第十三話《夜襲と遭遇戦》
「…カタ殿、サカタ殿!!!」
「んん…あ、おはようございます。」
目が覚めるとメイドがいた。。朝はメイドさんが起こしに来てくれるのか。
「違います!侵入者です!城内に何者かが侵入いたしました!」
「し、しん」
あ、英雄威風がオフだった。発動させておこう。
「侵入者ですか?」
「はい、夜襲です。ここも危険ですので避難誘導に来ました。」
時計を見ると時刻は夜の二時。寝てから二時間も経っていない。
こんなニートの活動時間に襲撃か。
確かに、城には警鐘が鳴り響いているし、戦闘の音も聞こえる。
「わかった。何人くらい城へ?」
「確認したのは三人です。現在ジョイ様を筆頭に交戦中ですが、苦戦を強いられています…」
そうか。ジョイが苦戦しているのか。
「避難は別にいいよ。俺も戦う。」
「ですが、危険です。相手のレベルは推定130以上。並みの兵士では到底太刀打ちできる相手では…」
「そのくらいなら多分問題ない。パッと行って蹴散らすだけだ。」
そういうと、メイドは悩んだように少しうつむき、そして
「…わかりました。正直今回の戦闘はギリギリの状況です。王のお墨付きであるあなたを信じます。ご武運を。」
と言ってから部屋を走って出ていった。いそいで避難を開始したのだろう。
俺も行くか。早くジョイの手助けに向かおう。
その前に…
「おい、マイラ起きろー」
「…んあ、にい、なに?夜這い?」
「違う、一仕事だ。」
「……!わかった。安眠を妨害した輩、ぶっ飛ばす。」
すぐに察したようだ。てか夜這いとか言うなよ。
「にい、探索魔法使う?」
「いや、今回は俺がやってみる。よくわからんが覚えたみたいだし。」
そう。俺の知らない間に探索魔法が使えるようになっていたのだ。ついでに空間魔法も。
感覚的に使い方がわかる。不思議な感覚だ。
まあいい。さっさと侵入者を探すか。
「発動」
周囲の物が手に取るようにわかる。範囲は城全体だが、牢屋から宝物庫までまるわかりだ。
もちろんジョイや侵入者の位置まで全部わかる。
「……なるほど。どうやらすぐエンカウントしそうだな。行こう。」
そう考え、俺は部屋を出た。
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部屋を出てすぐの所。
先程のメイドが倒れていた。
そしてその前では一人の老人が俺を見ている。
……やっぱりか。本当にすぐだな。
「ほほお、これはこれは夜遅くにすみませんね。城攻めはどうしても騒がしくなる」
「あんたが襲撃者か。」
「いかにも。しかし、私は別段殺戮をしに来たわけではございませぬのでね、なるべく速やかに目的を達成したいのですが…こうも邪魔されるとですね…」
トン、と足でメイドをつついた。
メイドからは血が出ている。
「目的ってのは知らないが、恩人のピンチなんだ。俺もそこを通りたい。」
「ダメだと言ったら?」
「…お前を潰す。」
英雄威風でこいつを威圧する。
イメージは…目の前に立ちはだかる東京スカイツリーだ。地味に怖いやつ。
「なるほど、言うだけはあるようですね…」
効いたようだ。一応こいつのレベルを見ておこう。
名前:ブルウニ
称号:茶頭
レベル:145
『茶頭』か。昨日の『赤頭』と関係してるとみて間違いないか。
「マイラ、もし俺がピンチになったら頼む。あと、そこのメイドさんの手当てを。」
「んう、わかった。」
さて、後ろにはマイラがいる。
この『茶頭』には俺の実験台になって貰おう。
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この男との戦いの中、すでにブルウニは諦めかけていた。
……こやつ、強い。
一体なぜ突然部屋から出てきたやつがこんなにも強いのか。
戦いの前に感じた恐怖もそうだ。
自分はボスほどの化け物ではなくても、ほとんどの相手ならば遅れをとることはまずない。
騎士であった若いころの多くの実戦経験と能力値、年齢がいわせる精神の強さがそれを可能にする。
いつも私は長年愛用のこの大樹槍で攻めに攻めながら、得意な魔術結界を張り守る戦法をとる。これだけで数多の強敵も打ち倒してきた。
今回も同じだ。この男に感じた恐怖から強者と想定し、本気で戦うことを決めた。
事実、こいつは強かった。
だが想定以上だ。
何度槍を振るおうがなぜか一回も当たらない。
それどころか、やつの放つ魔法は私の結界を容易く突き抜ける。避けられないわけではないが、少しずつダメージをおってしまう。
狭い場所で槍を振るいにくいのもあるが、それは相手も同じだろう。やつが城を壊さないよう撃っているのがよくわかる。
後ろの少女も気になる所だ。さっきからあくびばかりしているが、この少女からも何かを感じる。
勝てない。既に状況は不利。
そう決断し、ブルウニは逃走の策を考えるのであった……
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あっっぶねえええ!!!
このおじいちゃんつえええ!!!
戦いは茶頭の突きで始まった。
〖主人公補正〗の〈超思考回転〉を発動していたのですぐ気付けたが、それでもものすごい速さで槍が迫って来たのだ。
頭の中で『負傷回避補正が発動』と出ているので、そのおかげもあってか上手く避けられたのだが、反撃しようとしたとき気付いてしまった。
主人公なのに攻撃手段ねえじゃん!
いやあるよ。超威力の低位魔法がね!
そんなもの城内で使えば侵入者+大火事ですやん!
だが、使うしかない。
なるべく〈思考反映〉でちょうどいいくらいの魔法をイメージする。今回は地と火でいく。たまに水魔法で火を消すか。
低位地魔法"土球"で意表を突き、小さい"炎球"でダメージを負わせるようにしよう。
一つ切り札があるが、それは温存だ。
「"土球"!!」
槍を避けながら発射する。
「ック!」
茶頭は槍で返そうとするも、思ったより硬いらしく回避をした。
「今だ、"炎球"!!」
避けた先に着弾させる。
着弾した炎球は小さい爆発を起こす…も、茶頭は咄嗟に回避したようだ。
しかも、どうやら結界を張ってあるらしく爆風が茶頭に届いていない。
だが、服が少し燃えている。完全には守れなかったようだ。
「甘い!"巨木連撃突"っ!!!」
そのまま俺に向かって凄まじい突きを繰り出してきた。
これはヤバい!と咄嗟にダメ元で避けたら全て避けられた。負傷回避補正すごい。
そして、これを何度も繰り返す。
土球を撃っては燃やし、時には水をかけ…
そうして数分やりあった。
変化があったのは向こうの動きだ。
俺の魔法発動の隙を狙い、連撃の体制になった。俺は咄嗟に回避しようと構える………も、茶頭は突きを繰り出さなかった。
前足をひねるようにし、ダンッと強く床を蹴り、俺から距離をぐんぐんとる。
逃げる気か。
ダメージは相手のほうが負っていた…というか俺無傷じゃん。まあ引き返すわな。
しかし俺は逃がすつもりはない。
目的は少し想像がつくが、良いことではないだろう。それに、ここからジョイのところに行かれても困る。どうやらかなりピンチのようだし。
「よし、試してみるか。」
俺が試してみたいことがあるし、ちょうどいい。
相手が背を向けた時有効だろう。
「高位空間魔法"視認転移"」
探索魔法と一緒に覚えていた空間魔法を使う。
そして俺は逃げる茶頭の目の前に転移し、
顔面に"水球"を叩きつけた。




