第十二話《不穏な気配》
「うおぉ、おぉ…」
英雄威風を発動した直後、男たちは身震いをし地面に這いつくばる。
〖主人公補正〗の〈英雄威風〉は、本来他人からの俺の印象を最高にし、俺に英雄の貫禄を持たせるというものだ。
しかし、他人からの印象には幅があり、尊敬や畏怖まである。
逆に言えば少しなら他人の印象を自由に操作できるということ。
そこを突き、俺は〈能力管理〉の『能力改変』で、〈英雄威風〉を大量の魔力を代償に周囲の者からの俺の印象を操作できるものにした。
ただ、改変であって進化ではないので、便利機能は付いたが周囲の印象を変える時いちいち魔力を消費するようになる。俺の心持ちには魔力を使わないそうだし、それくらいの魔力消費は痛くもないが。
マイラは「その能力もともと不便らしいし、そのままだとどーせ使えないからいいんじゃない?」と言っていたので、即行改変した。
今回イメージしたのは「一万メートル上空から落下の恐怖」だ。
それにより、この男たちからの俺の印象はそれと同じ程度のものになる。
マイラに対象を指定しろと言われていたので、目の前のこいつらだけ威圧するように調節する。
「ぐうあああぁいぁ!!!!」
「ギャアアアアア!!!」
「グオウオイオオオ!!!」
大男の後ろのやつらが様々な奇声を一瞬発してからぶっ倒れ気絶した。まるで○王色の○気だな。
最後に残っているこの大男も、立つことができないようだ。
「さてここからどうするか…」
殺すのは簡単だが、俺の魔法では店を壊しそうだな。
「ねえにい、あのさ。後ろの人たちが苦しそうだよ。」
マイラに言われ見てみると、店内の人たちも青ざめた顔をしブルブルと震えている。
「あれ?対象はそいつらにしたはずだけど。」
「多分制御が難しいんじゃない?こうして使うの初めてだし。」
「本当だ。完全に絞ろうとするとちょっと疲れる。練習したほうがいいかな。」
そう言い、印象操作をやめる。英雄威風自体は使用中なので俺がチキンになることもない。
「ハァ、ハァ、て、テメエは一体なんな、んだ……俺は『赤頭』のベダだぞ…」
這いつくばったまま大男が聞いてくる。
そういやこいつ強いのか?レベルだけ見とくか。
・名前:ベダ
・称号:赤頭 組織の暴れ馬
・レベル:155
ツエーじゃん。
ジョイが160くらいだったから155のこいつも弱いはずがない。組織とか気になることがあるが。
動けなさそうだし、一応縄で縛っておこう。
縄はただの縄ではなく、魔力を吸いとり捕まえた者に魔法を使えなくする魔道具だ。ジョイから貰ったのでアイテムボックスに入れていた。
他の気絶したやつらも普通の縄でちゃんと縛っておく。
「これでよしと…店長!こいつらどうします?」
呆気にとられた顔をしている店長に話しかける。
「へ?あ、あぁ。手柄は…何が起きたか分かりませんが、その、どうぞ。」
「手柄とかではなく、どこにやればいいですかね。」
「えっと、盗賊や強盗の大体は国の騎士の方などに身柄を渡します。ただ、夜だと外にいる騎士さんはあまりいないので大変です。」
そうか。それなら心当たりがあるし大丈夫だ
「わかった。ありがとう。今度また食べにくるよ。」
マイラが俺の知らない魔法で男たちをまとめて、浮かしている。押すと簡単に運べるようだ。
「ありがとうございました!ま、またのご来店をお待ちしております!」
店長の言葉を聞いてから、俺とマイラは店を出た。
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王城に着いた。
警備の門番に顔を覚えられたらしく、軽く会釈をしあうだけで通してくれた。
マイラが持っていた男たちは、アイテムボックスに入れた。というか入った。いままで動物を入れたことがなかったので驚きだ
ちなみに中は亜空間なので、時がとまる。生物も扱う商人が欲しがるわけである。
「ジョイはどこにいるかな…」
ジョイは魔術師長なので、かなり夜遅くまで警護をしている。ちなみに今は夜の十一時位だ。
「わたしの探索魔法で探す?」
「その手があったか!お願いするよ。」
マイラが目をつぶる。そういや探索魔法を使うのは空魔法を使う時と似ているとか言ってたな。四大元素魔法より空
空間魔法はイメージが難しいから難易度が高いとジョイも言っていた。
「にい、いたよ。結構近くのところ!」
見つけたようだ。俺も疲れて眠いし、早く用事を済ませて寝よう。
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ジョイは王の寝室の間の扉前で、なにやら考えて事をしながら突っ立っていた。
「おーい、ジョイ!」
「おお、サカタ様!お帰りなさいませ。」
「何かあったのか?」
「いえ、別段それほどのことではありませんよ。それより、いかがなさいました?」
「街で強盗に出くわしてさ、捕まえたんだけど…」
「な!それは本当ですか!!」
ジョイが驚いたように聞いてくる。
「ああ。何でも『赤頭』とかいう称号持ちのやつ。仲間ごと捕まえてアイテムボックスに入れたけど。」
「ここで今すぐ確認はできますか?」
「いいよ。ちょっと待って…」
アイテムボックスから大男たちを取り出す。
ボックス内は時間が止まるので、意識があった大男は突然景色が変わり動揺している。他の男たちは気絶中だ。
「確かにこいつは『赤頭』ですね。指名手配中の組織の幹部です。」
「組織ってどういう…」
「『剛断会』というかなり大きな組織です。様々な国で強盗や殺人、破壊を繰り返すので各国が頭を悩ませているのです。
この『赤頭』は幹部の中でも強い部類なのですが、大丈夫でしたか?」
「怪我とかもないし、大丈夫だけど…もしかしてジョイが悩んでるのってこいつら?」
「はい。最近このポラリス王国で頻繁に出没するのです。兵士や冒険者の方などにも討伐を依頼しているのですが、中々に強敵でしてね。」
悪の組織か。『組織の暴れ馬』とかいう称号もあったし。
「こいつもレベルが155だったしね。強い部類ってことはもっと上もいるんだろ?」
「はい…なんでも組織のボスは化け物のように強いと言われています。赤頭を倒したサカタ様も十分お強いでしょう。どうやって倒したのですか?」
「威圧した。」
「そうですか…」
なんか微妙な空気になった。
「あ、わたしは何も手を出さなかったよ!だからにいのレベルも上がったんじゃない?」
マイラが空気を戻してくれた。
たしかに、相手を倒したりするとレベルが上がるみたいだし、俺も強くなったのかな。
見てみるか。
「じゃあ俺は部屋に戻るよ。ステータスボードは置いてきたし。あとこいつらってジョイに引き渡しでいいのか?」
「はい、大丈夫です。こやつらは指名手配者ですので、報酬もでますよ。それでは、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
手を振ってジョイと別れる。ジョイが兵士を呼び『赤頭』らを回収させる。男たちは牢屋にポイみたいだ。
「にい、今日はお手柄だね!」
「そうだな。報酬も出るみたいだし、やったぜ。」
マイラと話しながら部屋に戻った。
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「確かここに……あった。」
部屋でカバンの中に入れたままだったステータスボードを取り出す。今後これはアイテムボックスに入れておこうかな。いやカードにするか。
「それでは早速…」
ボードの中心のくぼみに触れ、俺のステータスを確認する。
名前:坂谷賢刃 サカタ ケンヤ
・年齢:15歳
・称号:無し
・種族:人族
・クラス:無し
・レベル:95
・能力値:体力1500/1500
筋力1400
俊敏2700
物理防御1800
魔法防御1750
魔力量9000000
技術300000
・魔法:攻性魔法…水属性超位 火属性低位
風属性低位 地属性低位
空魔法高位
探索魔法
・スキル:主人公補正(負傷回避補正❲特大❳
死亡回避補正❲極大❳
能力獲得補正❲極大❳
幸運補正❲特大❳
思考反映
超思考回転
超鑑定
アイテムボックス
能力管理
英雄威風改)
異世界人(言語理解補正❲特大❳
超念話
魔力操作)
誰のステータスだろう。
いや俺のだ。こうもレベルアップするとは思わねえよ。魔力量と技術も上がってるし、空魔法と探索魔法も覚えてるし…
「あーもう疲れた!寝る寝る!」
考えるのは明日にしよう。もう十二時だ。この世界に来る前なら『まだまだこれからダゼェ』って時間だが今日は疲れた。マイラも寝てるし、さっさと寝よう。
照明を消し、眠りに入る。
しかし俺が眠れた時間は二時間もないのであった…
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「フヒュヒュ…『赤頭』がやられましたか…」
真っ暗な倉庫の中、薄気味悪く笑う男が一人、死体の上で探索魔法を切る。
男の名を知るものはいない。仲間であっても知ってしまった者は容赦なく殺されるのだ。
「赤頭はまだ王城の中にいる…取り返すなら今ですかねぇ…」
男は知っている。
普通国の王が住まう城や宮殿には国で最高の警備がなされている。
しかしポラリス王国は違った。
牢獄の警備の方が城の何倍もの戦力が集められる、いや集めなければならないのだ。
城にも魔術師長のような強者がいるが、少数。
王の暗殺となると骨の折れる仕事になるが、捕まった者を回収するならば容易いことだ。
一時『赤頭』がどこにも見当たらなくなったのは焦ったが、今は城内にいるとわかっている。
「フヒュ…城攻めなんて何年ぶりですかね…」
過去に城を攻略したことは何度かある。
そのときは自分と同じ、組織の幹部四人と一緒に攻めたが楽勝だった。
「今回も念のため三人くらいで行きますかね…」
男は注意深い。ポラリス王城の戦力は小さいとはいえ、『暴れ馬』を沈める者がいると考えたほうが良い。
攻めるのは今夜。
グチャリ、という足音を響かせながら外に出る。
「近くにいるのは『青』と『茶』ですか…まあよい。さっさと集めてしまいましょう。」
男は行動を開始した。




