エピローグ
今・・・自分の頭の中に、無限に広がる平原が広がっていた。
そう・・緑の草原・・・何もなーい 動く動物も、生き物の気配さえない、何もない
ただの草原。
いや・・・?
例えが悪いかな?
訂正しよう!
氷だらけの広大な雪原といった所かな? 目の前に広がる一面の氷の世界
うん・・・そんな感じ
つまり・・・こう言えば早い・・・自分のアタマの中は真っ白!
なーんもない! すっからかんの世界。
頭の中が真っ白すぎてもう、何が何だか分からない。
いや、状況をもう少し把握しよう。がんばれ自分!!
やればできる子!!! がんばれ自分!!
さてまずは状況確認だ!
まずは自分の眼前にいるのは大勢のとっても怖い魔族さん達!
うん・・・いっぱい100人以上はいるね。
その方々にくるーーっと囲まれております。
味方はなし。人間は自分1人です。
で、目の前の方々を再度観察・・・ おっきな角が生えたえり、背中に翼が生えたり、
おっきな牙があったり、肌が 緑色だったり・・・うん 魔族の方々ですね♪
・・・まちがいないでしょうね。
で・・・魔族は、しがない人間である自分には比べるべきもない強者の方々です。
馬鹿高い武装で身を固めた騎士様が大勢でやっと1人の魔族と対抗可能な魔族さん方。
うん、よし目の前の状況は確認できた。
で・・・自分はしがない『村人その一』いや・・・うん 正確じゃないな
ただの村に住む『奴隷その一』ですね。
武器? そんなもん 有るわけがない!!
で・・・その魔族さん達が自分達をぐるりと取り囲んでいるわけだ。
どーしよもない戦力差ですね。
巨大な狼に囲まれた VS 生まれたばかりの子羊
そんな感じです
うーん・・・絶体絶命の大ピンチですね
ここまでは良い、怖いけど、まぁよくあるシチュエーションだ。
このまま殺されて 終わり! 自分の人生の終わりを迎える。
この時代にはよくある事だ。
だが、ここからが分からない????
その魔族の方々が皆一応に平伏してこう言うんだ。
「「お待ちしておりました我が主よ」」」
・・・ってね
「(゜Д゜≡゜Д゜)エッナニナニ?」
何この状況!
なんなのこれ?
本当に意味が分からないよ!
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さて・・・
事の起こりは数時間前の事・・・自分は大きな綺麗なお屋敷の中でいつものように
・・・そう・・・いつものように仕事をしていた。
村一番のお金持ちである村長のお屋敷の中でのお仕事である。
自分はそこで雇われている奴隷なのである。
奴隷・・・まぁよくある職種だ。そこで自分は今日もお仕事に励んでいる。
まぁ、『仕事』といっても一番の仕事は主人の娘であるカタリナ様の相手だ。
カタリナ様は御年15歳
自分より2つほど年下の少女だ。
あと1週間で16歳の誕生日を迎えられる少女(笑)だ。
そう・・・少女(笑)←ココ重要!
その少女(笑)は・・・実際は少女というのもおこがましい醜悪な外見をしていた!
外見はビア樽。細部を見れば太ったオークのような巨大な三段腹を装備し、防御は十分。
さらにその脂肪で首が完全に隠れていたりと、まさにフルアーマ状態!
そして、その外見を裏切る事のない最悪な性格をしていた。
まさにキング オブ 少女(笑)←ココ重要!
だがっ!!
現実は実に残酷、このお嬢様はこの村の村長の娘で、自分はそのお嬢様専属奴隷。
あはは(笑) もーどーしよーもない 自分の人生完全に詰んでいますね。
『奴隷』・・・その名の通り自分は奴隷
戦争に負けた国家の民族の子供ががそのまま奴隷になることはよくあることだ
自分は奴隷としてこの家に購入されてきた。
ドナドナドナ~ドナー売られてきたよぉ~♪
それが今の自分
「ポチ!」
「はい、ただ今お嬢様」
自分はお嬢様のかけ声で何を言おうとしているか瞬時に判断し、即座に行動する。
このお屋敷に買われて10年近く、ずっとこのような行動を繰り返している。
当所は何をお嬢様は言いたいのかさっぱり分からなかった。そして間違えると厳しく叱咤される。
まぁ、それを10年近く繰り返してくれば自然と何が言いたいのか分かるようになるってもんだ。
急ぎ、事前に用意してあったホットチョコレートをお嬢様の目の前に静かに置く。
(まずはチョコと、、次はおしぼりの用意っと)
ここ最近では完全にその行動が理解できるようになってきた。
「ポチ」
「はい、お嬢様」
目の前のブタ、いや違った! お嬢様に濡れたおしぼりを差し出す。
お嬢様はそれで手を拭くと、使い終わったおしぼりを床に投げ捨てる。
自分はそれを拾い上げ、次にクッキーのお代わりを用意。
そんなお嬢様は何をしているのか言うと、最近流行の恋愛小説を必死に読んでいる。
どこぞやの国の王子様が村で怪我をし、それを助けた村娘に恋をするという話だ。
おそらくは、その村娘と自分を重ね合わせているんだろう。
まぁ夢見る気持ちはわかります・・・
しかし、お嬢様『シンデレラ』だって見た目が麗しいから王子に選ばれたんですです。
美人だから王子は身分違いであろうと、綺麗だから・・・その娘に恋をしたんです。
だからお嬢様・・・一見ガマガエルかと見間違えるほどの 一瞬人間か???
と疑われる外見ではそのまま足蹴にされるのがオチですよ
しかし、心の中で何度もそう思っても決して言わない。
自分は空気の読める人間なのだ。そして何より命を大切にする人間なのです。
そんな中・・・事件が起きたのは、そんないつもと変わらぬ日々が繰り返されていた昼過ぎの事
突然村の中でけたたましく鐘の音が断続的に鳴り響いた。。
その鐘の音に思わずお嬢様が手にしていた”ふかし芋”も落としてしまうほどだ。
「お、お嬢様 警報です!」
「わ、わわわわわかってるわよ、落ち着きなさい!」
いやお前が落ち着けよ と思うが決して言わない。
そんなお嬢様を見れば 体のアチコチについた脂肪がぷるぷる震えていた
まるでゼリーだな・・・と思うが当然口に出して言うことは無い
「お嬢様、盗賊でしょうか、それとも魔物?」
この村は当然外敵に対する備えとして、当然村の周りに強固な柵が張り巡らしてあり、いくつかの矢倉もある重厚な備えをしている。
よほどバカな盗賊で無い限り襲ってこない、ましてや普通のゴブリンやオークなどの下級な魔物では かなりの大群でないと対抗できないほどの備えを有している。
なので、まぁ大丈夫だとは思うんだけど・・
「お嬢様、この村は近隣でも特に防備に力を備えています、そんじょそこらの盗賊や魔物ではこの防備を突破など・・」
「ゴブリンじゃない! 巨人族だ! かなりの大部隊だ!」
そんな自分の言葉を外から聞こえた村人の叫び声で速効否定された。
あれれ?
「嘘つき!」
「はい、ごめんなさい」
素直に謝る。
「だ、大丈夫よねポチ?」
お嬢様は心配そうな顔をこちらに向ける。しかし、憂いの眼差しを向けた少女というのは普通、美人を指す言葉だが、ガマガエルにそんな顔をされてもウザイだけだ。
「いや、たぶん正直きついかと」
「・・・」
「・・・・」
「・・・・・・逃げるわ!」
「はい。畏まりました」
これには速効同意するしかない。巨人族など早々出会うことさえない大物だ。
戦力にまったくならない自分達は逃げるのが正解。
「馬車をを用意しなさい」
「えっ? 馬車・・・って。すいませんお嬢様 おそらくそんな時間がないかと」
「じゃ、私に歩けって、そんなの無理よ!」
「では、せめて馬なら・・・」
「馬にあたしが乗れるわけないでしょ」
「・・・・はい」
そうでしたね すいません
「いや、違うわ! こんな危機にこそ、どこかの勇者が私を助けに」
なぬ? このお嬢様、どんだけアタマの中がお花畑なんだ!
このお嬢様は突然訳のわからん来るはずの無い未来の妄想を垂れ流す癖がある。だが普通に考えればこんな未来はありえない、いやあってたまるもんか!
いや、例え勇者が来たとしてもこんなスライムと見間違えそうなこの物体・・・速効に間違えて斬り殺されるだけだ。
・・・と心の中で思うが これも決して言わない。これも奴隷の辛いとこ。
そして空気を読める優秀な奴隷である証拠だ。
「とにかく何でもいいから用意しなさい」
「は、はい!」
相変わらずの無茶ぶりに困惑しつつも、急いで外に出る。
と・・・そこには何故か既に用意されていた荷馬車があった。
「あれ? なんで馬車がこんなとこに?」
馬が一頭に荷台がつながれている。
その荷台には大量に詰まれたまだ青々とした干し草。
収穫した干し草を貯蓄発酵するためサイロに運んでいる途中だったのか?
よくよく見れば都合の良いことに我が家の畑で使われている荷馬車だ。
これなら盗んだことにはならない。ナイスタイミング!
「お嬢様 外に荷馬車がありました、急ぎお乗りください」
家のなかで身支度をしているお嬢様に大声で声をかけると同時に、ハシゴを使い、屋敷の屋根に登る。
まず状況を確認しよう。
屋根から周りを見れば村の自警団は村の北に集中してるようだ。逆に南は完全に手薄。
巨人族は村の北側に攻撃をかけているのだろう。
そして、手薄な南門から村の女子供達が逃げだす様子が見て取れた。
ん?
何かがおかしい。巨人族はその戦闘力と同時に、かなり知性のある種族と聞いたことがある。
村の北だけ襲撃して、南などは完全に放置?
こんな穴のあいたザルのような襲撃方法を取るだろうか?
それに今は夏。収穫前であり、多くの穀物を得られない。
又、近隣でも防衛の固い この村をわざわざ狙う理由が無い。
しかも村の北だけに攻撃を集中し、まるで開いた南から逃げてくれといわんばかり。
「なんだこれは?」
しかし、そんな思考もブタの声、いやお嬢様の声に突然中断される。
「ポチ、どこよ!」
下からお嬢様の声が聞こえる。どうやら逃げる準備が整ったようだ。
急いで、ハシゴを駆け下り、そこに見た物は、両手に抱えきれないほどお菓子を抱えていたお嬢様。
「何してんのよポチ」
「・・・はい」
いや、あんたこそ・・・この場でもお菓子が大切ですか。
「馬車の用意ができたみたいね。急いで逃げるわよ」
「いや、実は、お嬢様」
「やかましい、とにかく逃げるの、いいわね!」
「・・・はい」
こうまで言われれば所詮身分違いの自分 逆らえる訳が無い。
とりあえず、クソ重たいお嬢様のお尻を押し上げ干し草の中に詰め込む
お尻を触られギャーギャーいっていたが、今は非常時だ我慢してもらおう。
「では行きます」
「は、はやく行きなさいよ!」
でっかいガマガエルを干し草の中に押し込みと、荷馬車を急いで発進させた。
「南が手薄なので、そこから逃げます」
お嬢様は何も言わない、おそらく干し草の中で震えてるに違いない。
口を開けばウザイだけなので、そのまま静かにしてくれれば実にありがたい。
多くの村人に交じり同様に荷馬車を疾走させ村の南門から急ぎ逃げ出す。
一応伏兵の危険性は考えていたのだが、自分の危惧した心配はどうや杞憂に終わらそうだ。
村人が続々南門から逃げているが近場にまったく巨人族の人影はなく、青々と実った麦畑が並んでいるだけ。
だが、ほっと安堵のため息を出した瞬間、それは起こった!
背後の麦畑の茂みの下から突然矢をつがえたゴブリン達が一斉に立ち上がった。
「伏兵!」
誰かが叫んだと同時に大量の弓が自分達に襲いかかる。
後ろに乗せた干し草に矢が次々に突き刺さる。
「あ お嬢様~ 大丈夫ですか?」
返事がない。
まさか死んだ? それをもなんとか分厚い肉に阻まれてなんとか助かってる?
とにかく後ろからしか矢がこないせいで大量の干し草を積んだ自分はなんとか助かっているが、お嬢様はヤバイだろう
しかし、今は逃げる事が優先。
必死に手綱を握りしめ、村の道を南に、そして黄昏の森と言われる村の南に広がる広大な森へと続く街道を必死に逃げた。
幾ばくが時間がかかったのだろか?
気付いて見れば周りは黄昏の森の中と分かる場所にいた。
気付けば他の村人の姿はなく、自分達の荷馬車だけがそこにいる。
「あれ、自分達だけ?」
皆死んだのか?
それともはぐれたのか?
馬を止めて,周りを見ても誰もいない。
「あ、そうだお嬢様!」
あんなナリでも一応は自分の主人。
で、お嬢様の安否を確認しようと馬を下りた瞬間!
背筋に何か凍るような視線を感じる!
「!!!」
これはなんかヤバイ、自分の第六感に警報が鳴り響く。
ゆっくりと、今度は注意深く辺りを再度見渡してみる。
「えっと・・やはり誰もいない?」
いや! よくよく見れば鬱蒼と茂る森の中にい大勢の気配!
森の中に魔物? ここでも伏兵?
もう一度逃げ・・・れないだろうなぁ
その気配は前も後ろもアチコチから感じるからだ。
もうここまでかと観念した瞬間、森の茂みの中から次々と人型の異形の存在が現れる。
やはり、その数は10や20じゃない、おそらくは100以上。
完全に包囲されてるなぁ。
観念しつつ、その姿を現した魔物・・・・魔物? いや魔物・・・じゃない!
人型でも、綺麗な服装を纏いその服装は、我々村人よりもはるかに豪華。
だが根本的に違うのは頭に生えた角や、蝙蝠に似た翼や、しっぽなど明らかに人とは異なる風貌
・・・噂に聞いたことがある、魔族と呼ばれる存在だ。
「あぁこりゃ詰んだ・・かな?」
なんでこんな所に魔族が? とは思うが、現実問題目の前にいるのはどうしようもない現実なのねん・・・うん、無理!
ここで自分達は死ぬのかと覚悟を決めた瞬間!
次々と走馬灯が自分の頭の中を走る。
はぁ・・・結局童貞のまま自分の人生は終わるのか・・。
キスもした事ないのに・・・終わるのか・・。
いや、そもそも女の子と手を繋いだことも、いやカタリナお嬢様とならあるな。つまり、あの豚と手を繋いだことが自分の・・・
いやーーそんな人生いや過ぎる!
だけど、もうこの状況じゃ何足掻いても無理だな、せめて来世は
異世界なんかに転生してハーレム作りたい・・・いや無理か・。
はぁ・・・そうやって人生を諦めかけた時・・・。
思いがけないことが起こった。
しばらく唖然とその状況を見るしかなかった自分に、異形の集団が口をそろえ平伏し、言い放つ!
「「お待ちしておりました我が主よ」」
「・・・・・・・・・・・・・・・・えっ?」
どーゆーこと? 意味が分からないよ