。
ゴンっ、という鈍い音が響き2人は倒れた。
「おいおい、隙を見せるとは舐めたものだな!」
背後から声がした。僕はすぐさま後ろに回し蹴りをし、横っ腹直撃させた。机に彼は直撃した。しばらくは動けはしないだろう。
他2人が来る様子はない。勝てないとわかったのだろう。
「お前らに聞く!誰が悪い!?」
返答はない。
「聞いてんのか?答えろ!」
「僕たちだ、僕たちが悪かった。だから許してくれ」
「お互いのために、今回のことは先生に言うな。お前たちが言わなければ僕は言うつもりはない。お前らのけがはじゃれていてできたものだといっておけ」
「わかった」
「お互いのためだ、伝えるなよ」
そして僕は席に着いた。みんなの驚いたような声が聞こえてきた。そのまま僕は、無視をした。