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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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96話  相原の策略(1)

 

 相原を後部座席に乗せてバイクを運転している僕は、国道の赤信号で待っている間に、次の道順を聞いていた。


「で、次は?」


「片瀬さん、次の信号を左で、そんでもって2つ目の路地をまた左に曲がった所に緑色の屋根が見えるので、そこで停まって下さい」

 

 相原が言ってた通りに走行すると、教習所から出発して大体15分くらいで目的地に到着した。


 ヘルメットを取って店の前を見てみると、ビストロ、アンリと言う名前の看板が目に入った。西洋風をイメージしているのか、何ともアンティークな入り口で、その前には、小さい黒板に白のチョークで今日のおすすめメニューが書かれている。

 

 相原が先に店のドアを開けると、「カラン、カラン」と、音の低い鈴の音が鳴り響き、僕はその後ろを着いて行く様に入って行った。

 

 店の中には、遠すぎず、近すぎずといった何とも絶妙なバランスで4、5人程度座れるテーブルが6卓と、後、店の所々に観葉植物が置かれていた。確かに相原が言うようにこじんまりとして、何だか癒されそうな空間だ。


 まだ、他のお客さんは居ないんだ。


「いらっしゃい、さつきちゃん。もうそろそろ来る頃だろうと思って準備出来てるわよ」


 40代後半か50代前半ぐらいの小柄な女性店員が、僕等の側まで近付いて来て、親しみやすい笑顔を浮かべながら声を掛けてきた。


 相原は、いつもの感じと違いすました顔で、右手の手のひらを上にして、その女性の方へ向けてこう言った。


「あの~、片瀬さん。こちら私の母です」


 へ~、お母さんか~。えっ!?


 突然の相原の身内の登場で驚いた僕は、慌てて相原のお母さんに自己紹介をした。


「は、初めまして、片瀬と言います」


「いつも娘がお世話になってるそうで」


「そんな、こちらこそ。いつも相原さんには驚かされてばっかりで」と、訳の分からない事を言ってしまった。


 すると今度は、店の奥から白のエプロンをかけ、体格のガッチリとした男性が、厨房からにこやかな顔を覗かせて話し掛けてきた。


「いらっしゃい、待ってたよ」


 ま、まさか、もしかして。と思いつつ、僕はその人にも会釈をした。


 今度はその男性に手のひらを向けた相原は、「私の父です」と答えた。


 やっぱり。そうならそうと来る前に言えよ。両親のお店だって。


 口には出さず目で相原に訴えかけたのだけれど、でも当の本人はと言うと、ニッと笑みを浮かべて僕から目を反らした。


 



 

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