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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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86話  11月7日(5)

 

 家に戻ってみると、遥のお母さんは作った料理をテーブルの上に並べている最中だった。


 遥はスマホに文字を入力して、それをお母さんに見せた。


『あれ!?もう出来たの、お母さん』


「そうよ~。後は、あなた達が椅子に座ってくれたらオッケーなんだけどねぇ」

 

 僕と遥は、お互い顔を見合わせて、苦笑いしながら椅子に座った。

 いつも1人で食事をしている僕にとって、何気ない会話をしながら3人で食べる晩ご飯は久し振りで、何ともほのぼのとしたひと時を与えてくれた。


「ご馳走様でした。やっぱり1人で食事をするより、何人かで話しながら食べた方が美味しいですね」


「そう言ってくれたら嬉しいわぁ。遥なんてそんなことひと言も言ってくれないもんね~」


『はいはい、美味しかったわよ、お母さん』


「あらそう。じゃあ今度、たまには遥もご飯作ってよね」


『は~い。あっ、片瀬さん、食後にコーヒーでも飲みます?』


「うん、頂きます」


『は~い』と口だけを動かして、遥はキッチンの方へ歩いて行った。すると暫くして、お母さんは、思い出した様に遥に話し掛けた。


「あっ、そうそう、そう言えば遥」


『うん?』と、遥は首を傾げた。


「さっき、あなた達が外に行っている間、絵里ちゃんから電話があったわよ。スマホにメールしても繋がらないからって」


『もう~、それ先に言ってよ、お母さん』

 遥は、僕とお母さんの所にコーヒーを置いてから、2階にある自分の部屋へ急いで上がって行った。


「ごめんなさいね、がさつな子で」


「いえ、そんな、しっかりしていますよ」


「そう?所で仕事は楽しい?」


「そうですね~。確かに怖い事の方が多いですけど、上手くなっていく過程を見ると楽しいですよ」

 僕は印象良くしようと、真面目な回答をした。


「確かにそうね。努力した結果が出ると」


「そうですね」と、僕は話しを合わせながら、目の前にあるコーヒーを口にした。


「片瀬さんは、どうしてこの仕事をしようと思ったの?」

 

 教習中、時々される質問だけど、いつもは適当にはぐらかすんだけどなぁ。


「はい・・・3年前に、大切な人を交通事故で、それで・・・」

 

 この話しをすると長くなると思い、お茶を濁すような感じで曖昧な答え方をした。


「そう、3年前に・・・事故でも病気でも何でもそうかもしれないけど、大事な人がこの世から突然いなくなるのって、こんな辛い事はないわね」

 

 お母さんは、僕の話しに頷きながら答えてくれた。


「実はあの子の父も、3年前に結果的には車を運転中に亡くなってね」

 

テーブルに置いてあるコーヒーカップを見つめて、遠くの過去の出来事を思い出しながら、僕に語り掛けてくれた。


 そう言えば、遥は自分の過去の話しって余りしないよなぁ。まぁ、僕も聞かないけど。と思いつつも、僕は遥のお母さんの言葉にふと気になって尋ね返した。


「結果的って?」












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