勘違いでなぜか魔人にされてしまいました
「お待ちしておりました、わが主」
目の前に居た、実に偉そうな魔族がえらく低姿勢で自分に語りかけて来る。
(まぁ実際偉いんだろーだけどさぁ・・・)
他の魔族も同様自分にひたすら平伏真っ最中です。
(いや、そんなのが、自分を主って? いや、自分は ただの奴隷なんすけど・・・)
本当に意味がわからない
と・・・思うが、この状況で言うほど自分は空気が読めない訳じゃない。
ここは勘違いでも何でも生き残る事が大切。
とりあえず同意するしか・・・ないのかな?・・・うん。
「あ・・・あ、えっと・・あのぉ・・・」
「わかっております、記憶と力を無くされているですよね?」
「えっ?」
今なんて言った? 記憶? ってあれ??
どーゆーこと?
記憶を無くし・・・゜(∀) ゜ エッ?
「ご説明させて頂くと、ご主人様は魔人の1人。『未来の魔人』と呼ばれる魔人の転生された姿なのです」
「えっ そうなの?」
今明かさせる驚愕の事実!!またビックリですよ!
「はい」
目の前の魔族が優しそうな笑みで説明するけど・・・
いや、つい勢いで同意したけど、何なんですかね? それって?
あれ、自分人間だと思っていたんですけど・・・。
えっ、違うの?
もしかしてアレ? ここから人生EASYモード突入? ドドーン!
って・・・うそーん!
ええっ?
勝ち組の仲間入り???
「転生・・?」
「はい間違いなく、目の前いる貴方様こそ我らが主、『未来の魔人』その転生されたお方なのです」
「いや、突然 そんなこと言われても・・・心の準備が・・・それに全く心あたりが・・・。いや、そもそも魔人って死ぬの?」
「はい、魔人は不老不死の存在ではありますが、一時的な死は存在するのです」
「ほえ?」
何それ?
しかし、落ちついてみれば、目の前の魔族はきちんと洗濯し、アイロンまでかけられたきちっとした立派な執事服を着た魔族。
対し、自分はボロボロの服
まぁ奴隷ですしね?
それが又 異様なくらいな低姿勢で目の前の魔族がご丁寧な説明する訳ですわ。傍目から見れば違和感すごいだろうなぁ。
しかし、まぁ・・自分とは完全に隔絶させた身分の差を感じて恐縮してしまうなぁ。
でも、こんな偉い魔族が人間の奴隷にこんな壮大なドッキリを仕掛けるとは思えない。
・・でも・・・ほんと? 今更 嘘はやーよ
後で知った事だが、目の前の魔族の名前を『アベルト』と言う、部下筆頭である戦闘執事だそうだ。
「いくら魔人といえども、敵対する魔人や勇者などに敗北し、首をはねられれば例外なく死を迎え、幾ばくかの年月を経て転生をします」
「転生すか・・・」
「はい。転生後は以前の記憶を失い、力も一時的に封印されてしまいます。」
「そう・・・なの?」
「はい、なのでご主人様は魔人であるのは間違いありません。しかし現在は人間と変わらない力 そして記憶を無くされているのです」
「・・・そうなんだ・・・記憶をなくしている。とはいえ実感がまるで無いんですけど・・・」
「いえ、間違いなく魔人の転生された姿ですよ」
目の前に居るアベルトという魔族は笑顔で答える。
「まぁ、こんな大掛かりな仕掛けしておいて、後で人違いでした。ゴメン、とりあず殺すね?・・・じゃ冗談にもならんのですけど?」
「疑い深いですな」
「まぁ そーゆー人生送ってきましたので・・・」
「・・・いえいえ、今回は大丈夫です。訳があるのです」
「訳?」
「はい、我が主である未来の魔人は、100%当たる予知能力を保有しておいででした」
「なにそれ?」
100%当たる予知能力? いや流石に魔人といわれるだけの事はあるね。びっくりっすよ。是非今後の自分の人生どうなるか教えて欲しいな、
あ、ん? 今はその予知が出来る魔人が自分なのか?
ややこしいな、
「はい、未来確定といってもいい、強力な力をお持ちでした。自らの死を予言された我が主は転生後、この時間、この場所に現れる事を予知したのです」
「つまり、この時間、この場所に来た奴が魔人?」
「そうです。貴方様です。この時間、この場所、そして荷馬車に乗った状態である事を詳細に予知されました」
すごいなその魔人、そこまで詳細に予知するんだ。あ、今は自分か
「ふーん。そうかぁ・・・自分がその魔人なのか」
「そうでございます」
丁寧に頭を下げる執事魔人のアベルト
(ヤバ、なにこの、成り上がりストーリー、お嬢様がシンデレラを読んでいたときはありえねーw マジで笑える!
・・・とか思っていたけど、まさか自分がそうなると思ってもみなかった)
どうもようやく不幸だらけの自分に幸運が訪れたのか?)
「なるほど、奴隷として暮らし、17歳にしてようやく勝ち組に!」
「は? ご主人様は確か16歳では?」
「・・・・えっ16歳?」
(えっ、どーゆーことなのん、あれ? あれれ? 16歳?)
「はい、予言では転生後16歳の時に・・・あ、いやコレは私が失念してしまいました。以前ご主人差はは”だいたい”16歳頃とおっしゃってました。17歳これは全く問題ありません」
「えっ?」
「これは我が主様、失礼いたしました」
目の前の魔族が深く頭を下げる。
目の前の魔族はそう言うかもしれないが、自分の本能がヤバイと告げる!
こゆーときの自分の勘は大体当たる。
17歳 16歳? 何か変だ!
なんかヤバイ分雰囲気なんすけど・・・
「あ、、あ、あ、そうそう、しかし、この場所と時間だけでよく自分が魔人だと断定したね」
(いかん、話題を変えねば!)
「はい、我が主の予言は滅多に行使できません。しかし、一度予言を行えばその確立は100%。
その予知は未来を完全に確定したもので、一度未来視によって出た事は他の干渉は受け付けず、決して覆せません」
(・・・・なんちゅー能力だ。すさまじいな)
「それで自分が魔人と?」
「はい、完全に確定した未来である以上、間違いは存在しません。未来の魔人である主人が予言として伝えた以上間違いは無いのです」
「・・そう、なんだ」
「まぁ、あと判断材料は魔人の指輪くらいでしょうか?」
「へ? 指輪?」
なに? 指輪? そんなもん知らないんですが?
あれ? 自分かなりヤバクね?
「はい、魔人としての能力、そして格を示す指輪が転生後も引き続き付けたまま転生されるのです」
「何度も確認するようだけど・・・指輪だよね?」
「はい、指輪です」
思わず自分の手を開き眺めてみたが、そこには単に手があるだけで、指輪なんてしゃれた物があるはずが無い。
「ん? ご主人様指輪がございませんが」
「あ、はい?!」
思わず、自分の手を背の後ろに隠してしまう。
(あっ、しまった。ヤバイ疑われたかな。でも指輪なんて持ってないぞ!
そんな奴隷である自分が指輪なんてもてるわけがありません。
そもそも小さいときから指輪なんてしたことがないよ。
指輪なんて・・・・あ、あれ?)
「あ・・」
「どうされました主よ」
(もしかして・・・カタリナお嬢様??)
実はカタリナお嬢様はなぜか生まれたときから銀色の指輪をしていた。。
不思議に思った両親が王徒の高名な予言者に指輪を見たと所、この子は将来、大物となる。指輪はその証だといわれたそうだ。
自分としてはその大物とは体重の事だと信じ切ってきたのだが、魔人の転生となればそりゃ大物だ。その予言者の予言は大当たりってわけだ。
となると・・・・えっ、えっ?
本当の魔人はそのカタリナお嬢様?
たしかにこの時間、この場所、予知は未来を完全に確定・・・しかも未だに荷馬車に乗ったままだ。それにあと少しで16歳だし、完全に予言通り。
確かに、カタリナお嬢様が 本来の予知の人物としたら・・・。
えっ?
えっ!?
えっ????
えええーーーっ ヤバ、激ヤバですよ。完全に人違いです。
で・・でで 当の本人のカタリナお嬢様はもしかして・・・・。
うっ・・・・・ヤバ・・矢があれだけ刺さったわけだし・・
生きてるんでしょうか?
そっと視線を荷馬車に向ける。
・・・荷馬車の下に赤い液体がありました、血ですね、これはしかも結構な量。念の為に言うなら自分どこも怪我はしてません
(・・・・・あれ?。あれれ? これやばくない?)
ドンドンと自分の心臓の鼓動が早くなるわけですよ
「主様 どうされました?」
「あ、はい! ゆ、指輪ね。もしかしたら銀色の指輪?」
いやいや、落ち着け! 自分!
「はい間違いなく、その指輪です。やはりお持ちでしたね。」
「あ、・・・大切なものなのでこの干し草の中に隠してあるんだ」
「そうでしたか、安心しました」
あ・・・思わず言い訳をしてしまった。何だろ、このやってしまった感じは。
「少し待ってほしい」
「かしこまりました」
アベルとが頭を下げた瞬間を見計らい、魔族達に見えないように、慎重に干し草を分け、中をのぞき込む・・と?
・・・・・うっ。
そこには、眉間に矢が刺さり完全に絶命したお嬢様がありました。
なんと、目の前で我が主人が白目を向いて、幸せそうにお菓子を抱えたまま絶命しているではありませんか。
恐らく、いつものように幸せな現実逃避をしておいでだったのでしょう。
まぁ妄想しながらの死はある意味不幸中の幸いだったのかもしれません。
でも、生きている自分はこの先 どーしたらいいんでしょう!
(・・・・・・・どーしよ、これ。死んでますね。こりゃ詰んだ、終わった。自分の人生。
いや、まだ何とかなる。なんとかごまかしてみせるしかない!
じゃないと『あぁ本当の主人は死んでますね。関係ない貴方は・・・まぁ殺しますか』
ズバッ!
って結末ですよ。実にやばいです。
「主様?」
「・・・あ、あぁ少し待って」
とりあえず、急ぎ死体から指輪をはぎ取る。生きているお嬢様本人の意思以外では決して抜けなかった指輪が、今回は死んだせいかあっさりと抜けた。
で・・急ぎ手にした指輪を見せる。
「この指輪だよね」
「おおまさしく、銀の魔人を示す『魔人の指輪』です」
よかった、なんとかごまかせたようだ。
「しかし主よ、こんな時間に護衛もつけず、なぜ1人でこんな場所に
「あ、あぁ、実は先ほど魔物に襲われ急いで逃げてきたんだ」
「そうでしたが、先ほどから気にはなっていたのですが、この近くの村で起きたの騒ぎ、その仕業でしょうか?」
「そうそう、さっき巨人族に襲われ・・・」
「ご主人様を襲うとは不届きな、退治してまいります」
自分は言い終わる前に、発言したアベルト達が見せた、凶悪な殺気に、思わず恐怖を感じる。
あかん、股間がきゅーっとなった。これはヤバイ
(やべぇ、魔族怖いよぉ、自分は簡単に瞬殺されるレベルの魔族だ、どうしよ、コレ
ばれたら単純に殺されるだけでは済まないぞ。あぁぁばれませんように! ばれませんように!
「あぁ、ちょっと待って!」
「どうされました我が主よ」
「その前に、相手巨人族だよ、できるの?」
「造作もないこと」
造作もないんだぁ・・あの巨人族相手に・・・流石、戦闘力半端ないなぁ
あ、でも生き残った村人にお嬢様の指輪の事がばれでもしたら・・・
ヤバイ、これはヤバイ
「いや、イイです、はい。あの村に何の執着もないから」
「かしこまりました」
そう、もしも他の村人から魔族に『自分が何の関係もないただの奴隷』だと知れたらどんな目に合うか分かったもんじゃない。
そもそも奴隷の自分は、あの村に愛着なんてもの最初からないんだし。
むしろそのまま全滅してしまえ!
「では、これで」
「はい?:
「(とりあえず人違いをと分かったからには、この場を去るのが一番とりあえずバレル前に逃げたいの)じゃ・・・またね」
「何をおっしゃいます、我が主よ、まず我々が用意した屋敷に参りましょう」
だよねぇ、そうなるよねぇ。
ここは覚悟を決めるしか無いか?
屋敷とやらに移動してからゆっくりと考えたほうがいいかも。
そして隙をみて逃げ出すとしよう。
ただ何となく既に手遅れ感満載なんすけど・・大丈夫だよね、いや大丈夫だと信じたい!
「屋敷ですか」
「はい、既に我が主の為の屋敷を用意為てございます」
まぁ、確かに、このまま村に帰っても、お嬢様が死んだと知れば、責任を取らされ殺されるだけ。
ま、そして逃げても、自分は奴隷。逃亡奴隷はそのまま打ち首ですね。
「・・・はい、では屋敷にいきます」
「かしこまりました」
アベルトが笑顔で答える。
とりあえず、本来の未来の魔人であるカタリナお嬢様を干し草の中に厳重に押し込め屋敷に向かう。
大勢の魔族に幾重にも囲まれ、荷馬車の中には本来の主人でるカタリナ様の死体があるわけで・・・。
なにこれ? この重圧、この罰ゲームw
さっきから心臓の鼓動が激しくて苦しいんですが!
カタリナお嬢様は実にいい笑顔で死んでるし、あーむかつく!
「はぁ・・・・」
(どうなっちゃうんだろうなぁ・・自分)