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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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88話  11月7日(7)

車が見えなくなったので、家に戻ろうとした遥は、片瀬の帰り際の素振りを思い出していた。


 何だかいつもの片瀬さんと、どことなく違ってた様な感じがするんだけど・・・。気のせいかな?


 リビングに戻ってきた遥は、スマホを使ってお母さんに話し掛けた。


『今日はありがとう、お母さん』


「いいえ、たいしたお構いも出来ずどういたしまして」と、キッチンで後片付けをしながらお母さんが答えた。


『せっかく仕事が休みだったのに、疲れたでしょ?』


「こんな事全然。お父さんがいてた時の方が、味にうるさくて大変だったわよ」と、苦笑いしながら答えた。


「それより、片瀬さんのこと好きなんでしょ?」


『うん』と、遥は照れた顔をして小さく頷いた。


「これを気に、ちょっとは料理のレパートリーを増やして、作れるようにしとかないとね~、遥」


遥は、帰り際の片瀬の素振りが気になって、自分が居なかった時に何かあったのか、お母さんに聞いてみた。


『ねぇ、お母さん。さっき私が2階で絵里とメールしている間、片瀬さんと何を話ししてたの?』


「そうね~、色々」


『色々って?』


「片瀬さんが何で今の仕事に就いたのかとか」


『ふ~ん、その他は?』


「遥は嫌かもしれないけど、お父さんの話しとか」


『そう、片瀬さんに話ししたんだ』


「いずれ分かる事だし。お母さんの口から言わない方が良かった?」


『うううん。お母さんは気にしないで』

 

 洗い物が終わってタオルで手を拭きながら、お母さんは遥に真面目な話しをし始めた。


「ちょうど良い機会だから、遥にあの時の事故の事について全部話しとくわ」

 

 そう言ってお母さんは、遥が座っているソファの横にやって来て腰を下ろした。

 

 遥は、お母さんが次の言葉を発するのを黙って待っていた。


「あの時の事故でお父さん、相手の方に怪我を負わせてしまったって遥には言ってたんだけど、実は相手の方2人を死亡させてしまったのが本当の話しなの。遥がもう少し大人になって、この話しを冷静に受け止めてくれるまでは、亡くなった事について黙っておこうって心の中でそう決めていたの。それでも遥には、肩身の狭い思いをさせてしまってわよね。色々心配を掛けさせたくなかったから今日まで言わなかったけど・・・」


『お母さん』と、遥は声を発する事無く、呟くように口だけを動かした。


「相手の方の命日が、7月5日でね。でも私がその日にお墓参りに行って遺族の方達とばったり会うことで感情を逆なでするのもなんだから、毎年7月7日に亡くなられた方のお墓参りに行ってるの。と言うのもね、相手の方は4人家族で、その内のお父さんと長女の娘さんが亡くなったんだけど、その娘さんの誕生日が7月7日でね。遥の誕生日と一緒ね。確か、遥より6歳年上だったわ。それで、毎年7月7日にお墓参りに行ってるの」


『そうなんだ』


「ごめんね、今まで内緒にしていて」


『うううん。だって私の為にしてくれた事だもん。でもね、お母さん。これからは私にも相談してね。私はまだ社会人にもなっていないし、話しを聞いても、どうする事も出来ない事の方が多いかもしれないけど、でも親子なんだから。これからはもっともっと、お母さんを困らせる事ばかりすると思うけど、2人してやっていこうね、お母さん』


「バカね。子供に心配されるほど、まだまだそんなに歳は取っていないわよ」

 

お母さんは立ち上がって、遥の頭にそっと手を置いた。


 薄っすらと目に涙を浮かばせたお母さんは、その姿を遥に見せまいと思い、背を向けてリビングを後にした。



 







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