第十一話《外食とトラブル》
城から出て街に入った。
もう夜だというのに活気が溢れ、笑い声や怒号が飛び交っている。
そんな街中を俺とマイラは──道の端で、目立たぬようにそそくさと歩いている。
何故か?決まっている。問題を起こしたくないのだ。
英雄威風をオフにしたため、あまり他人と関わりたくない。
「にい、さっき自分が慣れるとか言ってなかった?」
マイラにジト目で見てくる。
「それは…店に着いたらで。」
誤魔化しておこう。
それにしても、食事ができそうな店が見当たらない。街を適当に歩いてたらそのうちどこかしらあるだろうと踏んだがハズレかもしれない。
そう思い始めたが、直後に良さげな店を見つけた。
良いにおいも漂っているし、たくさんの人が出入りしている。
「マイラ、ここにしよう。」
「うん。わたし、天界出たの久しぶりだからな~。ちょっと楽しみ!」
ああ、天界には食べ物がないとか言ってたな。食事をとらなくても生命力が…みたいな感じか。
「よし、入るぞ。」
引き戸に手をかけドアを開けた。
「いらっしゃいやせ~!!二名さまご案内!」
当たった。
若いお兄さんが案内のようだ。てか案内がいるのか。
「席はテーブルとカウンターどちらもありますが、いかがなさいますか?」
「あ、その、ははい。えっと、カウンテ…」
クッ、噛んだ。英雄威風がないとダメダメだな。
「カウンターでお願いします!」
マイラがフォローしてくれた。ありがたい。
「お、妹さんですか~?いいですね~。それでは、ご案内します!」
なんとかなったようだ。
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「ふう…」
水を飲んで、一息つく。
運よく端のほうの席だったので、他の客も少ない。
それにしてもダメだな。案内されてから注文をしたのだが、店員に対し俺は「あ、えっと」とか「その、はい」とか、とにかくヘタレのチキンと化していた。
結局マイラがいろいろと注文を済ませてくれた。
…この子には助けられっぱなしな気がする。
見た目は数歳年下に見えるが、神族は寿命が無いに等しいらしい。マイラは「人間でいうところの十四歳」と言っていた。
ちなみにこの世界では十四歳から大人ということになるので、俺もここでは大人だ。酒とか飲んでも大丈夫だろうか。
「お待たせしやした~。店自慢のクルシュでーす。冷めないうちにどうぞ~」
「あ、どうも」
料理が運ばれてきた。さっきのお兄さんである。
クルシュは、キノスラの名物料理で、グラタンに似ているが葉野菜が多い。
「うわぁ、いただきます!」
マイラが待ってました!と言わんばかりにクルシュを頬張る。
「ん、おいしい!味のある食事は最高だね!」
俺も食べよう。
箸みたいなのもあるようだが、ここはフォークでいく。
…うまい。いかにもグラタンです!みたいな味なのに、シャクシャクとした歯ごたえが面白い。新感覚。
しかし、この葉野菜は見たことないな。赤紫と青が混ざったような色だ。異世界野菜だろうか。
最近病食っぽいものばかりだったので、味の濃いクルシュはあっという間に食べ終わった。ボリュームも調度いい。
にしても、今回は俺ではなくマイラが人と話してくれた。今後は俺もちゃんと意志疎通できるよう頑張ろう。地道な努力をするのだ。
「マイラ、おかわりとかいる?」
「今日はこれで満足したからいいや。」
それじゃあ、会計か。
お金はジョイがくれたので持っているが、会計か…。
いつも店員と微妙な空気を流してしまう俺にとって苦手なことの一つだ。
なのでネットスーパーを使っていたが、今はそんなこと関係ない。
あのお兄さん店員と話し会計を済ませる。それだけだ。謎にビビる必要はない。
「す、すみません、会計を」
「もうよろしいのですね、わかりました!ええ…二つ合わせて銅貨八枚のところ、サービスで銅貨六枚です!」
お金は銅貨、銀貨、金貨、大金貨とあり、それぞれ一枚で大体100円、1000円、10000円、100000円くらいの価値があるみたいだ。
ちなみに、貨幣は国によって違うので、換金はそういう商売の人にやってもらうらしい。
「はい、きっちりろきゅまい…です。」
俺と一緒に転移してきた俺の財布から銅貨を取り出す。調度いいので入れた。
日本円が入っていたが、それらはアイテムボックスに入れた。他にカバンに入っていたものも同様だ。
「まいど!今後もひいきに!」
気前のいい兄ちゃんで良かった。ちょっとかんだが、会計は俺でもできた。
「それじゃ、帰るか。」
マイラにそう言い、外に出ようとドアに手を掛けた瞬間だった。
勢いよくドアが吹っ飛んできた。
俺とマイラは咄嗟によけたが、店内はざわついている。
何事と思い顔を上げ見る。
「オラァ!怪我したくなかったらさっさとカネを持ってこい!!!」
大男が叫んでいる。その後ろには複数の覆面たち。
強盗だ。主人公イベントか?
「しょ、少々お待ちください!お客様に手出しなさらぬよう…」
「なんだと?俺様たちが客じゃないと。そうかそうか。…死ねぁ!!!」
大男がこの店の店長に向かってナイフを投擲する。
しかし、ナイフが店長に刺さることはなかった。
マイラだ。物理結界を張り守ったようだ。
そして大男の前へ出る。
「あ?なんだてめえ…」
「この店の料理はこの人が作ってるのよ。死んじゃったらおいしい料理が食べられないじゃない。」
そんな理由か。
ちなみに俺は、英雄威風がオフなため、ビビって見ることしかできていない。
(にい、にい!)
うお!…ってなんだ。ビックリした。
俺の超念話を通して頭に直接マイラが話しているようだ。
(なんだ?)
(なんかめんどくさいし、にいの英雄威風で追っ払ってよ!恐怖をイメージして!)
(それって、他の人にも影響するんじゃないか?)
(対象をあいつらにしたら大丈夫だと思う。にいの技術ならイケるよ!)
(ええ……やだなぁ。神なんだからそれくらいできるんじゃないか? )
(そりゃ…でもでも、にいのスキルの練習だと思って!)
(わかったよ。しかたないな。)
そう考え、俺は英雄威風をオンにして、大男の前に立ち塞がるのであった。




