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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第二十五話《秘密の倉庫に潜む者》




 自ら暗闇に飛び込んだ俺は、その光景に思わず尻込み……ではなく、「ナニコレ?」という感想を抱いた。

 マイ様の命令で、真っ暗な空間に突入したはずだが、いざ入ってみると視界は良好、体が重いなどの不自由などもない。


 見渡すと、椅子に机、トイレやベッド等、一人暮らしの人が住んでいるかのような物がずらりと置いてある。

 

 そして、なぜそんなナニコレ感想を抱いたかというと………



『ったく、人の言うことも無視して勝手に入ってきてんじゃねえよ……』


 とぶつぶつ悪態を吐き、ベッドにゆったりと横たわる、半透明の中年がこちらを見ているからである。


 その声は、先ほどまで頭の中に響いていたそれと同じ。

 俺の後に続いて入ってきたらしいマイとネルも、キョロキョロと見回してはギョっと半透明中年オヤジを凝視している。



『はぁ~ったく、まさかここまで来る奴がいるなんてな。ほら、用事がねえならとっとと帰りな!』


 なんとも気だるそうに、鼻クソをほじった手でシッシっと払う中年。

 

「……誰?」

『…お嬢ちゃん、そりゃこっちが聞きてえよ。空間魔法付与の古代秘宝(アーティファクト)なんぞ、そうそうばれるモンじゃねえさ……急に現れて、一体お前らは何なんだ?』


 マイの質問に質問で返す中年。

 アーティファクト……それは失われた遺産である。超高度な技術、スキル、魔法そして素材が組合わさりついに完成させられたと言われる72の秘宝は、それぞれが強大な力を持つために封印や秘匿など、とにかく悪用されないよう隠されている、とはジョイの説明だ。


 仮にそれが真実だとして、なぜそんなスゴイ物がこの家にあるのか……といろいろ聞きたいことはあるが……


「……マイ」

「…ん」


 それだけでマイは意図を察してくれたようだ。

 ベッドにスタスタと近づいていく。


『おお?何する気だお嬢ちゃん?まあ、そりゃオレみたいなハンサムゴーストが出てきたら惚れるのも分か……お、おい、ちょっとまて、その光……うおい!や、やめやめろ!…な?一旦…ちょまっやめっ……』


 マイが掲げた手から漏れる光は─神聖魔法の聖なる光。物理的な肉体を持たない霊などに有効な魔法だ。ちなみに、俺は使えない。


「……〈十聖(シバリ)〉」

『ヴァァァァァァァァ!!!!!』


 難位神聖魔法〈十聖(シバリ)〉の光が半透明中年を包み込む。

 理由は明白。単に汚かったからだ。とりあえず霊っぽいし、汚れ含めてキレイにしてしまおうという魂胆だ。


『ぐぞう……お、オレが何をしたってんだ…初対面のダンディになんてことを…』


「…鼻くそ投げてくるからに決まってんだろ。霊……なんだよな?実体なくても不快は不快なんだよ」

「ん、そういうことは、お家でするべき」

『ここオレん家だし!……てかこれ外してくれ。ちぃっとヤベえから。後少しで天に召されちまうからよ。』


 〈十聖〉により、十字架に捕縛された中年霊が救いを求めてくる。


「……天はわたしの故郷。歓迎はしない。」

『何なんだよ……それよりマジで外してくれ。消えそうだ。』

「……もう人前で汚いことしない?」

『しねぇ、しないから早く解いてくれ、頼む…』


 ちょうど中年霊の力が抜けてきた頃、フっと十聖が解かれる。脂汗を浮かべる中年霊。


『助かったぜ……それより、最初の質問に答えてくれや。』


 とりあえず簡単な自己紹介を済ませる。

 ネルも最初は混乱していたものの、流石元一流冒険者というべきか、すぐに安定した。


「んで、最初の物件としてここに来たわけ。で、お前は?アーティファクトの影に潜むなんて、何があるんだ?答えろ。」


 正直、キレイなオッサン(ジョイなど)は良いのだが、汚いオッサンは嫌いである。純粋にキモいからだ。


『ったく、脅迫みたいなことするなよ……ちゃんと話すから…』


 弱々しい声で(誰かさんのせい)、ポツリポツリと話したことをまとめると、こうだ。


 この屋敷は、元々かなり昔にグシオン公爵という権力者の邸宅の()()として建てられ、当時権力争いをして敗北を喫したグシオン家が残していった屋敷だという。中年霊は、自分のことはよく分からないもののグシオン家のことや、このアーティファクトについての知識はあり、記憶喪失に近い状態で何年も籠っているということだ。

 ちなみに何回か入居してくる人がいたが、使命感よりもれなく全員ビビらして、お帰り願ったと自慢気に語っている。


「なるほど…使命感か。そのグシオン家とお前が関係ありそうだが……面倒ごとには関わらん方針だから。どうでもいいわ。」

『ひでえ!!喋らせたクセなんて野郎だ!』

「まあ、お前がただのオヤジ霊で、アーティファクトと屋敷を守ってるってことは分かったから。」


 後二軒、候補物件はある。むさ苦しい霊がいるのはキツイので、他の家にするか…。


「ってことで、ネル。霊がうるさいからここはナシで。マイは?」

「別に、いてもいなくてもケンヤと一緒ならいい。」

『おう!そうだそうだ!住むなんてなったら、毎晩耳元で騒いで寝つき悪くしてやんよ!』


 姑息な嫌がらせを口走る中年霊は、直感的に面倒を引き起こす予感がするので避けていきたいしな。

 それを聞いたネルは、苦々しい顔をしている。

 売れない理由がまさかの霊であり、今売らないと今後買ってくれる人は現れない、と感じたのだろう。

 そこで、彼は苦渋の決断をする。


「……現値に対し三分の一でどうだい?」

「買った。手続きしよう。」

『オイイイイイイイイ!!??』

「んっ…即断。」


 サカタは現金な男である。たとえ大金貨4000枚を所持していても、無駄に散財はしない。

 ネルは内心「くそっしゃあ!」と吐き、マイは新生活に思いを馳せ、名も無き霊は驚きに叫ぶ。


 この日、『主人公』は自らの拠点を確立したのだった。



値引きが凄まじいです。

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