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執着少女~幼年期編~  作者: 天使の中ちゃん
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第2部 カエデ、空手を始める前の物語        ②子育てという戦い

 3人暮らしが始まり、ここからが大変だった。あらかじめ、カエデが落ち着き、春子自身も世話が慣れてきたから帰ってきたが・・・。ひろしは、仕事をしながら、お風呂掃除、食器洗い、カエデの抱っこ、オムツ替えなど。できる範囲のことは手伝った。春子も、ひろしの頑張りが伝わり自分を抑えることがてきた。夜泣きをして乳をあげてる時に、ひろしが寝ていることも仕方ないと思えた。しかし、やはりお互いに無理をしている。長く続かない。その引き金を引いたのはカエデだった。とにかく泣き止まない。抱っこしてトントンして、子守唄を歌って、オムツを替えて・・・。一時間近く泣いていたことがあった。やっと泣き止んでベビーベッドに下ろす時に起きてしまうこともあった。ひろしは、悶えた。着陸が無事に成功した時は、ひろしと春子は目と目を合わせて溜め息をついた。



 まず、春子の肩と腰に限界が近づいていた。その頃には、春子の情緒が不安定であった。とにかく、ひろしは食器洗い・お風呂掃除・トイレ掃除など率先しておこなった。何もしていない方が春子の機嫌の変動が怖く、気が休まらなかったのである。カエデを抱っこして30分以上、泣き止まない。春子が叫んだ。


「もう、堪忍して~。」


春子は、泣いているカエデをベッドに置いて、ゴロゴロと床下に寝転がった。腰も肩も痛く限界にきていた。こんな毎日を送っているうちに、とうとう春子の我慢の限界がきたのである。

 


 晩ごはんが終わり、ひろしはそわそわしていた。今日は結婚記念日であったのである。ピンポーン!郵便物が届いた。春子のプレゼントである腕時計であった。ブランド品で少し値が張った。ひろしは笑顔で春子に渡した。


「プレゼントや!!」


「有り難う。」


しかし、春子には笑顔が無かった。ひろしは不満だったが、黙って洗い物を始めた。途中、カエデが鳴き始めた。春子は席を立たなかった。ひろしは、洗い物に夢中になっていた。少しの間、泣いているカエデが、ほったらかしになった。春子がキレた。


「あんた、カエデのとこ行き~や!私、腰が痛いん知っているやろ!」


「えっ?!」


ひろしは洗い物に集中していたため、直ぐにカエデのところに行けなかったのである。ひろしは洗い物を途中にして、カエデを抱っこしに行った。同時に春子は苛立ちながらも洗い物をし始めた。ひろしも苛立っていた。一言、二言小言を言ってしまった。その瞬間、春子から、お菜箸が飛んできた。当たらなかったが怒りが湧いた。ひろしが怒鳴った。


「カエデに当たったら、どうするんじゃ!!」


そこからは言い合いになった。ひろしは別室に行き涙を流した。自分は何なんだろう?朝から晩まで仕事をし、家に帰っても気が休まらない。プレゼントを渡しても喜んでくれない。訳の分からないことでキレられる。ひろしは春子も精神的にいっぱい、いっぱいであることに気づいていなかった。春子も泣いていたのである。この日から、ひろしの心の奥底に春子に対して暗いものを持つようになった。


 しかし、こんな環境でも時間が経てば赤ちゃんは育つようである。カエデは、スクスク育った。生後4カ月頃から一晩中寝るようになり、泣く回数も減った。春子に少しずつ心の余裕ができた。相変わらず、ひろしは家、職場、筋膜剥がしの勉強会と3つのワラジを履き忙しかった。やっとゴールデンウィークに、久しぶりの三連休があった。何もない三連休、ただカエデと春子のそばにいた。カエデを抱くと自分の悪い物が黒い霧になり出ていくように思えた。相変わらず、カエデは、ママに抱っこされたがっていた。だか、ゴールデンウィーク後、明らかに変わった。ひろしが抱いても、すっと泣き止むのである。春子が言った。


「ずっと、そばにいたからやわ。夜だけじゃなくて、そばにいたからやわ。」


春子はカエデだけじゃなく、ひろしが自分のそばにいてくれたことも嬉しかった。


「そうかもな。」


ひろしは、呟いた。愛情を持っている相手と同じ空間にいる。とても大事で幸せなように感じた。       

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