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いぶし銀な異世界冒険録  作者: 三叉霧流
一章 いぶし銀な家庭教師
12/20

ひよっこ魔法使いといぶし銀な冒険者の日常(Ⅲ)

7/30改稿しました。

 日も高くなり銀次とメイリは、少し早めの昼食を取った。

 メニューは豚のような肉を持つ草食モンスター、モベベのソテー。新鮮なバターと香草、モベベの肉を加熱調理魔核で炒めてすぐに出来る手軽料理だ。素朴な料理なのでモベベが出没する町や村ではよく食べられている。

 メイリはそんな普通な料理にも満足そうに元気よく食べ、講義前の軽い情報収集ということで、一階の作業台を勉強机にして銀次と話し合っていた。

 銀次は、ギルドから渡された資料に目を通しながらメイリに確認をする。

「メイリは火炎魔法士(パイロマンサー)だが・・・火炎魔法士(パイロマンサー)ランクツリーの魔法はあまり進んでいないな」

 メイリは、銀次がギルドの資料を手に持ったときから珍しくシュンとしていた。

 銀次が口にした火炎魔法士(パイロマンサー)は魔法士の一つ。この世界の魔法使いは、十つの属性で大きく分かれいるが、ほとんどの魔法士は四元素、火、水、風、地で構成されていた。属性は固定される訳ではないが、効率的に習得できるのは本人の主属性、メイリなら火の属性になる。

 そして、魔法の習得は魔法の種類とその等級、威力などで評価される。様々な魔法を行使できても威力や等級が低ければランクは上がらず、また一つだけ異常に威力や等級が高くても評価されない。魔法ギルドが取り決めた冒険者魔法士のランクツリーに従いランクは上がっていく。それに効率的な習得を推奨する冒険者ギルドの考えも合わさって、魔法士自身の属性にあった魔法士ランクツリーがランク昇格の鍵となる。

 いま銀次が口にした内容は、火炎魔法士(パイロマンサー)の彼女がそのランク昇格の鍵となる魔法をごく初歩的な火魔法以外習得していないということだった。

 それを指摘されてメイリはいつもの陽気がくしゅくしゅと萎み、身体を少し小さくする。

「だ、ダメでしょーか? ぼ、冒険者失格…?」

 悪い成績表を家庭教師に見られている子供のように彼女はもごもごと言った。

「まぁ努力次第で中級ぐらいなら習得できるだろう」

 それを聞いてメイリは、よかったと机の上にうなだれる。

 銀次はそのメイリの姿に微笑ましく笑う。

 メイリは、火炎魔法士ランクのファイヤーボールを何とか合格をもらうレベルだった。銀次はその書類の地名をチラリと見る。

(シャマグラ高地出身なら仕方がないか)

 シャマグラ高地は銀次が身を寄せる王国、レガリス王国の最東端の領地だ。ドラゴンが支配する険しいモルガノ火山地帯を目の前にした高地であり、ドラゴン達と火山の熱気で気候が変動し一年中高温多湿の熱帯地域。標高1000mのジャングル地帯となる。

 シャマグラ高地は人が開拓し住み着くには少し難しい土地柄で、必然的に日々生活のために教育は後回しとなる。魔法の才を持った人間でも満足に教育は受けられない。

 銀次はシャマグラ高地の雄大で過酷な光景を思い出しつつ彼女の苦労を忍んだ。彼もそこの出身とギルドに登録してあったのだ。つまり同郷となる。

 ギルド側も銀次とメイリが同郷なので任せるには打って付けと判断したのだろう。

 そう銀次も考え、その道のりを思い浮かべていた。

「ここまで来るのは大変だったな」

 その言葉にメイリは「たはは」とわらって頷く。

「はい。私は方向音痴でここまで来るのに一年かかっちゃいました」

 銀次はそのあまりの方向音痴っぷりに驚いた。

 シャマグラ高地は銀次の住む町から離れているとはいえ、どんなに遅くとも二ヶ月で到着する。一年ということはほとんど道に迷っていたことになる。

「い、一年…?」

「あははは…なんかすみません」

「いや、それだけ旅をしていれば普通冒険者として一通りの事をわかっているはずだと思うが…」

 言葉を濁して銀次はどうだ?という顔でメイリを見た。

 書類には彼女が冒険者としての知識があるかどうかの判定結果は真っ白だ。。

 メイリも苦笑する。

「入門試験をする前に皆さん忙しそうで…」

「なるほどな…確かに俺に冒険者入門試験や段階評価も俺に一任すると書いてあるが…いいのか? 俺が冒険者講師の資格も持っていないのにしても?」

「ミシェラさんはギンジさんにお任せすれば間違いないって言ってましたよ」

 銀次は過大すぎる評価にため息を吐く。

「…まぁいい。とりあえず冒険者にとって一番大切な事を教える」

 その言葉にメイリはぴん、と背筋を伸ばし、手を上げる。

「はい! 先生、お願いします!」

「ああ、まずは…だ」

 銀次は腕を組んで真面目な顔で彼女を焦らすように言った。

 メイリは身を乗り出さんばかりに机に小さな胸を押しつける。

「な、なんでしょう!?」

 じっとその姿を見て、銀次は少し微笑んだ。

「一番大切なこと。それは挨拶だ」

「あ、挨拶ですか!?」

 メイリの目が驚愕に見開かれた。

火炎魔法士はこの世界で非常に重宝される冒険者魔法士です。モンスターの半分ぐらいが生物系ですので火が効きやすいからです。


「火炎魔法スキル」

単体重視のファイヤー(火を熾す時に便利ですが攻撃魔法としては近距離のみ)

威力重視のファイヤーボール

速度重視のファイヤーアロー

操作重視のファイヤーウィップ

上記が初級魔法で、その威力と魔法速度、効果持続時間を考慮してランクが上がります。メイリはファイヤーのみ習得して、威力と効果持続時間がギリギリ次第点です。

下記が中級になります。

防御重視のファイヤーウォール

(二重魔法でバーストがあります。これはウォールの炎を爆発させて相手にぶつけます。バーストは上級の追加魔法です)

範囲重視のファイヤーストーム

個数重視のマルチファイヤーボール(同魔法の二重魔法になりますがバーストとは異なります。追加あるいは遅延魔法は中級よりも高度な魔法となっています。中級ではトリプルぐらいの数を出す必要があります)

高威力単体フレイム

が中級です。魔法スキル四種×ランク数(ランク数は初、中、上、超級の四つ)がランク収得者の魔法スキルの数です。ランクツリーに記載されていない魔法もさまざまあり、禁呪や軍用、他の属性魔法との混合魔法もあります。

※軍用は、複数の魔法士による合体魔法です。冒険者は個人主義ですのでランクツリーには軍用魔法が評価対象にはなりません。が、現場では簡易の軍用魔法は必須ぐらいになってます。


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