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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第三十二話《魔物の巣窟―中編その一》




「暗いな……〈永光(エターナルライト)〉!」


大量の魔物がいるという洞窟に入った後、すぐに分かれ道があったので作戦通り今は二手に分かれて進んでいる。

二手といっても、ジョイ率いる第一部隊と[逆弄]が左の道、俺とマイが右の道に進んだのだが……


「にしても、魔物いないな。皆引きこもってんじゃん!」


分かれてから二十分ほど進んだのだが、まだ魔物と出くわしていない。

いや、いるにはいるようで、探索魔法でバッチリ把握している。

ただし、どうやら地下の方に密集しているようで、今いる周囲には一匹も探索魔法に引っかかっていない。


「ケンヤケンヤ、これ知ってる?」

「ん?なんだそれ。鉱石?………!!も、もしやそれは………」


ててー、と戻ってきたマイの小さな手のひらの上には、直径五センチほどの淡く輝く銀色の物体。

神鑑定が勝手に作動する。


「ミスリル……なぜここに」

「そう、壁に埋まってたからとった。」


ミスリルは、特定の場所でしか採れない貴重な鉱物だ。

加工が容易でありながら、その強度は凄まじい。ジョイ曰く、『ミスリルを売ったら、ですか?そうですね……百グラムで大金貨百枚、といったところですね。需要が高いのですよ。』だそうだ。


「そういやジョイがミスリルについて他に言ってたな。確か、迷宮で稀に採れる、とか…………あ。」

「ケンヤ…ここって多分…」


「おそらく…迷宮(ダンジョン)、だな。」



どこかで、魔物の咆哮が聞こえた。





_________





所変わって地上の洞窟入り口。


土埃が舞い、死の風が吹き荒れるこの場には、三人の人影と数十匹の魔物の姿が。


「くっ、キリがありませんね…リルル、支援魔法を!」


華麗な剣技で襲いくる攻撃をいなすイケメンはヒューレである。

相対するは、飛翔蛇(グライダースネーク)六匹。

飛翔蛇は固有スキルにより、その名の通り飛翔し上空からヒット&アウェイで攻撃を仕掛けてくる好戦的な魔物だ。強さも個々でレベル65の人族と同等ほどであり、何より連帯が物凄い。

攻撃を行っても、その俊敏の高さから逃げられ、別の角度から他のやつが突っ込んで来るの繰り返し。一撃も食らえば、確実に骨が折れる。

普通は、出逢えば三秒後にはあの世……と言われる飛翔蛇だが、その猛攻を『厄介』で済ませている彼は、分かる者が見れば相当な実力者だと理解するだろう。

飛翔蛇は一匹でもBランクの魔物。伊達に〖逆弄〗の一角ではない。


「はい、ちゃんとかけたから早くあの蛇倒して来なさい!ゾルデはっ?」

こっちも大変なんだからっ!と言いつつも、筋力向上の支援魔法をヒューレにかけながら無数の屍を絶賛量産中のリルル。

小さい頃、すでに中位魔法を自在に操ることのできた彼女は、八歳にして契約能力(コントレクトスキル)風定(シルフノケッテイ)》を獲た天才である。

否、『獲た』ではなく『選ばれた』と表現すべきだろう。

風定(シルフノケッテイ)〗は、風属性の適性が高く魔力量と技術値が大きい、そして何より『未来ある若人』である者が、ある日突然選ばれ獲得するという超貴重なスキルである。


このスキル最大の能力は〈風属性行使超補正〉………簡潔に言うと、風属性の魔法等の威力や精度がチートになる能力だ。


事実、そのスキルをリルルは理解し完璧に使用、今も噛蝶(バイツバタフライ)の突進を逆に風圧で地面の染みにすることで返し、毒鱗粉を風のベールで無効化…などと、その高い対応力と火力を見せているのだが………未だジョイには届いていない。というかジョイに猛アプローチをかけている。鬱陶しがられているようだが全然めげないようだ。


「こちらは大丈夫だ。集中して攻撃に専念してくれて構わない。」


ゾルデは、産まれ持った固有スキル〖波乗〗による衝撃波を、巨大な槍を振り回し発生させる。


一振り。


砂熊(サンドベア)の身体が波打ち、冗談のように真っ二つに。


二振り。


離れて攻撃を仕掛けてきていたゴブリンアーチャー四体が吹き飛んで行く。


三振り。


間合いを詰めに来た魔物含め、薙ぎ払った範囲にいた魔物が揃って絶命する。


〖波乗〗は、様々なものに"波を乗せる"能力だ。ゾルデは、槍を振るうと同時に乗せた衝撃波を解放し、周囲を歪ませたり、吹き飛ばしたりしている。一応、突き刺したりと槍も扱っているようだが……

ヒューレが対個人に特化しているなら、ゾルデは対集団と言える。



「終わったぞ。」


「ちょ、ゾルデ、衝撃波放つなら言ってよ……」

「ふう、なんとか凌ぎました……集団相手は苦手ですね。」


ところどころ切り傷があるものの、ヒューレとリルルも片付け終わったらしい。魔物の姿は、死体以外見当たらない。


「…にしても、やっぱここ、魔物の巣だったか~。」

「これだけ魔物が寄ってきますし、間違いないでしょうね。……………どうしました?」


なにか考えているのか、目を閉じて集中しているゾルデ。


すると、いきなりカッと目を開き、ぼそっとこう呟いた。


「……………可愛かったな。」


「……は?」

「なにが?」


「あの少女だ。サカタさんの隣にいた。」


ああ、と思い出すヒューレとリルル。


思い出したのは、マイの顔だけではない。



…………ゾルデが、変態紳士(ロリコン)だということだ。


ゾルデは、みてくれはダンディで、割とモテる。告白も、何度か受けている。

しかし、それらの全てを断り、彼はここに立っている。


なぜか。


ロリコンだからだ。


「久しぶりにビビっと来た。綺麗な銀髪に、あの服。俺は十歳くらいが特に好きなんだが………歳を聞くのを忘れたな。まあいい。十四歳ほどだろう。いいものだな。ちょうど大人と少女の境界線というか……そう、あの服だ。見たことない服だったが、素晴らしい。とても似合っていた。この仕事が終わったら話してみよう………」


どこぞのクマがいれば、『変態じゃないよ、仮にゾルデが変態だとしても、変態という名の紳士だよ!』と弁明してくれたに違いない。あと、地味に死亡フラグを立てている。


ちなみに過去ゾルデは、街行く少女をジィ~っと見つめすぎたことで通報され、いろいろ大変だったらしい。


……まあ、手を出したわけではないし、変態は余計かもしれない。


「確かにすっげえ美少女でしたが……ゾルデ、それは後で、ね?今は任務中ですよ。」


「そうだよ、まだ警戒は…………ってほら、来たじゃない。」


リルルの言葉通り、遠くの茂みから姿を現す魔物。


「………あんなの聞いてませんよ。」


冷や汗を流すヒューレ。


現れたのは一匹の魔物……いや、怪物。


神々しいまでの威圧感を放つその名は──



「「「……プラチナヒュドラ!!!」」」



土地神が、咆哮をあげた。




_______





一方そのころ………


「〈激流波(トレントウェーブ)〉!」

『グモォォォォ!!!』


膨大な水量の波に攫われ、それぞれ悲鳴を上げ絶命する魔物達。


ジョイらもまた、魔物との戦いに身を投じていた。

まあ、もっとも…


「流石、魔術師長!お見事です!」

「難位魔法を軽々と……私もいつか!」

「かっけえ!すげえ!」


ジョイ無双が繰り広げられていた。他の部下達は殆ど戦闘をしていない。


「ふう、片付きました。それにしても、予想はついていましたが迷宮だったとは……少し面倒なことになりましたね。」


高位の魔力回復薬(ポーション)をがぶ飲みしながらそう答えるジョイ。

難位魔法は、魔力消費が平均500と、ジョイの総魔力量2600から見てもかなり大きいので、軽々と撃ったわけではない。


「それに、どうやらこの先にかなり強力な魔物がいるようです。心してかかりましょう。」


その言葉で皆一様に緊張の顔持ちとなる。

実は、ジョイが「強力」と表現するのは珍しいことなのだ。

数ヶ月前、アルルカバの街へ侵入し、暴れまわった亜翔竜(ワイバーン)を討伐した時でさえ、ジョイは「少し危ない」と評していた。

ワイバーンは、人族にしてレベル130と同程度の魔物。


それ以上の大物がいる………そう捉えた騎士魔術師一同は、戦慄を隠せない。


だが、一人そのことが分からなかったようだ。


「なんだよ皆してビビりやがって。魔物くらい余裕だろ余裕!さっきのやつらだって大したことなかったしな!」

「こ、こらフィドス!勝手に行くでない!」


オレがその魔物殺してやるぜ!と先へ進んでいく若い騎士。先輩騎士が呼び止めるも、それは遅かった。



フィドスは優秀だった。優秀だったが故、慢心することも多かった。


「あ?──え?」




鮮血が舞う。


人の頭部も舞った。



ぼとり、と落ちたそれは、何があったか理解しないまま光を失っていく。



「っ!!各員戦闘準備!!!」

「……ハッ!!」



戦場ではよくあること。


そう割り切り、目の前に現れた敵──黒虎(シュヴァルツタイガー)と対峙する。




作者はロリコンではありません。本当です。

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