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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第四十話《戦闘の後始末》




起きた。



起きたらジョイと騎士がいた。


だからまた寝た────



「サカタ様、起きて下さい。」


えー………だってこの状況、完全にメンドクサイ臭がするんですけど。

起きたら騎士達数名とジョイがいるって…………いや、寝る前になんか外から聞こえてたな……


「おじさんごめんなさい。この人、面倒なことが大嫌いなんです。興味持ったか、必要なことしかやらないんです。」

「いえいえ、とんでもない。マイラ様…」

「マイでいい。」

「………マイ様。」


とても失礼なことが聞こえた気がするが、布団に身を隠す。ここが最終防衛線だ。


「サカタ様。今回は、ハーシェル草原の惨事についてお話に来ました。」


むっ…………もしや、さっきの戦いのことか…?


「ケンヤ様とマイ様が悪いわけでは無いことは解っております。そうだとしても、なにせ神族絡みの事件ですから……」


「…………事件?」


のそりと布団から顔だけ出し、ジョイ達を見る。

………一人だけ、縄で縛られてる騎士がいる。なにあいつこわい。


「はい。ハーシェル草原より突如轟音が響き、それはもう王都が大混乱になりまして……現在は鎮静化いたしましたが、大変でしたよ、ええ。本当に。」


あれ?ジョイ怒ってない?俺達のせいじゃないとか言ってたのに……

ジョイの表情は苦労人のそれだ。さぞかし大変だったんだろう。ま、あの勝手な王の世話してたら毎日大変か。

よし、労ってやろう。


「お疲れ。」

「まだ仕事があるのですよ。なので、早く布団から出てください。」


なんだか可哀想になってきたので、のっそりと布団から這い出る。


「ありがとうございます。何があったのかはマイ様から聞きました。ただ、ハーシェル草原は見るも無惨な状態となっていまして………その修復作業を手伝って頂きたいのです。」


ジョイ曰く、マイとソグーが結界バトルを繰り広げたあの草原は、土が盛大にめくれ上がったりクレーターが出来たり、草が燃え尽きて真っ黒になったりと色々酷いという。

そして、結界にソグーの魔法が衝突する音や、ソグーの魔法の着弾による爆音で王都の人々はパニックに。何とかジョイら王国騎士団や魔術師団などがおさめたものの、草原はどうにも出来ない、と。

俺は、ソグーがまた来ないかどうかとハラハラしていたので、そのことを気にする余裕が無かった。


ちなみに、ハーシェル草原には魔力を吸収する性質があるため、魔法が着弾しても大体平気なのだが………ソグーの強大な力には耐えられなかったらしい。



ってか大体ソグーのせいじゃねえか!おのれソグーめ、我が屋敷を破壊し、マイを誘拐しようとするだけでは飽き足らず、責任まで押し付けてくるとは……今度あったらシメてやる。絶対にだ。


だが仕方ない。ちゃちゃっと終わらせて、さっさと惰眠を貪ろうではないか!


「……にしても、そこの騎士…なんで縄?」


すると、マイが少しブルっと身震いし…

「……身の危険を感じたから縛った。」


マイが危険を感じた?確かに、よく見れば目が中毒者のそれだが………それほど?


後に、俺はこの縛られている男がとんでもないロリコン野郎で、やべーやつだと知ることになるのだが………それはまた別のお話。




─────────




俺、来た意味あるのか?


切実にそう思う。

てっきり、土魔法などで整地していくものだと思っていた。


いや、おそらくジョイもそのつもりだったろう。

燃えてしまった植物達はしょうがない。なので地形だけ戻し、あとは自然に戻るのを待つ予定だったはずだ。


ここ、ハーシェル草原は魔法練習場として人気が高い。なので、まあ土だけの所が出来ても、別にいいんじゃね?と俺は思った。というか先の戦いで巻き添えになった人はいないようで安心である。


それもこれも、全て「わたしがやったのもあるから」と、マイが元に戻した。

時魔法で土地の時間を戻し、それはもう戦いの痕跡を綺麗に消し去った。


俺の出番はなかった。


別にいいよ?なにもしなくても良かったわけだし。兵士たちにもてはやされてるマイが羨ましいわけでもない……ないったらない!

ただ、「ついてくる意味無かったなー」と。



ソグーが来たのは昼。寝て、起きたのは夕方。今は夜。


「ケンヤ、全部終わったよ。だから魔力をくれ」

「はいはい」


時魔法は魔力を多く使うらしいので、マイに魔力を吸わせる。


「マイ様、ご協力……いえ、全て元に戻して頂きありがとうございました。以上で終了です。お疲れ様でした。」

「ってことは、もう帰っていい?」

「大丈夫ですよ。我々も王城へ帰還しますし。」


すでに、兵士達は整列を終えている。……縄の人もいた。


「ケンヤ、帰ろう。」

「ん?ああ、そうだな。夜ご飯、何にすっかなー。」



おもむろに空を見上げる。


数多の星々が夜空に煌めいていて、幻想的。東京では見られない光景だ。


なかでも北極星は、まるで人々を導くように力強く輝く。



ポラリス。


この国の名前であり、北極星を指す言葉。



「……ケンヤ?」


「…ああ、悪い。じゃ、帰るか!」



俺の帰る場所は、あの家だ。神の少女とオヤジ臭い霊が住まう俺の家。


でも、日本の家にも、また帰りたいな………


なんだかしんみりした気持ちで、俺達は屋敷へ戻った。





________





「やばかった。尊死するかと思た。」

「またですか……」


私の同僚とも親友とも言える彼……ゾルデは、今日も何やら身悶えている。それも、いつもより大きく。


「縄で縛られる時、一瞬マイちゃんの手が、お、俺にふれっ、触れたんだ。あの小ちゃいお手手が」

「ゾルデ………今日はもう休め。パニックを抑えるのにも奔走したから疲れたろう。」


「ヒューレ、そいつには何を言っても無駄よ。」


これまた呆れたようにリルルが。ただ、この人もちゃんと常識人なのだが、たまに魔術師長への思いが爆発する時がある。


「それにしても、時魔術はまだしも、時魔法を見る日が来ようとは……」


魔術は、魔力さえあれば万人に扱える。魔法陣に魔力を流し込めさえすれば、発動するからである。術式を組み替えることにより、様々なカスタムも可能だ。

反面、魔法陣は魔法紙に描くのが一般的であり、それも賢者様やジョイ様クラスに理解が深く無ければ描くことすら難しい。


なぜ、ジョイ様が『魔法師長』などではなく『魔術師長』なのか。その理由がそれなのだが……知らない人は多い。


対して魔法は、才能が無ければ発動など不可能。とはいえ大半の人は、努力すれば高位魔法は使えるようになるのだが……それも属性によって変わる。適正が無ければ無理なのだ。

中でも、空間属性や時属性、星属性に適正がある者はごく少数。世界のどこかに、星属性魔法の魔法陣を描く者がいるという噂を耳にしたが……正直眉唾だ。

ジョイ様の見解では、魔法は魔術を直感的に操る術だとのことだ。実際、空中に魔法陣が浮かぶ魔法もあるわけで、その見解は的を得ているのだと思う。


そして魔法は、スキルと合わさることで更なる力を発揮する。魔法の天才達は、この特性をいかんなく利用している。



今回マイさんが使った時魔法。時魔術は見たことがある。一枚だけ、市場にてひっそりと売られていた、時属性の魔法陣が描かれた魔法紙。

ジョイ様が発見したのだ。伊達に魔術魔法共に鍛えてはいない。


その発動の瞬間を、私は見ていた。思わず息を飲んだものだ。


それを軽々超える魔法。もはや神のなせる技だ。一体どれほどの魔力量と技術、才能と適正があれば、あんな魔法を操れるのか……白金頭龍(プラチナヒュドラ)戦然り、一体彼女は何者なんだろうか?



「それにしても、今日もジョイ様はかっこよかったわぁ………はぁ、汗だくになりながら国民を鎮めるジョイ様……濡れるっ」


リルルはリルルで危ない感じになっている。


全く、この二人はいつもこうだ……


「二人とも、もう城へ着きますよ。」


妄想中の二人に呼びかける。



明日は哨戒任務か………


そう考えながら、ジョイとヒューレ達一行は、王城へと帰還するのだった。




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