第十六話《分担戦闘─後半─》
「ジョイ!!しっかりしろ!」
「さ、サカタ様…!なぜ、ここに」
「手助けに来たんだけど…ちょっとヤバそうだな…」
とっさに"土之壁"を放ったことで俺の周りは無事だが、壁の向こうは無残な光景だ。
「ぐっ…遅れをとりました……。敵はこちらを翻弄しつつ強力な魔法を撃ってきます。」
「ジョイよりも強いのか」
「広い場所…ハーシェル草原のような所ならば自信がありますが…なにより近距離も遠距離も得意なようでした。一旦退いて戦力を集めて戦いたいものです。しかし……」
「ここで退いたら城が崩壊か…どのみち戦闘にはなるみたいだぞ」
炎の中を凝視する。だんだんシルエットが浮かび上がってきた。
「フヒュ、フヒュヒュヒュヒュ……流石は魔術師長、中々にしぶとく、手強かったですねぇ」
現れたのは、長身でもやしのような体型の男。服は全身真っ黒だ。気味の悪い薄ら笑いを顔に張り付けている。
「おや、隣の者は知らない顔ですねぇ。まあいいでしょう。そろそろ青頭が暴れ馬を回収する頃合いですし……んん?青頭の反応が…」
余裕かました顔が一瞬で焦り顔に早変わり。
表情豊かなやつだな。
「あー、多分そいつは俺の連れが倒したんだと思うぞ。あと、茶頭ってのは俺が倒した。」
「なんだと…?茶頭まで……。チッ、計画変更ですか
。まずあなたを殺すとしましょう。長さんはその後ですよぉ。」
ズズっと殺気が伝わる。
こいつは何頭だろうか。超鑑定しておこう。
クラウン·ガウル
・称号:黒頭、奇怪の殺し屋
・レベル:175
マイラを除いて、今までで最高レベルだ。
警戒して戦おう。
「それでは、いきますよぉ!」
黒頭が剣を抜き、距離を詰めてくる。
「"水流壁"!!」
今いるこの通路は、大体十メートルくらいの幅があったのだが、黒頭がぶっ壊したせいで三十メートルくらいの大広間と化している。
それを両断するように水流壁を張った。
「"炎獄"!!」
黒頭は剣を使わず、燃え盛る炎を水流壁に繰り出した。
爆発が起き、熱風が吹き荒れる。熱い。
だが、この爆風を直で受けた黒頭も無事ではないだろう。
「や、やりましたか?」
「安直なフラグを立てるな……ってやっぱり。」
水流壁の向こうに人が立っている。
だが、よくみると先ほどの黒頭とはまるで違う。
もやしみたいだったのが、一気に大根になったようだ。
水流壁を切る。
「フ、フヒュヒャヒャヒャヒャヒャァ!!!やっと力がたまりましたぁ!!」
「そういう仕組みだそりゃ」
「どういう仕組みかって?ふむ、それでは特別に教えて差し上げましょお!ヒントはこの服ですよぉ。」
……なるほど。そういう仕組みか。
「ハーシェル草原と似てるな。」
「当たりでぇす!この服は魔力を一定量吸収してから、使用者にその力を与えるんですよ!!そしてこの状態のワタシはほぼ無敵!逆らう者は皆殺しでぇす!!」
だから炎に包まれても無事だったのか。
しかし急にテンション高いなコイツ!
「それでは、再戦といきましょう!"業火炎爆砲"ッ!!」
「回避して下さい!超位火魔法です!」
ジョイが叫ぶ。
確かに圧倒的な熱量だ。視認転移なら避けられるが、ジョイが焼き肉になってしまう。
どうする。
何が最適解だ。
"水流壁"や"土之壁"では被害が大きくなるだけだ。
俺には死亡回避補正がある。ジョイだけ逃がすべきだろう。
「こうなったら…やるしかないか。」
技術と魔力量は十分。成功するかどうかは俺のイメージ次第だ。
もう目の前にエネルギーの塊はある。
「イメージは空間、転送……よし、イケる!」
手のひらに魔力を集め、目の前の空間にそれを流す。
業火炎爆砲を包み込むほどの空間を制御する感覚。難しい。
だが、無理ではない。
安全な…遥か上空の空間と繋げるイメージ…成功だ。
そして一つの魔法を作り上げた。
「開け!"空間之扉"!」
刹那、渦の巻いたような模様の不思議な円が現れる。
ずっと見ていると、心が吸い込まれそうになる円だ。
"視認転移"などの魔法は、空間そのものではなく、空間内の物体を移動させる魔法だ。
しかし、この"空間之扉"は、空間そのものを操る。どこ○もドアのように空間を繋げるのだ。
円に触れた業火炎爆砲は、一瞬にしてかき消え、この場に静寂が訪れた。
「な、なんですと!?ワタシの業火炎爆砲を一瞬で……」
「なんと…王位空間魔法など初めて見ました……。」
二人とも驚愕したようだ。
だが、まだ戦いは終わっていない。
「隙アリ!"風刃"」
「グボァァァ、ァ……」
咄嗟に思い付いた魔法を使ったが、効果はあったようだ。風の刃なら狭いところでも使いやすい。
「ジョイ!」
「分かりました!………巡り流れる水の咆哮…"激流波"!」
黒頭が吹っ飛んだところでジョイの詠唱付き追撃が入る。
大量の水が勢いよく波のように襲い掛かった。
「ガボァ…小癪ですねぇ!切り捨てて差し上げましょお!」
激流を押し退けて、こちらへ向かってくる。
近くでみると三メートル近くの大きさになっていた。
すかさず視認転移でよけ、風刃を撃ち込む。
避けられないと思っても、負傷回避補正が効くようで、かすりもしない。
ジョイも、物理結界と魔術結界を張りつつ様々な魔法を撃っている。
「鬱陶しいですねぇ…そろそろ終わりにしましょうか!"業火炎爆砲"!」
先ほどの"空間之扉"で俺の魔力が減り、もう一度はないと思ったのか、またあの魔法を撃とうとしてくる。
俺も備えて"空間之扉"を使えるよう集中しようとし、ジョイも結界の強度を上げた。
その時だった。
「ブフ!?ヒュヒャァァ……ァ」
「ヌハハハハハ!!!侵入者討ち取ったり!!!」
おっさん─ポラリス王が高笑いをしながら、黒頭をぶち倒していた。
……背後から。




