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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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80話  2人の足あと


 サービスエリアを出てから10分程で目的地であるアウトレットに到着。平日にしては、思ってた以上に買い物客で賑わっている。女の子だけに嬉しいのか、お目当てのショップの前に来ると、『あっ、あそこ、あそこ』と言いたげに、まるで散歩をしている犬がご主人様をぐいぐい引っ張って行くみたいに、僕の腕も彼女に引っ張られて行った。


 服屋では、遥が幾つかコーディネートをしてくれたのを、その中から僕が選び、早速、フィティングルームで購入した服に着替えた。しかし、僕だけが新しい服ってのも何だから、遥にも、欲しい服を選んでもらい、2人して新しい服に着替え、思い出作りに最後の目的地である海へと目指す事にした。


 暫くして海水浴場に着いた僕等は、特に何をする訳でもなく裸足になって浜辺を散歩する事にした。

 太陽の熱で熱くなった砂地を、「アツ、アツ」と言いながら2人して早歩きで抜け出し、熱かった足を海水で冷やした。

 

 ジーンズの裾を膝まで上げた遥は、足首の辺りまで海に入り、しゃがみこんで、何かを拾って僕に見せた。


「白色の貝殻だね。巻貝かな?」


 彼女は、貝殻を耳に当てながら、静かに目を閉じた。その仕草に見とれて、僕は持っていたカメラでシャッターを切った。


 彼女も持っていたスマホで文字を入力する。


『子供の頃、貝殻から海の音が聞こえるよってお父さんから聞いた事あるんですけど、聞こえませんね(笑)』


「そう?ちょっと貸してみて」


 僕は、遥から貝殻を受け取り、それを耳に当てた。


「え~と、何、何?遥が、晩ご飯に肉~~、さっき食べたとこだけど肉~、肉~、肉~って言ってる様に聞こえるよ、貝殻から」


 僕が笑いながら彼女にそう言うと、『もう』と口を動かして僕の胸の辺りを押してきた。海の中の柔らかい砂で踏ん張りがきかなかったものだから、転げそうになり、「あっ!?」と思った途端、手にした貝殻を海に落としてしまった。


 遥は、それを探そうと前屈みになって海の中を見渡し、髪の毛が顔にかからない様、左手で髪の毛を押さえた。

 その仕草に僕はドキッとして、咄嗟にカメラのシャッターを切った。あの頃の麻衣の仕草とそっくりだったから・・・。


「ねぇ、悠。こっち来て、こっち」


「何、麻衣」


「良いから、早く」


 砂浜にレジャーシートを敷いて座っていた僕は、麻衣に呼ばれて彼女の近くに向かった。


「何か見つけたの?」


「この辺り見て」


 彼女が指を差した辺りを覗いて見る。


「何かいたの?」と麻衣に聞くと、「えい!!」と言う声と共に、僕は顔に水を掛けられた。


「うわっ!!ちょっと~、麻衣~」


「いゃ~い、引っ掛かった、引っ掛かった~」と、麻衣は思惑通りになったので、嬉しそうにはしゃいでいた。


 そんな遥の仕草を見て、昔の出来事をふと思い出してしまった。


 立ち尽くしている僕に遥が、こっちこっちと手招きしてくる。


「さっきの貝殻見つけたの?」と聞くと、彼女は貝殻が落ちた付近を指差した。


 彼女に近付いた僕は、指を指している辺りを覗いて見る。すると突然、水が飛んできた。


 僕は紙一重でそれを避けると、彼女は「あっ!!」と驚いた顔をして、すぐさまスマホに文字を入力し送信してきた。

 

『何で分かったんですか』


「同じ事を昔されて、びちょびちょになった経験があるからね」と笑って答えると、僕の足元にさっき落とした白色の貝殻を見つけた。


 それから2人して、波打ち際をまた歩き出した。

 

 僕の先を歩く遥をカメラのファインダー越しに見ながら、これからの2人足あとを少しずつ増やして行こう。そう思い、シャッターのボタンを押した。



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