第十七話《戦いの終結》
「ヌハハハハハ!!!」
笑い声がこの空間に響き渡る。
声の主は、黒頭を踏みつけながら剣を掲げている。
王だ。ポラリス王国の王が自ら戦線に出てきたのだ。
「お、王……だと…なぜ」
「む、まだ息があったのか。ほれ」
戸惑いもせず、倒れ伏した黒頭にズスっと剣を突き刺した。
「グオオオアアア……アア」
叫び声をあげるも、やがて黒頭は力無く気絶した。
「ふん……急所は外してやった。死にはせぬだろう。
それにしても、皆して『侵入者が現れたから避難してください(裏声)』だの何だの……余とジョイで行けばすぐ終わるだろうに」
王がぶつぶつ文句を言いながら、ツンツンと剣先で黒頭をつつく。痛そうだな。血がトクトクと流れ出ている。
「王よ……なぜ来られたのです。万が一なんてことがあれば…」
「ヌハハハ!なに心配には及ばん。お前が一番よくわかってるはずだろう。」
ジョイが呆れたように王を注意する。
そういや王って強いのか?黒頭のトドメはさして行ったが…
超鑑定しよう。
オマーグ·ポラリス
・称号:ポラリス十四世、国王、獅子王
・レベル:190
「ええ……」
ジョイよりレベル高いですやん。
「ぬ、サカタよ。勝手に余を鑑定するでない。プライバシーの侵害であるぞ。」
「す、すみません!」
なんかばれた。そういうスキル持ちなのだろうか。
王はよいよいと言うように片手で制し、顎に手を添えた。
「して、侵入者はこれで最後か?三人と聞き及んだが…」
「おそらく。私の探索魔法には引っ掛かりませんが……サカタ様はどうでしょう。」
「俺も敵はいないと思うよ。」
敵意を持つものはいなさそうだ。一安心……といった所か。燃え広がっていた炎も、ジョイが水魔法で消火している。
倒れた兵士たちも治癒魔法をかけられ、何人か復活している。
「ふむ…サカタよ。神族の娘はどこだ?」
「ああ、三人の内一人を討伐しに行きましたが……」
忘れてた。戦っていたのは分かったが、その後は知らない。
「地下牢への階段近くで倒れているようだが」
マジ?ちょっと心配だ。
「様子を見に行きましょう。一階の東殿です。」
ジョイの提案でマイラのところへ行くことになった。
「余もついていくぞ!」
王も来た。
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「……どういう状況だこれ…」
マイラが階段にもたれ掛かるように倒れていたので焦ったが、杞憂に終わった。
むしろ困惑する。
「眠るマイラに、物凄い形相で止まるお姉さん……ナンダコレ」
いまにも殴りかかって来そうなポーズで硬直しているのは、侵入者の一人で、称号は『青頭』らしい。超鑑定した。
「とりあえず起きろー。おーい、早く起きないと遅刻するわよー。」
「……んんう、にい……。なにいってるの」
お母さんネタをしらけた顔でマジレスされた。起きたてだし仕方ない、うん。
「おい、これどうしたんだ。」
「んう、それは……」
何があったか淡々と説明してくれた。
途中、神位の結果を無駄遣いで寝るとか、王位時空間魔法とか言う単語をだすもので、ジョイが苦笑していたが。
「ってことはあとちょっとで動きだすのか?」
「ん、そゆこと。アイテムボックスにでも入れられない?」
「それは難しい……空間の時が止まってるからなあ」
この周囲一メートルは越えられない一線のようだ。びくともしない。
確かに、アイテムボックス内は時間が止まるようだが、それとは別問題だ。
空間なんて入れられたら、それこそ箱じゃなくて倉庫みたいなものだろう。あんま例えがしっくりこないが。
まあ案の定入らなかったのだが、王とジョイが『ちゃんと檻にぶちこんでおく』と言ってくれたので、後始末は任せて良いだろう。
アイテムボックス内の『茶頭』と、重症の『黒頭』も同様だ。
そうして今回の騒動が終わりに近づいた時、すでに時刻は四時を指していた──
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「ああ~疲れたあああ~。」
あの後、王とジョイと話をしてから部屋に戻った。
ジョイは後も忙しいらしく、兵士に一応の警備をさせたり、動きだした青頭の捕獲だったりと大変そうだった。
皆疲れたようで、今後の話は一眠りしてからするようだ。
マイラは部屋に入った瞬間、バタリと倒れそのまま寝てしまった。
神族でも眠気には勝てないようで、仕方がないので布団をかけてやった。
俺も速攻ベッドダイビングをして眠りに落ち、ノンレム睡眠を貪りたいのだ。
「色々大変だなあ……」
突然異世界に来て、ゴツい男に会って、王に対面して、多面な神の少女が付いてきて、悪の組織的なのと戦う。
長く感じたが、まだ三日目なのだ。
もしこのイベント続きが、この〖主人公補正〗やらの仕業なら……
嫌だ。面倒くさい。
俺は元より、「もし異世界に行けたら、美少女とまったりスローライフとかしたい」と思っていたのだ。
冒険とかもたまには良いと思う。実はめっちゃ強い設定も良いかもしれない。
だが、俺はまだ事件に巻き込まれるばかりだ。もっと自由に異世界を満喫したい。
いやジョイや王はいい人だし、マイラも可愛いのでいい。
だが、なんとなくだが、親に進路を決められるような、そんな感覚がする。この感覚はあまり好きではない。
……考えても無駄か。俺は俺らしく生きればそれでいい。
とりあえず今後の方針は考えて、おく…か……
そうして、俺は深い眠りについた──




