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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第二十八話《素人の農作業》




 一瞬で屋敷へと戻った俺は、デヌンのお出迎えを受けてから早速作業に取りかかった。

 何のことかって?決まっているだろ。収入源の確保さ!

 屋敷に附属するこの小さな農地は、長年使われていなかった為か、素人目でもわかるほど荒れに荒れまくっている。それはもう、背の竹以上の雑草がワサワサとなびき、土は固く塊のよう。

 だがしかし、地球では悲鳴もののこの風景、魔法があるなら話は別だ!


「……と、いうわけでまずは、土から手入れしたいと思うんだけど…」

「フムフム、最終的には、楽に暮らすため全自動で種から収穫まで出来るようにしたいと。」

「そこをピックアップしてはいけないよマイ君。俺は農業の知識は持ち合わせていない。だが、そんな俺のなけなしの知識でもできるありがた~い農作物を、まずは作ってみないか?という話だ。」


 カンカンに照りつける太陽のもと、サワァとなびく草の前でマイと下準備をする。準備も、れっきとした作業……なのだ。マイが大量に買ってきたアイスを食べながら、でも。

 

『けどよボウズ、本当にここでやんのか?畑死んでんぞ?』


 羨ましそうにアイスを見つめながら、デヌンが戯言を言っている。霊のくせにヨダレまで垂らして、ギンッ!と凝視。

 そんなデヌンが面白いのか、マイが「ほれほれ♪」とアイスを見せつける。デヌンは、アイスを取ろうとするも、霊のため触れられず空振り。『くそっ……うまそうに食いやがって……』と嘆きだした。マイは、勝った!と言わんばかりにサムズアップ。


「……話を戻すぞ。確かに、この畑は死んでいる。だが、それがなんだ?……方法なんぞいくらでもあるだろう。」

『悪い顔だなボウズ……だがよ、それが難しいんだろ?雑草を刈り取るにしても、土を変えなきゃいけねえんだからよ。』

「いいか?『バレなきゃ犯罪じゃない』……そんな格言だってあるんだ。そう、大丈夫。それに、この方法は犯罪じゃないし……」

『?おい、ボウズ……?』

「………マイ、ちょっと耳貸して」


 この計画は、流石に今の俺だけではまだ出来ない。故に、マイにも手伝って貰う。

 それを聞いたマイの反応は……


「……ケンヤもワルだねぇ……」

 呆れたような、けれどどこか楽しそうな感じだった。

「さぁ!場所は伝えた通り!マイ先生、やっちゃって下さい!」


 マイが空中に魔法陣を構築する。

 それは段々と畑全体を覆うようなベール……空間の境目を作り出した。


『ボ、ボウズ…。嬢ちゃんって、あんな魔法使えんのか?』

「空間転移してくるのは何度も見ただろ。あれと同じだよ。」


 唖然と口を開いている霊を横目に、その神秘的ともいえる銀色のベールを見つめる。


「“界置(カイチ)”」


 スゥ…っと、ベールが光を失っていく。そして現れた、あの荒れに荒れた農地は……


『うおおお!!さっっぱりになったぜぇ!すげえ!』


 興奮して顔面がちょっとキモくなっているデヌンの反応通り、綺麗さっぱり雑草は無くなり、土もフカフカの状態になった。ちなみに使ったのは空間魔法である。そう、空間魔法なんだ……


『いや、すげえモンみたわ……空間魔法だろ?しかも結構上位の………ん?空間?空間魔法で雑草を?んん?……おいボウズ。』

「なんだいデヌン?これで畑問題は解決だ。さあマイ、よくやってくれたよ。今夜はお祝いでもしようか。」

 デヌンが何かに気づきかけているが、サラリとかわしておく。マイも『やったぁ!じゃあクルシュ。クルシュ食べたい!』と乗ってくれている。


『この畑は丁寧に耕されている。しかもさっきまでなかったシャベルと肥料も置いてある。使った魔法ってなんだったか?』

「ええと…空間魔法だね。」

『〈界置〉ってどういう魔法だ?』

「………指定範囲の空間を、対象の空間と入れ換える魔法だね。」

『もひとつ質問いいか』

『…あの荒れた畑はどこいった?』

「…君のような勘のいいガキは嫌いだよ」

『ガキじゃねえ!てか誰の農地と入れ換えたんだ!謝ってこい!』


 ただ、『土地を返せ』とは言わないデヌンさん。


「まあまあ、確かに見ず知らずの人のを入れ換えたが、所有者がいなくて、周りの人が手入れしてるような場所を選んだから!……だよな?マイ」

「うんっ、大丈夫。あっちは混乱してるみたいだけどね……」


 何だか苦い顔をするマイ。首を突っ込んでも面倒ごとになりそうなので、『あっち』のことは聞かない。


「さて、とりあえず整備(略奪)はできたから……イモ、埋めるか!」


 この世界でもイモは普及していて、成長もちゃんと早いらしい。しかも超丈夫ときたので、まずはイモ作りから始める。

 早速、アイテムボックスから買ってきた種芋達を取り出す。ジャガイモドキ、サトイモドキ、ナガイモドキといった、それっぽい見た目で、この世界でイモだと言われている品種だ。モドキを付けているのは、あくまでそのイモっぽいからである。


「ケンヤ、わたしそういうことやったこと無いけど、手伝えることってある?」

「ああ、一つやって貰いたいことがある。でも、まずは埋めてからな。ちょっと待っててくれ。」

『オレの仕事は無さそうだな。んじゃ、見張りでもしてくるわ…』


 デヌンがゲンナリした表情で、門の方へ向かう。

 ちなみに昨日、俺達がこの屋敷に初めて足を踏み入れた時、門を閉め驚かし、お帰り願おうとしたそうだが、全く気づかれなかったため少し落ち込んだらしい。


「よし、まずはジャガイモドキからやるか!」


 作業に取りかかる。日差しが強いので、日除けの帽子を被り、片手には買ったばかりの魔術教本。

 教本内には生活魔法がずらっと載っており、そのなかから今回使う魔法を探す。


「地魔法中位……あった。〈土操作〉。」


 スキルと魔法の違いは微妙な所だ。例えば〈錬成〉や〈鑑定〉なんかはスキルだし、この〈土操作〉は魔法に分類されている。

 最近、ある程度線引きの目安は掴んできたが、まだまだ良く分からない。そういうことは気にしても無駄だ。便利だから使う、それだけである。


 〈土操作〉は、岩の形を変えるなどは出来ないが、植え溝などの凹凸を作ることができる。割と広範囲なので、戦闘にも稀に使われるそうだ。敵の足を引っかけたり……


「うっし、こんなもんか。」


 当然のように教本を見ただけで、〈土操作〉を使用できた。❲能力(スキル)超獲得補正❳の為せる技である。


 取り敢えず植え溝を作った。深さは10~20cm、幅は50cmほど。農業は営んだことなどないので、ありあわせの知識である。

 神鑑定によると、畑の大きさは横四十メートル、縦三十メートルほどの長方形。深さは十数メートルあり、そこに地下水路があるようだ。中世かと思ったら結構やりおる。土壌の状態も水はけが適度に良く、栄養もあると出ている。


 作った植え溝に、種芋を埋めていく。……大体40cm間隔くらいでいいか。

 

 地道に埋めては土を被せ、また埋めては土を被せ……と、ずっと繰り返していく。これも全自動でできる機械ってスゴいと、改めて感じた。


 作業を始めて三時間ほど。ついに全ての種芋を埋め終わった。素人にしては上出来だと思う。


「ふぃぃ………さて。おいマイ、起きてくれ~、仕事だぞ~。」


 日は落ちかけているが、今日中に終わらせたい。いつの間にか屋根下で寝ていたマイを起こす。


「っうぅ………ケンヤ……!そうだった、仕事!」

「そうだ。マイには、自動で水やりが出来るよう、持続性魔法陣を描いて欲しい。できれば、雨の日にはストップする……とかの機能も欲しいな…できるか?」


 あ、注文が多いかも……と思ったが、不敵な笑みを浮かべているので大丈夫だろう。


「フッ、楽勝楽勝。それくらい造作もないよ。一日何回、どれくらいの量?」

「助かる。二回、そうだな……ある程度水が土に浸透するくらいで頼む。」


 任せとき!と言うようにグッと親指を立て、早速魔力を高めている。寝起きのはずでは…覚醒が早いのか。


「……もうこんな時間か。マイ、それ終わったら、夕食にしよう。何がいい?色々買ってきたから種類はいっぱいあるぞ。」

「ちょっと待って……終わった。今日はクルシュがいい!」

 クルシュは、俺がマイと初めて食べた、葉野菜豊富なグラタンだ。あれは結構うまかった。


「分かった。今夜はクルシュにしよう。」


 やった!と喜ぶマイ。背後の畑の中央には、青く光る魔法陣が堂々と描かれている。おそらく、スプリンクラーのように水を放つ仕組みだろう。青い光が、夕日とコラボしてとても綺麗だ。


『お、ボウズ。終わったか?オレにも何か食わしてくれよ。門の見張りの賃金ってことでよ。』

「デヌン、お前メシ食うのか?」

『あったりめーだろ。食いモン食わねえ生きもんなんてほぼいねぇんだからよ。』

 衝撃の事実。霊はメシを食う!


「アイス透けたくせにか?」

『霊には霊の食いモンがあんだよ。まあ、魔力が詰まってればいいんだがな……』

「魔力が詰まってればいいのか?……仕方ない。用意するから、屋敷ん中入るぞ」


 まったく、この霊は……

 異世界(こっち)に来てから二週間。そう思いながらも、ケンヤはどこか楽しげに、そう答えるのであった。




・今日のマイ


·性格:デレデレ

·目付き:幸せそう

·身体能力:向上

·魔法:天位魔法まで

·口数:多め

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