魔法使いの依頼
「えっと・・・もう一度依頼内容を教えてくれるかな?」
銀次はギルドの受付に何を言われているのか理解できなくてそう聞き返した。
真夏。
朝の蝉がミンミンと五月蠅く鳴いているのが聞こえる。ギルドの天井に埋め込まれた冷凍魔核が冷気をゆるりと陽炎のように空気を冷やしている。
銀次の部屋にはエアコン設備のような冷凍魔核を置いていない。ギルドへ向かう途中、朝から照りつける太陽で額には汗がじんわりと浮かんでいた。
銀次がその汗を籠手を避けて服で拭うと受付の女性はニコニコとしたまま何でもないような顔で言った。
「ギンジさんに出ている指定依頼は家庭教師です」
銀次は自分が聞き違えていないことを喜ぶ前に、自分の横に立つ一人の魔法使いに目をやる。
紺色のとんがり帽子、暑いのに何を勘違いしているのかわからない分厚いローブ、その手にはロッドをしっかりと握りしめ、幼い顔が興味深そうにくりくりと銀次の顔を覗き込んでいた。その彼女の首元には木の板。若葉マークの板が室内なのにまぶしく見えて、銀次は瞬きを繰り返す。
「もしかして・・・」
「はい! 魔法使いのメイリです! 先生! 宜しくお願いします!」
そのとんがり帽子が地面に突き刺さるのではないかと銀次は心配しながらも呆れていた。とんがり帽子は何とか地面に届かなかったものの三つ編みのお下げが床掃除をしている。
その姿を見ろ下した後、銀次は白い歯が見えるように微笑んで受け付けの女性に顔を向ける。
「えっと・・・この依頼断ってもいいかな?」
「ええええええ!!?」
蝉よりも騒がしい魔法使いの悲痛な叫びが木霊した。




