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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
82/136

82話  11月7日(1)

 11月7日、僕が生まれた日だ。

 

 この3年は、そんな事を気にする事もなかったが、遥の家でご馳走して頂けるのは嬉しいが、さすがにこの歳になると人の家に行くのが億劫になる。ましてや相手の親がいる家には・・・。

 

 ジーパンでは体裁が悪いと思い、ベージュの綿パンにカジュアルの白の長袖のシャツを着て、鏡の前に立って今日の服装や髪形をチェックした。

 

 これで良しと。じゃあ次は、どこかケーキ屋さんにでも寄ってデザートでも買ってこようかな。晩ご飯を頂くんだから手ぶらじゃなぁ。

 そう思い、腕を組んで静かに目を閉じてみると、駅の風景がおぼろげに頭の中で浮かんできた。

 

 あ~そう言えば、亜季と待ち合わせをした駅の近くにケーキ屋さんがあったな。良し、そこに行こう。


 僕は家を出て、車に乗り込み目的地を目指した。


 駅前でお茶菓子を購入した僕は、左腕にしていた腕時計をチラッと見てみた。

 

 さぁ~てと、どうしようかなぁ。まだ遥と約束していた時間には、ちょっと早い気もするけど。シートを倒し、ぎゅ~と背伸びをした。まぁ良いか。1度メールしてみよう。


 スマホを鞄から取り出し、遥への要件を送信した。


「用事が済んだから、今から家に行っても大丈夫?」

 すると少しして直ぐに、遥からの返事が返ってきた。


『はい、お待ちしてます。気を付けて来て下さいね ♪( ´▽`)』


 はい、オッケー頂きました~。倒していたシートを元に戻し、目的地を目指し停めていた駐車場を後にした。

 

 遥とメールのやり取りをしてから、かれこれ30分。

 

 え~と確か~、この辺りのはずだったんだけどなぁ。


 いつも遥を送る時に通る道と違って、近道をしたつもりが一方通行や、歩行者自転車専用の標識に引っ掛かってしまいかえって袋小路に入り込んでしまった。


 きょろきょろと辺りの町並みを見渡しながら、遥の家を探していた。探していた言うと聞こえは良いが、有体に言うと道に迷ったのだ。そう、さっきから似たような道をグルグル、グルグルと走っている。


「どこか見知らぬ場所に行く時には、前もって地図で下調べをしておきなさい。そうする事で・・・」と学科で教習生の前で偉そうに喋っているのに、当の本人が道に迷ってしまうとは何とも情けない。今度、カーナビを着けよう。しかし、こうなってしまったんだから仕方がない。この際素直に、遥に聞こう。

 

 観念した僕は、他の交通の妨げにならない所に車を停め、もう1度、後の状況を確かめようとルームミラーに目を向けた。すると、40代半ばか50代前半ぐらいの1人の女性が両手に荷物を持って歩いて来る姿が見てとれた。

 

 そうだ。あの人に聞いてみよう。

 

 僕は車から降りて、その人が近付いてきた時に、申し訳なさそうな感じでその人に声を掛けてみた。


「あの~、すみません。ちょっと道を尋ねたいんですけど、この辺りに高科さんって言う方のお住まいをご存じありませんか?」


「あ~、それだったらこの道を真っ直ぐに行って、突き辺りを左に曲がって坂を上って行くとやがて左手側にその家がありますよ」と、その女性は穏やかな口調で教えてくれた。


 僕は相手の女性の顔をあまりハッキリ見ずに、彼女の説明と指差す方を見ていた。


「ありがとうございます。助かりました」

 

 その女性に軽く頭を下げてから、教えられた道に沿って車を走らせた。

 

 え~と、あっ、ここだここだ。やっと着いた。

 

 車から降りた僕は、インターホンの前に立ち、少し深呼吸してからボタンを押した。


「あ、あの~、すみません。片瀬と言いますが、は、遥さんは、おられるでしょうか?」

 

 遥は声が出ない訳だから、てっきりお母さんが対応して来るのだとばかり思っていて、緊張して声がどもってしまった。

 

 最悪の出だしだ。

 

 涼しい筈の夕暮れ時に、1人冷や汗をかいている僕であった。

 




 

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