第九話《神と英雄》
──神族。
それはこの世界において最古の種族にして、世界の秩序を保つ者。
彼らは滅多に姿を現さず、最後に人前へ顕現したのは今より数百年も昔のことである。
一つの昔話がある。
昔々、あるところに英雄と呼ばれる若き人族がいた。
英雄は少女と巨大な竜を従え、ある時は疫病から、またある時は悪の魔王から人々を守った。
突然現れては困っている人々を助ける彼に、多くの者が感謝していた。国も彼に感謝の念を絶やさなかった。
しかし彼はある過ちを犯してしまう。
天界に住まう神族に牙を剥いたのだ。
理由は解っていない。
輪廻を司る神様だった。
英雄は神を殺した。
神殺しである。
世界の秩序は乱れ“災厄”が訪れた。
多くの生命が命を落とした。
英雄は姿を見せなくなった。
災厄は何年も続いた。
大陸が死の世界と化すほどの大災厄。
少女と竜は立ち上がり、ついに災厄を止めた。
災厄が収まると同時に、少女と竜も人々の前には現れなくなってしまう。
相討ちとなったか、何処かに今も存在しているのか、英雄は何故神に牙を剥き消えたのか…
未だ真相は解っていない───
►►►
神族?この子が?
俺に神の妹なんているはずない。
「というかマイラ…って有名なのか?」
こういう時は先生に聞くのが一番だ。
「一般の方で知っている人は少ないですが…歴史に残っている神族の名ですね。」
「うむ…まさか英雄の右腕だとは…。
本物かどうかは─今さら愚問であるな。」
王は鑑定で確信したようだ。
そうだ、俺には超鑑定があるじゃないか。
失礼かもしれないが、マイラのステータスを見てみよう。
名前:マイラ
・年齢:???歳
・称号:英雄の右腕 虹色の顔
・種族:神族
・クラス:無し
・レベル:???
・能力値:体力???/???
筋力???
俊敏???
物理防御???
魔法防御???
魔力量170000
技術???
・魔法:攻性魔法…水属性神位 火属性神位
風属性神位 地属性神位
その他
他九種魔法►
・スキル:神之威光
到達点
世界管理
能力値に差がありすぎるのか、俺には鑑定というか解析できないことが多い。
ただ、神なんだなあということは伝わった。
というか魔力量は俺の方が上なのか。神より上とはこれいかに。
「……ってよく見たらにいじゃない!」
いまさらかよ。(心の中で)ずっと言ってたんだけどな。
「えっと、なんでマイラは俺のことを兄って思ったんだ?」
「それは……」
マイラが話した内容はこうだ。
五百年前、にいと呼び慕っていた人が突然天界から姿を消した。
彼はあるスキルを持っていたため存在が大きく、自分の世界管理を使えばどこにいるかはすぐにわかる。
しかし、彼の気配は忽然と消えていて、居場所が全く分からなくなった。
世界中を探し回ったが結局見つけられず、しぶしぶ天界に戻ったという。
さらに、天界に戻るなり突然自分も拘束され、長い眠りについていた。
そして最近、そのスキルの気配が突然現れ、それと同時に拘束が解除、とりあえず気配を頼りに来たらここにたどり着いた、とのことだ。
そのスキルの名は“主人公補正”。俺の持つスキルである。
主人公補正は世界に一人しか持つことを許されない。ということは、その主人公補正を持っていたという彼はもういないということになる。
マイラもその考えに至ったようで、悲しそうな顔をしている。
にいと呼ぶくらいの相手だ。そりゃいないなんて分かったら悲しいだろう。
……俺の兄も、俺が小学生の頃に突然失踪した。とても優しい兄で、いつも一緒に遊んでいたのを覚えている。
そこからだったか。悲しみから引きこもりにはなり、中学から学校に行き始めても他人と上手く話せず、距離を置いていた。一部仲良くしてくれる人もいたにはいたが…。
しかしマイラは俺の思いとは裏腹に、希望に満ちた目を俺に向けてきた。
「あなた……にいと似てるし、主人公補正も英雄の資格も持ってる。だから…その、」
急にもじりだした。感情の起伏が大きい子だな。
「それで何が言いたい?」
「付いてっちゃダメ?」
「何でや!!!」
大声で突っ込んだ。これまた急だな。
「だって、にいがいないと天界にいても暇だし、というか何か皆怒ってたし……世界は巡ったけど詳しくは見てないし…。」
美少女が付いてくることに異論はない。
しかし俺にはいく宛なんてない。ジョイの世話になりっぱなしという訳にもいかないしな。
ただ予定はあるけど。
「俺は無職で帰る家もないんだけど…」
と言っても、そのほうが面白いと言い、聞く耳を持たない。
「わかった。そんな面白くならないと思うけど…別に良いよ。」
考えたら、マイラは強いしいてくれたら安心である。女の子に頼るのも考えものだが。
それに、俺の〖主人公補正〗についてもいろいろと聞きたいこともある。
そんなこんなで結局、俺にマイラが付いてくることとなった。




