第三十五話《舞台裏》
───天界。
そこは、神々の住まう場所。
空には常時虹が掛かり、大地は生命に吹き荒れる。
どこにあるかなど、人族も炭鉱族も、魔族も知らない。
過去に一度、ある人族が訪れたと言われているが………
果たして、文字通り天……空高くにあるのか、はたまた地底深くにあるのか………
そんな天界のとある場所に、影が三つあった。
「何っ、それは真ですか!?」
「そうじゃ。どんな因果かはワシにも解らん……だが、封印は解けておった。」
「そうね………でも、私が本気で直々に施したものよ。そう簡単に解けるはずが無いのだけれど……」
彼らの姿は皆違う。
一人は、輝くローブを纏った人間の青年の姿。
もう一匹は、白い神聖な気を纏った犬。
そしてもう一人は、美の化身と言うべき絶世の美女。
「しかしのう………何百年前じゃったっけ。あの子を封印したの。」
「私は二百年から数えてないわよ。あのことは、私も思い出したくないのよ……」
悲しげに俯き話す二柱。
「アトスさんもクラウさんも、そんな顔しないで下さいよ。神界にいないということは、やはり地上へ降りたということ……気配が無いのも、隠しているからでしょう。」
「まあ、あの子はそれくらい造作も無いじゃろなあ……」
「なら簡単な話じゃないですか。早く捕らえて、また封印を施せば良いのでしょう?」
「それはそうなのだけれど………」
「もしくは……さっさと殺してし」
「ソグーっ!…言葉が過ぎるぞ。」
青年の姿の神、ソグーは中でも最近生まれた神である。数百年前起きた『悲劇』のことを、話には聞いても体験はしていない。
さらに若い神であるものの、その司る力の大きさから、傲慢な態度をとることも多い。
故に、そのような軽率なことを言えるのだ。
神殺しの恐ろしさを、まだ、知らない。
「……何でそこまで渋るのですか。それほど彼女の存在は大きいと?」
「はぁ……お主は何も分かっとらんのう……あの子は強いぞ。少なくとも、ワシやクラウと同格なのは絶対じゃ。じゃが、ワシが渋る理由はそれだけじゃない。……なあ、クラウ?」
「ええ、その通りよ。ソグー、あなたはまだ若い。もっと経験を積むべきね。そしたら何か分かってくるわよ。」
その言葉に、眉間を寄せる若き神。
「でも、〖世界管理〗すら逃れる存在秘匿術など、神力でさえ相当消費しますし、ましてや魔力だけとなれば………さらに、当時彼女は本来の力が全て出せない状態だったのでしょう?なら、十分俺でも確保可能でしょう。」
「そういう話をしていたのではないのじゃが……」
呆れた声色の犬神。女神に至っては、呆れて言葉も出ない様子だ。
その様子にムッとしたのか、若い神はさらに眉間を寄せる。
「……分かりました。なら、俺一人でも十分できるとお二人方に証明して見せますよ。」
「あ、おい!待つんじゃソグー!」
「はあ……本当馬鹿ね…」
こうして、一柱の神族が地上へと舞い降りた。
ご丁寧にも、自身の司る"時刻"の力を最大に使い、最上位の神族二柱の目を欺くまでして向かった彼の目的は───
"変化"を司る神、マイラルディアの捕獲である。
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とある国の最果ての地。野原は焼け、空は紅い。
そんな、大地の死んだ場所に一つ巨大な建造物がある。
なぜ、各国に指名手配されてもなお『剛断会』は潰されないのか。
その理由がここだ。
───厄災の踏跡"カトゥリフ"
数百年前まで存在していた独立国家カトゥリフ。
自然豊かで平和を愛したかの国は、島国にも関わらず世界屈指の大国であった。
しかし、それは余りにも唐突に終焉を迎える。
"厄災"が、顕現した。
圧倒的な力で破壊の限りを尽くした"厄災"は、僅か二日でカトゥリフを崩壊させる。
土地の魔力は暴走し、大地は荒れ果て、生物の存在など、どこにも感じられない。
人など到底住まうことはもちろん、生きることさえ困難なこの地になぜ『剛断会』の本部があるのかは、不明。
攻め込むことも出来ず、目的も謎。それ故に各国頭を悩ませているのだ。
「赤頭に青頭、茶頭に黒頭……実に彩り豊かなメンバーじゃないか。」
「ああ、なんでも今はポラリスにいるようだ。全く奴ら、失敗など……」
「大丈夫、大丈夫だ白よ。私は今とても気分が良い。何でかわかるか、白よ?」
「ふむ……ボス、最近新しい奴隷を一人買っただろう。それでか?」
「違うぞ、白よ。不正解。あの奴隷はもう使いものにならなくなってしまった。……答えは、遂に鍵を見つけたからだ。復活の、な。」
「ほう、それは朗報。……して鍵はどこにあるのだ?」
黒髪の男が、にぃっと笑う。まるで探し求めていた玩具を見つけた子供のような……
「ポラリス王国だ。白よ、わかっているな?」
「ああ、承知した。ついでに、黒達も連れて来るとしよう。」
フッ、と白と呼ばれる男が掻き消える。
「さて、私も動くとしようかな、フフ、フフフフフフフフフフフフフフ………」
玉座のような椅子に腰掛けた黒髪の笑い声は、一体いつまで続いていたか。
壊れた玩具のように、虚ろな眼でただ一人笑いこけるのであった………
誤字がすごく多い気がします、ご注意を




