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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第三十六話《商人ギルドに来たぞ!》




屋敷に越して一か月!


「ついに……ついにこの時が来たぁ!」


「ど、どうしたマイ……朝からやけにハイテンションな………あ、変化か。」

「それもあるけど、ほら!見てよ庭!」



まだボーッとする意識を繋ぎ、のそっと庭を見てみる。


「………イモか。」

「………イモだ。」


『朝から何だお前ら………。オレが見るに、ちっせえ農地だがかなりの豊作だぜ。』


デヌンが、感謝しろ!みたいにふんぞり返っているので、とりあえず"光弾"を眉間にクリティカルヒットさせる。


おお、まさにクリティカル!バチンッと良い音を立ててデヌンが撃墜された。


「……なぜ撃ったし。」

「なんとなく。」

『…………………』



訪れる静寂。



「と、とにかくイモだなイモ!おっし見に行くぞマイ!」

「あいあいさー」

『…………………』


ピクリとも動かないデヌンは放置で、庭もとい農地へ出る。


マイの魔力によるものかは知らないが、すくすくと順調に育ったイモドキ達。一面緑で覆われている。


イモ掘りか………小学生の時一回やったな。懐かし。


「さて、掘るぞ!」

「おー!」

「シャベルとスコップは持ったかー!」

「ありませーん!」


……うん、そりゃないわな。作っても買ってもないし。


まあ、そもそも道具なんぞいらんのだよ。



ここ一ヶ月の鍛練の成果を見るがいい!あんま変わってないけどな!


「"波浪風"!……からのマイ!」


「了解!」



高位風魔法"波浪風"は、荒れ狂う暴風を引き起こす魔法で、制御がとても難しい。馬鹿みたいにゴウゴウ風を発生させるので、威力は申し分無いがあまり使われない……が、俺は技術値の桁が違うので、制御が一応できる。


これにより、豪快に土ごとイモを吹き上げる。


そこに、マイのスキル〈重力支配〉が加わり、ぶっ飛ばされたイモドキ達が空中で静止。


イモと、葉などの部位、土を丁寧に分別して終了である。



イモドキ達を傷つけないようにしながら、周りに被害が出ないようにコントロールするのは結構難しかった。


まあ、周囲の家の人達が「何事かっ!?」と見てくるのは仕方ない。いきなり上空でイモがフィーバーしているという謎の光景が広がっている訳だし。


……今度する時はもうちょっと目立たないようにしよう。



そんなこんなで、イモ掘り(?)が終了。案外集中力を使う作業だった。


「ほー、確かに中々の豊作。」

「んね。」


全種類合わせて大体500個はある。しかもデカい。


「で、これどうするの?食べる?」

「え?売るんだよ。食べる分も残すけど。」


「どこに?」


「あ…………」



やべえ、そのこと忘れてた。


チラッと収穫したイモドキ達を見る。


……こいつらどうすんねん!


いや、売るには売るけど、どこで売ればいいかわからん。

屋敷の前で売るとか?


『おい、そのイモ売るんならギルド行けよ。』


復活したデヌンが呆れたように言ってくる。



とりあえず、また光弾を撃ち込んだ。




__________




キノスラの街へ出向く。


目的地は、商人ギルド。



そう、ギルド。商人、ギルド。


さっきは思わずデヌンを撃ってしまったが、結構俺は興奮している。


だってギルドだし。憧れの、あの。カードみたいなのを貰って、ランクによって色が変わって、「あ、あれは……!"金"の○○だ……!」ってやつ。

さらに、異世界モノに付き物な「一見貧弱そうだけど、隠されたステータスが露わになって驚愕される」っていう、あの!


ま、それは冒険者ギルドの方だろうけど。今は商人ギルドだ。

冒険者ギルドも見かけたし、近いうちに行ってみるか。


「ケンヤ、あそこを右に曲がって、突き当たり。」

「おう、ありがと。」


探索魔法で調べてくれているのだろう。ルート案内をマイがしている。


馬車や大きな荷物を持った人達が多い。多分皆商人ギルドへ行く人達だ。



右に曲がると、それはもう堂々と、なんか効果音でも付きそうなくらいに、どデカい建物があった。



「ここが商人ギルドか。でっか!」

「…邪魔になるし早く入ろうよ。」


マイに促され、その扉を開けた。



……ほほう。予想通り中も広いな。光魔法を使った照明もあり、床も綺麗だ。


おそらく四階建て。


一階のここは、ロビーみたいな所と受付がある。多分、受付に行けばいいんだと思う。


……〈英雄威風〉発動よし、傍らにマイよし。OK、総員対人戦闘態勢!会話用意、初めっ!


「すみません……」

「あ、ようこそ商人ギルドへ!ご利用は初めてですか?」

「はい。」

「そうでーす。」

「では、最初にギルドカードの登録を致します。そちらの……妹さんもご一緒ですか?」

「はい、お願いします。」

「では、少々お待ちください。」


受付のお姉さんが奥へ消えて行く。



……ふう、大丈夫そうだ。


〈英雄威風〉で会話はできるけども、ビビらなくなるだけで言葉選びは自分でしなきゃいけないんだよなー……

改まで付いたんだし、もっと仕事しろよ!というか俺の進化したスキル達、進化前との違いが分からない。超も神もさほど差がない気がする。


「ケンヤ、なんか久しぶりに妹と間違えられた。」

「最初はお前が俺のこと兄と勘違いしてたじゃん。」


うーむ………パッと見、病院感がすごいなここ。


てか室内に馬連れて来てる人いんだけど……いいのかよ。



「お待たせしました。それではまず、ステータスカード又はボードを拝見させていただきます。」


へ?

ここ商人ギルドだよな。見せる必要って……


「盗賊や犯罪者などの方は登録を遠慮させていただいておりますので、クラスや称号をお見せいただくだけで結構です。」


あ、なるほど。そりゃそうだ。明らかにヤベー奴を入れる訳にもいかないしな。


「俺はボードあるけど……マイって持ってんの?」

「心配無用!」


スっとマイから手渡されたステータスカードを見て……良かった。捏造されてら。神族の能力値やらスキルやら見られたら色々めんどいし。

そこんとこマイはちゃんと分かってる。偉い子だ。ただ捏造は悪い子なんだけどなぁ。


対して俺のはなんも手を加えてないボード。能力値とかまんま。

まさかこんな早く「一見貧弱そうだけど、隠されたステータスが露わになって驚愕される」が達成されるなんて………


「では…………」


俺が渡したのがボードだったため、若干驚きながら見始める受付姉さん。

ボードなんて重くてデカいから、普通はカードに加工する。

俺はまだ加工していない……というか〈能力管理〉があるので必要ないから、〈アイテムボックス〉から出したのだが……気づいただろうか。


「……はい、確認致しました。問題はありません。」


そう言ってカードとボードを返してくる受付姉さん。


んん?


あれ?全然動揺してない?



なん……だと?俺のステータスを見て驚かないなんて……



うん。多分この人は仕事に熱心なんだろう。ステータスを見て取り乱すなんてことはしない鉄の心を持っているのだ。


「それでは、説明をしたいと思います。まず、お渡ししましたその"ギルドカード"は、青色。これは、その者のランクを示しており、ランクが上がるにつれ青から緑、赤、紫、黒、銀、金と変わります。ランクはその者が扱う市場の規模により変化するので、大きな商会になると黒や金などとなります。青から赤は個人経営の方が多いですね。」

「ギルドに入るメリットってどんなのがあります?」

「そうですね………例えば、堂々と商売が行えます。近年闇取引等が頻発しておりまして、他国へ入国する際カードを見せていただければ厄介なく入国できます。あとは、ギルドからの保険や援助金、売り場の提供等でしょうか。」


結構便利だ。ランク付けは商人達の活性化を促す意味もあるのかも。


「あ、犯罪に手を染めた場合、ギルドからは強制退会、国への報告等をさせていただきますので。逆に、多岐に渡る功績が認められた場合、特例で白金ランクなんて貰えるらしいです。私は見たことありませんね。」


白金(プラチナ)。この前のヒュドラ然り、この世界では特別な意味合いでもあるのかね。


「なるほど、分かりました。説明ありがとうございます。」

「いえいえ、仕事ですから。」


「お聞きしたいのですが、生産者側もギルド登録して良かったのでしょうか……」


ただイモ作ったやつを商人とは言わない。ただの生産者だ。商人は、生産者側から商品を仕入れ売る。ちょっと気になったので聞いてみた。


「大丈夫ですよ。商人とはいえ、幅はそれこそ生産者から商会までありますし。名だけなんですよ。」


お、おう……案外ぶっちゃけるなこの人。


まあいい。悩みも解決したわけだし。


「他に質問はありますか?」

「いえ、特には。」

「そうですか。それでは、今後とも我がキノスラ支部をごひいきに!」


商人ギルドを後にする。


「ケンヤ、イモ売らなくて良かったの?」

「ん?ああ、大丈夫。直売所にすることにした。屋敷の前って人通りが多いじゃん?」

「なるほど、それは使える。ナイスケンヤ!」


最初はイモ売りにギルドへ来たんだが……結果オーライ、今後頑張ればいいか!


それに、色々やること残してるし、帰ったら忙しいからな。


「よし、帰るか!」

「承知!」


人目の無い所で、マイの"空間転移"で帰宅する。




轟音。


帰ってきたら、屋敷が半壊していた。


………チョットヨクワカラナイ。




________





私はクライシェント·バルバトス。


ポラリス王国キノスラにて商人ギルドのギルドマスターをやっている。

全くもってストレスの溜まる仕事だ。

クレーマーは多いし、冒険者ギルドほどではないにしろ暴力的な輩もいる。

特に貴族連中の相手はうんざりだ。この国の貴族の立場は、他国と比べ低めである。自由の国と言うだけあり、身分差は小さい。王が決めたのだ。

だというのに、一部連中はいかにも相手を見下し、顎でこき使う。

いや権力があるのは分かっている。低めとはいえ、貴族は貴族だ。

王の周りにいる公爵らは紳士であり、賢い。尊敬すらできる。


そういった方々はいいのだ。だが奴らはどうだ!

あの豚のような顔で見下されると、流石に不愉快極まりない。グチグチうるさいんだよこの豚野郎が!


………ふう、とにかくストレスが溜まるのだ。こうして酒でも飲まないとやってられない。


「ねぇギルマスぅ~」

「なんだ。」


このべろんべろんに酔った娘は、うちのギルドの受付嬢。仕事終わりは皆で飲むのだ。……ギルド内で。


「今日ね~、なんかふたりいたのよぉ」

「…意味がわからん。」


「だぁから、ヒック……あいてむぼくすもって……」

「アイテムボックス……?」


聞き間違いだろうか。アイテムボックスと言ったか…?


「そお、あいてむぼくす。いもおと連れたおとこんこがぁ~…ック、めずらひくなぁい?」


アイテムボックス。確かに、非常に珍しいスキルだ。


「アイテムボックス所持者がいたのか?」

「そお」


ふむ………にわかには信じ難い話だ。


過去にそのスキルを持った人間は何人だったか。

商人が心から欲しがるスキルの一つ。


そんな能力を持った者がいたというのか。


「ううぅ、うえ、ヒック」



………本当であれば是非取り入れたいものだが…この酔い方では本当の可能性は低いか。


なんにせよ、今はストレスを発散するのが最優先。

明日、こやつにもう一度聞いてみるか……



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