68話 おみくじ
家に帰ってから、早速、僕等は下ごしらえに取りかかった。
遥は、ピーラーで人参の皮をむき、僕は、玉ねぎを細かく刻んでいった。
う~、目がしみる~。
目に涙が溢れた僕は、「遥、涙~」と言って彼女の方へ顔を向けると、彼女は笑って流し台の扉の取っ手に掛けてあったタオルを手にし、僕の涙をトントンと軽く押さえて拭き取ってくれた。
遥~、それ手拭き用にしてるんだけど~。
僕は違う意味で涙が出てきそうになった。
それから、下ごしらえの準備が出来た僕は、ご飯を炊いている間に、「散歩にでも行かない?」と遥に言って誘ってみた。
「せっかく遥の手料理第1号だから、お腹空かしておかないとね」
彼女は、「うん」と頷く。
家を出た僕等は、この家の犬がいきなり吠えてビックリさせられたんだって言うエピソードや、家の近くにも歩いて5分の所に食料品のスーパーがあるよとか、そこから更に坂を上った所に苺大福が美味しい和菓子屋さんとか等を歩きながら説明していった。
そんな彼女も僕の話しに相づちを打って聞いている。
ちょうど和菓子屋さんと道路を挟んだ所に神社があるので、ついでに寄ってみる事にした。
2人してさい銭箱に小銭を入れ、手を合してお願い事をしてみる。
僕は心の中で、「どうか遥が事故に遭わないようにして下さい。遥に災いが及ぶくらいなら僕が引き受けますから」と1つだけお願いをした。
目を開けると、彼女もお願い事が済んだのかお互い目が合うと、また再び歩き始めた。
彼女はスマホに文字を入力して送信してきた。
『何をお願いしたのか気になりますね(笑)』
「うん、確かにね」と笑うも、2人して内容は話さず、心に秘めておく事にした。
歩いていると、遥は僕の服の袖をチョンチョンと引いてきた。
「うん、どうしたの?」と聞くと、彼女はおみくじを指差した。
「引いて見たい?」
『はい、引いて見たいです』と、笑顔で答える。
小学生の頃、紙で作ったおみくじを友達と引いて遊んだ事はあるけれど、実際に神社でおみくじを引くのは初めてだ。
僕等は、「せ~の」でおみくじを開いて見る。
すると遥は、ニコッとしておみくじを見せてた。 『じゃ~ん、見て下さい片瀬さん。何と大吉で~す ヽ(´▽`)/』
「え~、良いなぁ」
『片瀬さんは、何だったんですか?』
僕は苦笑いしながら、「小吉」と答えた。
『でも、吉だから良いじゃないですか」
「そうなの?」
『神社によっておみくじもまちまちですし、それに大凶であっても、それ以上は悪くなりませんから、後は上昇するだけですし。ポジティブに考えないと』
そう言えば、麻衣も良く「ポジティブでしょ、ポジティブ」って言ってたっけ。
「遥にそう言われたら、何か自信が出てきたな」
『おみくじですから』と、彼女は笑顔で答えた。
で、内容は・・・っと
え~と、何々。恋愛、障り(さわり)あり。待ち人、現る。旅行、早く行くがよろし。・・・。う~ん、何か色々書いてるけどよう分からん。
「ねぇ、遥は何て書いてあるの?」と、そう言ってお互いのを見せあった。
彼女のを見せてもらうと、恋愛、成就。病気、癒える。学問、努力すればよろし・・・。大吉だけに何か良い事書いてるような気がする。
「遥、学問、努力したまえ」と意地悪っぽく言うと、彼女は、反抗期の中学生の頃様に『は~い』と口だけを動かして答えた。
それから木の枝におみくじを結んだ僕等は、神社を後にした。
しかし、たかがおみくじと思っていたこの頃、後からそれが的中するとは、この時の僕等はまだ知るよしもなかった。




