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ゆっくり異世界生活!(大嘘)  作者: 黒い鱸
第二章:ポラリス王国編
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第十四話《新事実と分担》




「ブボォォォ!」

 パアンというポップな音をあげて茶頭が吹き飛ぶ。そして少しバウンドしてからドサッと床に叩きつけられた。


「っよし、やったか?」


 とフラグを立ててみたものの、茶頭はピクリとしか動かない。


「終わった?」

「ああ、倒したよ。死んではいないみたいだけど、水で窒息寸前で気絶してるし。とりあえずアイテムボックスに入れとこう。」


 本当に倒したか確認してからアイテムボックスに茶頭を入れる。

 先程のメイドは命に別状はないようで、マイラが治癒してくれたので今は寝かせている。

 

「……アイテムボックスなのに人間も入るとはこれいかに」


 マイラがぼそっと呟いた。それは俺も前から気になっている。だがそれより今気になっていることが一つ。


「にしても、マイラ何か雰囲気違うな。」


「…?そう?」


「ああ。昨日はもっとこう、元気少女!!見たいな感じだったけど…。今は眠いからとか?」


 そう。マイラが何か違うのだ。

 長く感じたものの、出会ってからまだ一日である。しかし、それでも昨日とはオーラが違う。

 今は快活少女ではなくジト目で大人しい女の子だ。



「…!言ってなかった。それはわたしがそういう神族だから、仕方ない。」


 お、おう。よくわからん。


「つまり、簡潔に言うと…?」



「毎日人格が替わる。」


「詳しく聞かせてもらおう。」


 どうやらジョイが優勢になってきたみたいなので、ちょっと休憩がてら話を聞くことにした。



   ►►►



 数分、マイラが話をしてくれた。


「つまり、毎日性格·人格がかわるけど多重人格とは違うってこと?」


「ん、大体基本四つくらい。前にいは今のわたしがモエル…?とか言ってた。」


「それな!…てそうじゃない。」


 萌えるってこっちにもあるんだな。知らなかった。


「それで、得意なことも替わると。」


「そう。物理向きだったり、頭を使うのが楽になったり。今は身体能力が低下してる。」


「そうだったのか…時短のため分かれて行動しようと思ったけど危ないかな」


「ん、平気。戦えないわけじゃない。この程度の相手ならワンパン。」


 そっかワンパンか。頼もしいかぎりである。


「よっし。そろそろ行くか。ジョイの所のやつともう一人の所のやつ、どっちが良い?」


「おじさんの所にはにいが行って。わたしはもう片方のやつを潰す。」


「分かった。くれぐれもヘマはするなよ。」


「大丈夫。そっちこそ。」


 そう言ってから、シュバ!っとマイラが転移していった。視認転移より上位のものだろう。



 さて、俺もジョイの手助けに行くか。


 長い夜はまだ続く。




   ►►►




 王城の長く暗い通路を凄まじい速度で走る者が一人。


 彼女は怒りに燃えていた。


「ゆるせないゆるせないゆるさないゆるさない!!!!!絶っっっっっ対許さん!!!」


 怒りの理由は一つ。

 愛する者を手に掛けられたのだ。


 女──青頭は赤頭を愛していた。片思いであるが。


 しかし、つい先日「黒頭」から「赤頭」がやられた、という情報が流れた。


 組織の中でも最上位クラスの彼がやられるなんてあり得ない、と思っていたものの、連絡はつかず探索魔法で街を見ても見つからない。


 まさか本当に…と思い始めたころ、ついに探索魔法にひっかかった。


 場所はポラリス王城。その地下牢の中だ。


 彼女は怒り狂った。必ずや彼を助けださなければと。

 同僚たちやボスもその気らしいので、すぐさま王城へ攻めこんだ。


 そして今。「赤頭」の囚われた忌々しい城の中、地下牢を目指し猪突猛進しているのだ。



「もうすぐだ!待っていてねベダァァァァァ!!!」


 地下牢につながる階段には警備が数十人いたが、そんなものには目もくれない。レベル差がありすぎるので当然だ。余裕で地下牢の一歩手前までたどり着いた。

 


 だが、地下牢にたどり着くことはできなかった。


「な、なんだ!?この結界は!?」


 青頭は、自身のスキル〖狂愛(マッドネスラヴ)〗により、思い人の為に行動する際、様々な能力が発動する。

 そのなかには〈結界殺し〉という、あらゆる結界の天敵とも言える能力があるのだが、それを発動してもなお、破れない物理結界。


「……誰だテメー」


 突然、何もない空間から少女が現れた。


「…にいに任されたからには逃がさない。でも殺さないようにしろとも言ってた。手加減する。」


 華奢な肉体に眠たげな目。

 どうみても戦闘をするようには見えないが、青頭は感じ取った。


……ただ者の訳がない。


 身体から溢れる淡い白い光。


 自身のスキルにより相手の力が見える青頭は、背筋を凍らせる。

 言えば、マイラがこちらに来たのは彼女にとって幸いだったかもしれない。


 マイラがにいと呼んでいる者の魔力はこのマイラの魔力の数十倍である。

 それを感じ取った日には絶望しかないだろう。


 だが、今は愛する者のことで頭がいっぱいだ。


「おいクソガキ、さっさとそこをどけ。じゃないと殺すぞ?」


「拒否する。クソガキなんて心外、このばばあ。」


 青頭はブチギレた。


「言っっったなああああぁぁぁ!!!!!」



 こうして、戦いとも言えない戦いが始まった。




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