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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第十八話《少女との朝》




 目が覚めた。

 窓からは光が射し込んでいる。


 時刻は……八時。寝たのは九時間くらいか。


 城の襲撃から数日間、『剛断会』からの新手に警戒していた俺たちだったが、特に何も起きず時間が過ぎていった。

 強いて言うなら、マイラの性格が毎日入れ替わり立ち代わりしていたのを見ているのが面白かったくらいだ。



 さて…と、むくりと起き上がり、伸びをしておもむろに周りを見渡した。そして…



「あっ」



 坂谷は見た。デリケートゾーンを守護する純白の衣だ。


 視線の先では、マイラが物凄い寝相で床に寝転がっている。


 昨日、彼女は部屋に入ったとたん寝たわけで、着替えもせず黒のワンピースのまま寝てしまった。


 そして、かけてやった布団も蹴り飛ばしてすやすや寝ていて……


 まあ、つまりは、その、見ちゃったわけだ。

 俺はロリコンではない……と思うが、思春期男子には効くやつですわ。


(幸運補正❲特大❳発動)と頭の中で響いているが無視する。


「…………よし。」


 ここは(にい)として、ちゃんと直してあげないとな。


 そっとベッドから出て、マイラに近づく。

……見ないようにするが、なんだか背徳感がやばい。


 にしても…


「マイラ……マイ、マリ、マーラ……」


 気になったのだが、俺が日本人だからか『マイラ』と呼ぶとき、イが発音しにくく『マアラ』とか『マリャア』とかになってしまう。

 それじゃ悪いので何か解決案がないか考えているのだ。


「にしてもホント寝相悪いな!」


 マイラが寝た時の場所とは、今いる場所から数メートル距離がある。

 寝てる間に大移動とはすごいやつだ。


 乱れた服を、すその方から慎重にきちんと整えてやる。


……はたから見ると、俺は寝ている少女に手をかける変態だな。

 

「……んんう…」


 もぞっとマイラが動き、思わず飛び退く。


「あぶねえ…だが、残りは上半身のみ…!パパっとやってやるぜ!」


 そう勢いづいた俺は、一瞬にして裏返った襟を直し、胸元のボタンを付けようとして……



「……んあ。……に、にい………!?な、なにして」


 起こしてしまった。


「あ、ああ。おはよう!今日はいい朝だな!」


「……へんたい」



 バッドタイミンッッッ!!!!!




   ►►►




「その………べ、別に、にいになら襲われても構わない……でも、わたし経験ないし、こういうことは一回話してから」


「そんなことしねーよ!!いや、確かに起こして自分で直してもらえば良かったかもしれないけど、俺も良かれと思って…」


 俺は今マイラと向かい合って話し合いをしている。

 マイラの顔が少し赤いのは気のせいだろうか。


「それに……マイラは妹だろ?妹に手出すなんて鬼畜じゃねえか」


 いつもにいにい言ってくるので、お返しに妹と言ってみた。


「い、妹……妹か……そっか」


 少し機嫌をなおしてくれたようだ。

 まんざらでもない様子でにまにましている。


「ん、そうだにい、さっきマーラとかマイとかママとか言ってた。…どこの女?」


「いやお前だよ。あとママは言ってない。…まあ何ていうかその……マイラって言うの難しくて、愛称みたいに呼べないかなって。」


 納得した様子で、ぽんと手をたたくマイラ。

 てかその時から聞かれてたのか?いや、寝てても覚えてる時ってあるし……



「マイラも本名じゃないけど。でもマイっていうのは何となくしっくりくる。」


 唐突な新事実!!!


「ちょっとまて、本名じゃない?ステータスにはマイラって…」


「ん、偽装した。」

「そっか、偽装か、ハハハ……ちなみに本名は?」


「ん…………秘密。」

「そっか、秘密か、ハハハ……。」


「でも、マイっていうの気に入った。これからはマイって呼んで。」


「別にいいけど……いいのか?マイラってのに愛着とかは」


「あだ名だから、特に気にしない。」



「まあ、マイって名前の友達いたし言いやすいけど……じゃあ、これからマイって呼ぶけどいいか?」


「んっ…好きにしていいよ……」


「そういう言い方はやめとけ。相手がヤバいおっさんとかだったら危ないぞ」


 マイラ…マイが調子に乗ってきたので、釘を刺しておく。


 本人は、にやついたまま「わかった」と返事を返したが、ありゃ多分わかっていない顔だな。同じことをしてきそうだ。


「…さて、これからの予定だが、まずは朝ごはん食べようか。」


「賛成。料理は至福なり。」

 

 そう考え、大食堂へ向かうことにした。


 そもそも、このポラリス王城は東·西·北·南殿と中央塔に分かれており、それぞれ四殿が三階、中央塔が五階建てだ。地下にも一から三階ある。


 俺が寝泊まりさせてもらっているのが南殿の二階、地下牢への階段が東殿の一階、謁見の間が北殿の四階、そして大食堂が中央塔の二階といった具合だ。


 南殿は兵士たちや客人の部屋があり、北殿は国の情報や王の部屋など国の心臓部。

 東殿は訓練施設などがあり、西殿は基本倉庫の役割を果たし、中央塔に兵士が在中している。


 中央塔からは各四殿に繋がる通路があるため、トラブルも即座に対応可能…だそうだ。


 部屋に料理を運んでもらうのもいいが、一度大食堂に行ってみたかったのである。


「にい、歩くの面倒だから、空間転移で」


「お、助かる。俺はまだ視認転移しか使えないからな。」


 昨日…じゃなくて今日の戦闘で、王城のマップは全部把握した。

 マイも多分同様だろう。


 「にい、掴まって。」


 そうして、大食堂へと転移で向かった。




   ►►►



「……おびただしい数の人」


「ああ、確かに多いな。」


 大食堂は、兵士たちで埋め尽くされていた。

 椅子に座れるものは少数、大体みんな立ち食いだ。

 いったいどこにこんな数の兵士がいたんだ!という感じである。

 


「にい、あれ、あれ食べたい。」


 マイが目を輝かせて看板を指さしている。


 マイが興味を示す料理というのはどんなだろうか。


「……ってこれかよ!」


 大白百足(ムシ)の肉だった。


「本当にあれか?あの足がたくさんあって急に現れられると超ビビるあれか?」


「ん!あれがいい。大白百足の肉は美味しい。昔よく食べた。」


 ゲテモノ好きだったのか…?いやでも美味しいって言ってるし……。


 まあ、でも食べたいとピョンピョン跳ねてるマイを見てたら、それでもいいかと思えてくる。


「わかった。もらってくるから待ってろ。」


 人混みをわけて進んでいく。

 途中「見ろ、あの方がサカタさんだ」とか「幹部を倒した…」とか聞こえたが、多分聞き間違えだ。人混みが勝手に割けていたように感じたのも、自意識過剰が過ぎるだけだ。


「すみません、大白百足焼きを一つ」


「どうぞ。熱いのでお気を付け下さい。」


 店員の顔は、見たことがある人だった。


「あの時の…!怪我は大丈夫なんですか?」


「はい、浅いものでしたので。出血は多かったですが治癒魔法のおかげで。その節はありがとうございました。」


 深々と頭を下げてくるのは、夜中侵入者が来たと知らせてくれたメイドだ。

 茶頭にやられていたが、無事らしい。


「いやいや、治癒魔法をかけたのはマイだし……それより、なぜここに?」


「朝は大食堂で店員をしています。今日はここの店ですね。」


 大食堂には、無料で食べられるものと、金銭を出して食べるものがあり、半分フードコートみたいになっている。


「そうですね…お礼も兼ねて、今回は無料とさせていただきます。」


「ありがとう。マイが食べたそうにしていたんだけど、地味に高いなーって思ってたから」


「そうですか、それは良かったです。大きめですので、サカタ様も少し食べて見てくださいね。美味しいです、美味しいですよ。大事なことなので二回言いました。」


「わ、わかった。食べてみるよ。じゃあまた。」


「はい、それでは。」


 マイの待つ場所に戻る。


 なんか念を押されたので、マイが良ければ少し貰おう。

 しっかし、大白百足焼きがでかい。見た目も、お世辞には良いと言えないほどだ。本当に大丈夫だろうか……




   ►►►



「にい、おいしかった」


「ああ、まさかこれほどうまいとは思わなかったよ。」


 マイに大白百足焼きを持っていくと、どうせならにいも食べてみろと、半分くれた。


 意を決して食べると、なんと予想に反して味が濃く、ジューシーで美味しかった。タレつきの牛肉に似た味だ。

 

 折角なので、それと一緒に穀類やイモみたいなものも貰って食べたが、残念ながら米はないようで、麦に似た味がした。イモはまるっきりジャガイモだが……


 日本人の血が疼くので、いつか白米と味噌汁を合わせて食べたいものだ……


「よし、そろそろ時間だから行こう。北殿の一階って言ってたな。」


「ん、わかった。転移する。」


 ジョイに、記憶喪失(と思われている)である俺の今後のことについて話し合おうと提案されたので、指定された場所へ行く。



 今後のこと……俺がしたいことは既に決まっているので、それを伝えればいいか。



「ん、"空間転移(テレポート)"」


 そう考えながら、俺たちは北殿へと飛んだ。




 マイは、少女といっても年齢は神族だからかなりのもので、つまりロリバb···おや、誰か来たようだ。


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