クロヒメの独り言
<クロヒメ>
今・・・私は旅の途中です。
当てのない西に向かっての旅です。
正直こんな旅は初めてです。
不安がいっぱいです。
小さい頃は村に寄った旅人と接し、少しながらの旅に関する知識は持っていましたし、又、少々の旅らしきものはしたことがあります。
しかし、その時はわずか数日の明確な目的地に向かう旅でした。護衛の兵士さんも居ました。
そもそも馬車での移動です。そして旅の途中はちゃんと宿に泊まりました。
思い起こせば、安全で快適な旅でした。
しかし、今回の旅は違います。まず今回は旅・・・目的らしき物はありません。
決まってるのは方向のみ。ただふらふらと西らしき方向に向かうのみです
護衛の兵士もいません。
そして、食料など一切の荷物もありません。
更にはお金さえもありません。
しかも!夜は野宿という旅です。
私が今まで抱いていた旅のイメージと全く違う旅でした。
非常に不安で心配です。
しかも、今は戦火中・・・治安もとても心配です。少々不安です。
でもポチ様が一緒ですから、同時に少しは安心している自分がいます。
しかし、思い起こせば自分の半生・・波乱万象な人生でした。
でも、ここ最近・・・自分の生活に大きな転機が訪れました。
いい機会です。ここで私の半生を振り返る事にしましょう。
私は普通の村で、普通の家庭、普通の長女として普通の村娘として生まれました。
そこで私は普通の村娘として過ごし、多少のゴタゴタはあるにせよ普通の一生を送るはずでした。
しかし、そんな生活も次第に変化していったのです。
それは父が原因でした。
でも・・・決して父が悪いわけではありません。
しいていえば・・・運が悪かったのでしょう
父は魔人でした。父は覚醒し魔人へと変貌しました。
最初は優しかった父ですが、次第に私たち家族への愛情が薄れ、最終的にはほぼ無関心な状態になり、最後には村を出て行ってしまったのです。
姿も人の姿では無くなり。いえ・・・形こそは人間の形をしていましたが、次第に黒くそして村を出るころには全身が黒く染まっていました。
そんな母は苦悩し、父が出てった後に流行り病にかかり死んでしまいました。
そして私に残されたのはこの両腕、この真っ黒に染まった黒い両腕です。
村人たちはそんな私を怖がり、決して私にかかわろうとしませんでした。
そんな時です。帝国のお役人達が私の住む村を訪れたのは・・・。
私には特別な施設に連れてゆかれ様々なテストが行われました。
当初は何も知らぬ地に連れてゆかれ不安でしたが、でも国の役人の方々はとても優しくしてくれました。
理由を聞くと私が魔人の娘であり、国家の為約立てるからだと教えられました。
実際に私は多少・・まぁ・・ほんの少しですが魔人の能力を有しているからです。
そして、私の父は『黒の魔人』という存在になったと聞かされれました。
噂では今はこのラーバス帝国の西 人知れぬ小島に居を構えているそうです。
その島では王として君臨し、誰も逆らえない存在だそうです。
その施設で色々な事を教えてもらいました。
まず『黒の魔人』の能力です。
まず暗闇に紛れ、夜の闇夜の中では視覚でとらえる事の難しい視認性。
そして両腕から黒い闇を作り出します。
その闇は好きな空間を繋げ移動可能となります。
そう・・好きな場所にです。
その為、黒の魔人は神出鬼没な魔人として知られてます。決して捕まえる事の出来ない。なんな頑強な城だろうと中に侵入できてしまう。
そんな恐るべき魔人です。
移動能力だけ?と思うかもしれませんが、その力はさすがに規格外です。
その接続する空間と距離はどこまで限界なのかわからないほどです。
空間と空間を自由に繋ぎ。しかもその闇は一つの都市をも飲み込む大きなさのです。その気になれば山一つ、都市一つさえはるか彼方に移動できてしまいます。
はぁ・・・本当に規格外ですね魔人って
過去には都市の上に海を繋げ、その都市をあっというまに大洪水で跡形もなく流した事もあるそうです。実に凄い能力です、
自分の場合もこの両腕に魔人の能力が宿っているそうです。
そして、自分も小さくですが空間をつなげる事ができまます。
と・・・いっても人間1人をつなげる穴が精一杯ですけどね。
しかも、ほんの僅かな時間のみ・・・本当に僅かの間のみです。
そして一度開ければ閉じ、再度使用するには丸1日の時間が必要です
これではあまりも使い道が限定されてしまいます
そして私は、その施設を後にしました。
その後、・・・とある町はずれの館に移り住むことになりました。
私はそこで素晴らしく豪華で・・・そして退屈な日々を過ごすことになったのです。
ラーバス帝国は私を、魔人の能力を有した私に価値を見出しているのでしょう
お付きのメイドが数名、そこで私は何一つ不自由のない生活を送っています。
しかし・・・よく考えれば自分は完全に籠の鳥ですね。
でも、私はそこである程度の自由は与えられています。十分幸せといえるかもしれません。
そこでふと・・・思い出されるのは父の思い出です。
幼かったころは優しかった父
変貌をとげ次第に私たち、いえ人間に無関心になった父。
最後に村を出てってしまいましたが、今は私をどう思っているのでしょう。一度会って話をしたい
そんな考えが出てきてしまっています。
でもそれは叶わぬ願いです。
何せ相手は人間とは比較にならぬ存在・・・魔人なのです。
もう話すことも、会うことも二度とないのかもしれませんね。
そして私は死ぬまでこの屋敷ですごし、一生が終わるんでしょうか?
そう思っていたある日、帝国の役人が屋敷を訪問し、突然の事態を告げました。
この屋敷に客が来訪するとのことです。
客?
こんな魔人の混じった人間のいる館に客が来るなんて今まで考えもしませんでした。
いったい何事が起きたのでしょう?
話を聞けば驚きの内容でした。我が家に来る客・・・なんとそれは魔人だというのです。
父以外の魔人と会うのも初めてです。いったいどんな対応をすえばいいのでしょう?
魔人相手の接客なんて分かりません。
今回はお断りしたいとお願いしました。でも役人は首を縦には振ってくれませんでした。
仕方ありません。
私は国に養われて居る身ですからね。最終的な判断は私にはできないのです。
それに何より国を取り巻く情勢がそれを許しませんでした。
今現在、わが帝国は北の民族の侵攻があり、形の魔人の襲撃により国内政治・経済は混乱してます。そして今現在対抗できるだけの戦力もありません。
そんな中さらに新たな魔人を敵に回せないのは理解できます。
無論そんな重要なお役目だと聞くと気持ち的には憂鬱です。
相手の魔人の気分を害し、国に止めを刺してしまっては目も当てられません。
魔人は基本 人間を嫌います。しかし、ほんの少しでも魔人の血が混ざっている私なら・・・と上の方がは淡い期待を抱いているようです。
やめてほしいですね。
こんな村娘に何を期待してるんでしょうか?
断りたいです。
私がこんな場所で貴族のような生活をさせているのはこの為だと・・そのお役人に遠回しに言われました。そこまで言われれば断るという選択肢が出てきません。
そうして出会ったのがポチという黒目黒髪、南方海洋民族の少年でした。
そしていきなり自分は奴隷です。下働きさせてくださいと言い出しました
意味が分かりませんよね?
尚、狼を一匹連れてきましたが、ポチ様はあくまで犬といってます。
狼と犬・・・どう見ても違うんですが・・・これは黙っておきましょう。何か理由が有るのかもしれません。
そしてポチ様は毎日一生懸命働いていてくれます。しかも手際が実にいいんです。気遣いの名人でした。
なんでしょうね?
本当に魔人なんでしょうか?
国の役人が間違えたのか? そんな気になってます。
そして一体何の魔人なのでしょうか?
奴隷の魔人?
下働きの魔人?
ハウスメイドの魔人?
いやそんなものがいるんしょうか?
さらに名前もポチ? 本当に意味が分かりません。
そうしているいるうちに少しづつ分かってきたことがあります。
このお方、とんでもない魔人です・・・下手したら魔王クラスです!
私の両腕に宿る魔人の血、それから僅かに感じるのです。魔人の力を・・・
無論ポチ様からも感じますが、更に強大な気配をもう一人、いや一匹に感じるのです。
ポチ様が犬と言い張った狼です。
そしてある夜、見てしまったのです。その狼が人化する姿を!
あれは人狼族、中位以上の魔族です。そんな人狼族が狼から人に変化する姿を窓から見てしまったのです。
私はそれを見た瞬間心臓が止まるかと思いました。
庭いたその狼が突然人に変化を遂げたのです。
夜中偶然眠れなく、偶然窓から何気なく庭を見ていたのです。
そしたらなんと突然!
狼が人に変化するではありませんか!驚きです。
その光景を見た私は心臓の鼓動が唸りを上げて止まりません。
その変化の瞬間を偶然見てしまった時、一瞬人狼の魔族がこちらを見た気がしました。
それを見た瞬間・・・窓から離れ、急いで壁に隠れました。
しかし、遅かったのです。
その人狼族はゆっくりと歩を進め、私が隠れた場所に近づいてきたのです。私は生きた心地はしませんでした。
しかし、そんな人狼族はゆっくりと・・・でも優しく私に語り掛けてきます。
「クロヒメといったか」
「・・・・」
私は恐怖のあまり声が出ませんでした。
「ん? 違ったか?」
「い、いえ、クロヒメです」
私は手で心臓を抑えつつも慌てて返事をしました。
目の前の存在は化物・・・・人が決して抗えない存在、それを心で理解してしまったのです。
決して嘘偽りを言える相手ではありません
「そうか、ならば頼みがある。我は『牙の魔人』ガジ。わが主に従う者」
「はっ、はいっ!」
やはり魔人でした。心臓の鼓動が止まりません。牙の魔人と言ったのを確かに聞きました。
その魔人の名は聞いたことはありません。
しかし何であろうとそこにいるのは魔人なのです。
断る・・という選択肢は出てくるハズがありませんでした。
「すますが我の事は主に内密にしてくれ、そしてわが主を頼む、混ざるものよ」
「はっ はい」
そう・・・ガジと名乗る魔人はその場を去ってゆきました。
牙の魔人・・・その存在は知りませんでしたが、魔人が主に仰ぐ者って・・・そうなるとポチ様は魔人以上の存在です。
しかも、ただの魔人以上の存在の可能性が出てきました。
そして数日後・・・驚愕の事態が起きました!
「やぁポチ君いる?」
そう言って突然尋ねて来たのは冒険者風の男でした。
私は知ってます。
要注意人物として有名で、以前いた施設では誰もが知ってる有名な人物でした。
東の広大な領地をただ1人で支配する魔王の1人『戦の魔人』です
なんてこんな場所にこんな人物が?
又も自分の心臓は止まりそうでした。
戦の人物は10日ほど我が家に泊まり、毎日ポチ様と楽しく談笑してるようでした。
こうなると予想は核心に代わります。
ポチという人物は完全に魔人であり魔王の1人だと。
その事実に私は震えあがります。
私達はなんて恐ろしい人物を相手にしてるのでは・・と
だけど、本人が下男として毎日朝から晩まで働くことを希望してるのですからどうしようもありません。
そんな中、国から密命が下りました。なんとしてもその魔人ポチを懐柔せよと。
国もポチ様の重要度を数段階上げたようです。そしてこの屋敷で普通に暮らしている姿を見て欲が出てきたのでしょう
気持ちは分かります。
魔王なんて敵には回せませんですものね。しかも、今現在は危機の真っ最中!
あわよくば北方騎馬民族への対抗手段にしようとの思惑が見え透いてきます。
そんな中・・ポチ様は急に旅にでると言い出しました。
本当に突然の事です。
又しても意味が分かりません。
しかも! 荷物もお金も何もなく・・・ただひたすらに西に向かうとのお話です。
ポチ様は一人で向かうとおっしゃられましたが、私にも使命があります。
ポチ様を我が国の味方につける・・という使命が!
又、西に向かうのですから父にもあえるかもしれません。
そんな淡い期待も少々ありましたが・・・。
無論、不安はありますが、何しろポチ様がいるのですから安心です。
なんせ魔人しかも魔王ともいえるお方です。これ以上の安心感はありません。
いくら父が相手だろうがこっちは複数の魔人を配下に持つ魔王(仮)なのですからね。
で・・旅に出たのですが・・・これは・・・きついです。予想外です。
元々村娘で体力には自信があったのですが長い館ぐらしで体力が落ちていたようです。
体力が持ちません!
まぁ荷物が全くないので多少は楽なんですが、本当にきついです。
しかも食料なしです。まぁ食料に関しては夜中こそっとお屋敷と空間でつなげ、あらかじめ用意してあった保存食を取り寄せてます。
そして、メイド達といっしょに食べてはいます。
そういえばポチ様はご飯が無くても・・・あぁ魔人でしたね。食べなくても大丈夫ですものね。
でも辛そうにしているのは何故なんでしょうか?
実に不思議です。
そんな折、聞いていた北方の騎馬民族に捕まりました。
ポチ様の指示で無抵抗で捕まりました。
もっと北の位置に砦を築いていたと聞いていたのですが、こんな所までで来ていたんですね。
そして、下着を除き衣服を全部奪われてしまいました。
少し恥ずかしいです、
荷物は元々ないので被害はそれほどでもありませんが・・・。
そんな中ポチ様だけは嬉しそうです。何故なのでしょう?
実に不思議です。
でもそんな中、通常運転のポチ様の笑顔を見れば安心できます。
この状況にも相変わらずです。さすが魔王ですね。
でもこの下着姿本当に恥ずかしいです。
で、結局色々あり、私は能力を使い 屋敷に舞い戻ってきてしまいました。
結局2日間の旅でしたが、いろいろありました。結局この旅の目的は何だったんでしょう?
なぜ荷物もなしに・・・・はっ?
もしかしてポチ様は私の能力に気づいていたのでしょうか?
そして自発的に使うためにこのようなことを・・・・考えすぎ?
でも魔王と呼ばれるポチ様です。そのようなお考えがあったのかもしれません。
ポチ様・・・なんか信じてもいいお方のような気がします。




