第二十三話《いざ不動産屋へ》
これはこれは……なんとテンプレなセリフだろうか。一周回って、男達に敬意すら覚えてくる。
「誰だお前ら。あいにく俺達は暇じゃないんで。遊ぶなら近所の子供と遊んでやったらどうだ?」
無視して行こうかとも思ったが、なんか面白そうだったので応えてやる。
「おうおう、俺らに刃向かうとはいい度胸じゃねえか!なんなら、お前の手足をブチ切って、絶望したテメエの目の前でその娘を犯しまくってやろうか?w」
ギャハハと馬鹿にしたように笑うテンプレ男A。
テンプレ男B、Cも同じような様子だ。
だが、俺はその程度の暴言は余裕で受け流せる。荒れた某掲示板の罵声の嵐と比べれば、可愛いものだ。
ちなみに、マイには外を出歩く時、フードを被ってなるべく顔を隠すようにしている。
五日前、俺とマイが街を散歩しようとそのまま外に出たとき、異様に人の目が俺達に向いていることに気がついた。
特に男。道行く者がマイをボーッと見つめ、俺を見ると明らかに睨んでくるのだ。
流石にこちらとしても不快だし、面倒ごとが起きるのも嫌。
そこで今日俺は、マイに顔を隠して貰うことにした。
そのため服を持ってこようとしたのだが、なんとマイが着ていた黒ワンピースが形を変え、フード付き黒コートに変わった。マイによると、これも自らの“変化”の力だという。
マイの能力は謎が多い。
まあ、そのおかげである程度顔を隠せたし、それでも見てくる輩に対してはある程度〈英雄威風改〉でピンポイント威嚇をした。
このテンプレブラザーズには、まだ圧をかけていない。それに、ここは道のど真ん中あたりなので『何事?』とギャラリーが集まってくる。マイを狙っている輩へのいい見せしめになりそうだな……
「おい、ちみっ子。いつまで下を向いているつもりだ。顔を上げっ…!」
テンプレ男Bがマイの顎をクイっと上げる。
そして、フード+うつむきで今まで見れなかった、マイの可憐な姿に言葉を途切れさせた。
ギャラリーも、男女関係なくマイに見惚れている。
触れられたのが嫌だったのか、マイはチラッとこちらを見て『殺っていい?』と訴えてくる。
流石にここで人殺しなどしたら色々面倒になるので、(ほどほどに)と念話で返した。
マイは小さく頷くと、いまだ顔に手をかけて硬直している男Bの腕をパシっと掴んだ。
男Bは、『ハッ…!』と現実に戻ると、非力な少女が自らの腕を掴んでいることを確認し、下卑た笑みを浮かべた。
おそらく、そのまま羽交い締めにでもして、連れ去るなりいたぶるなりしようと考えたのだろう。
しかし、それは叶わない。腕を掴んでいるのは決して非力な少女ではないのだ。
マイは腕を掴み「…“振壊”」と、ボソっと呟く。
僅かに掴んだマイの手がピクっと震えたと思った瞬間、男から『ピキバキグキゴギュイガァ!!!』と鳴ってはいけない音が響く。
そして、一拍おいてから、男の絶叫が木霊した。
そう。マイはなんと、男の全身の骨という骨を破壊したのだ。
"振壊"は魔法とは違い、単に振動系のスキルの力を使った技。
そして、その衝撃は腕から肩、腰に足と容赦なく骨をバキバキにしていった。最も、ケンヤに言われたとおりマイは”ほどほど”にしたつもりだが……。
「アアアアアアア!たす、たすけ、痛い」
涙目になり、倒れたまま男Bが嘆願してくるも、マイは軽くスルーし、ジロっと男A、Cを見つめた。
ブルリと変な汗をかき、一歩後ずさる二人。
そんな男らを尻目に、マイはニヤっと笑い……
「……骨抜きにしてあげる。」
「「グ、ギャアアアアアアアアァァ!!!」」
容赦なく骨を破壊した。
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「……ごめんなさい」
マイは、全身骨折という哀れな姿で公衆の面前に晒されている男達に向けて……ではなく俺に向けて謝罪した。
流石に全身骨砕きなんて光景を見せられた観衆は、慌てたように憲兵を呼ぼうとしたので、咄嗟に男たちを治癒魔法で回復、何事もなかったというスタンスを貫くことに。。
男達には口封じのため一応鎌をかけておいたが、回復してマイをみた途端『バボボボボボボボ』と白目を剥いて気絶してしまった。
出掛ける前に、マイには騒ぎを起こさないよう言っておいたので、それを破ってしまったことへの謝罪らしい。
「まあ、仕方ないな。絡んできたのはコイツらだし……とりあえずこれ放置しとくか。」
三人仲良く伸びてしまったテンプレブラザーズは放置し、さっさとウヴァル不動産目指して行くことにした。ここにいても面倒になるだけだし。
「ん、わかった。」
探索魔法を頼りに移動を再開した。
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「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか。」
キノスラの街の一角、町民たちの家が建ち並ぶ閑静な場所に、店はあった。
かなり小ぢんまりとしたもので、危うく見過ごす所だった。
中も、まあ予想通りというか質素な感じだ。
「ウヴァルさんて今いますか?ある人から手紙を貰ってて。」
「社長なら丁度おりますが……手紙とは?」
アイテムボックスをこっそり開き、手紙を抜き出す。
「ジョイっていう人からです。」
「ジョイ様!?しょ、少々お待ちください!」
手紙を受けとると、突然驚いたように目を見開き、どたどたと奥の部屋へ入っていく店員。
やがて、またドタドタと足音が聞こえ先ほどの店員が戻ってきた。
……そして、隣には見るからに不審者という格好をした覆面が。
「はぁ……きみがジョイの手紙を持ってきた人?」
「あ、はいそうです。色々ありまして、彼には世話になっております。」
気だるそうな声で覆面が話しかけてきた。
おそらく彼が社長ウヴァルだろう。
「まあ……応接室に通すからさ、少しまっててよ。あそこの角を曲がった所ね。お連れさんも一緒にどうぞ。」
どうやら別室で話すらしい。
マイを引き連れ、指定された部屋に入る。
……うん。ここも普通だ。装飾はあまりない。
椅子と長机があったので、少し休憩する。
十分くらい後。ガチャリと扉があき、覆面が入ってくる。
「やあ、待たせたね。それにしても、ジョイが手紙なんて珍しいな。まずは自己紹介と行こうか。」
そういい、ズカっと一つの椅子に腰かけた。
「僕の名前はネル·ウヴァル。この国の不動産……土地は、半分以上把握してるよ。」
そんなデカイグループだったか。正直、もっと小さいものだと思っていた。
ネルは、あまり背が高くない。マイより少し高いくらいだ。なりより特徴的なのは、なんでんなもん被ってんだよ!と言うくらい強盗臭がすごい黒の覆面を被っていることだ。一回会ったらそうそう忘れない気がする。
「俺はサカタケンヤだ。記憶喪失の所をジョイに助けて貰った。こっちはマイ。良くわからんが俺に付いてきた。」
「むぅ、淡い恋心を『良くわからん』なんて酷い。今日一緒に階段も登ったのに……」
少し拗ねてしまったマイを端目に、今回訪れた理由を話す。
「今日は、俺の家探しをしたい。理想は農地があって、治安が良いところ。まずはそれくらいの条件かな。」
「サカタとマイさんね。なるほどなるほど……それくらいの条件の場所ならたくさんあるよ。ゆっくり決めてくれたらいいさ。」
バサァと、ネルが物件情報の紙を広げる。
この中から選べということだろうか。
「話が早くて助かる。じゃあ、遠慮なく選ばしてもらおうか。」
……その中からやっと三つ候補を決めたのは、既に二時間が経過した時だった。
ネルの見た目
髪 紫らしい。
顔 覆面で見えない。イケメンらしい。
体 細身、低身長。歳は三十代。




