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ナイトメア・スクール

作者: 風間ミドリ

息抜き作品です

「ねぇコウイチ、コウイチは今の生活って退屈じゃない?」

 サキは僕にそう問いかけてくる。

「なんで?」

「だって、毎日毎日学校に来て、勉強して、友達と下らない事喋って部活して、それの繰り返し」

「充分、刺激もあるし幸せな事じゃないか」

「えー、つまんないじゃない、もっとこう、刺激が欲しいとか思わないの? 私は思う。

 漫画や映画みたいに何か事件や事故に巻き込まれて、非日常的なサスペンスな世界へ、って思う」

 僕の反応に不服そうに頬をふくらませた彼女は、そう言って目をキラキラさせながら天井に手を伸ばす。

「……漫画の読みすぎだよ」

 僕は溜息をつくと、読んでいた本を閉じ、机の一箇所をちらりと見る。

 そこにある、非日常。


 人の鼻から手が生え、その上には唇が宙を待っている。

 ズルズルと指で机の上を這い、浮いた唇からキャラキャラと奇妙な声を上げている。


 僕はソレから視線を外すと、隣に座るサキを見る。

 彼女は退屈そうに肘をついている。

「こういうなんでもない日常が、一番貴重で大事だったりするんだよ」


 彼女には見えない、他の誰にも見えない。

 僕だけが見えている世界、歪んだ日常。


 となりには、蝋のように白い肌をして、着物を来た顔のない人が何をするでもなく、ただ立っている。


「コウイチってば考えがジジくさい……」


 彼女の不満そうな声と同時に、昼休みを終わらせるチャイムが鳴り響く。


「あぁ、ほら、掃除に遅れると皆がうるさいから、早く行こう」


「はいはーい」

 

 図書室から出、何人かの生徒とすれ違いながらサキと一緒に掃除場を目指す。

 と、その時――


 キーン、こーん、かーん、こーん。


 再びチャイムが鳴る。

「?」

 サキもハテナ顔をしている、放送部の間違い放送だろうか?


 そう思った瞬間、全ての光が消えた。


「え!?」

「キャッ!? え!? 何!?」

 後ろのサキが悲鳴を上げながら僕の裾を掴んでくる。


 廊下の電気が全て消えている。教室の中も。

 それだけならただの停電かもしれない、けれど、外の景色まで真っ暗だ。

 

「ね、ねぇコウイチ、何アレ……?」


 サキがそう言って中庭を指差す。

 光なく、真っ暗な闇に沈んだ中庭、しかし漆黒ではない、ぼんやりとだが人影が見える。

 けれど、動きがおかしい。

 

 明らかに、マトモな人間がする動きじゃない。

 その人影は、グニャグニャとまるでタコの様に、関節を考えない動きをしている。

 それが幾人も。


 そして気づいた。

 

 頭が無い。


「ねぇ、コウイチ……アレ、にんげん?」

「サキ、アレが見えてるの……?」

 

 僕だけが見ていた日常。

 ありえない非日常。


「きゃああぁああああ!?」


 サキが僕の方を見ながら叫びへたり込む。

「サキ!?」

 僕は屈むとサキの手を掴む。


 サキの目線、振り返ったそこには、さっき図書室に居た、色白の何かに似た。

 いや違う、同じように蝋のような肌にしかしその顔は目だけが無い。

 それなのに、何故か、こちらをじっと見ているのだと感じる。


 いくつもの視線を感じる。

 

 不意に、立っていたソレの口から「どうも」と小さく聞こえた。

 

 そしてそいつは歩き出す。


 ヒタリ、ヒタリと裸足を廊下に響かせながら、そいつは僕とサキの横を通りすぎていく。

 サキは目を見開いて今にも泣きそうな顔になっている。


 何なんだこれは、一体何がどうなって。


 わけがわからない。


 ヒタリ、と、通り過ぎたそいつの足が不意に止まった。

 目のない顔が振り返り、僕を見る。

 お出口はあちらですよ、と、消え入るような声で僕背後に伸びる廊下を指差す。


 僕とサキは黙ってそちらを見る。


 伸びた廊下、その先、曲がり角から。

 

 ズルリ、と青白い何かが這い出してきた。


 サキが声にならない悲鳴を上げる。


 駄目だ、いけない。

 ここは僕とサキがいていい世界じゃない。

 ここは違うところだ。


 なんとかサキを立たせようと手を引くが、腰が抜けているのか、サキはひたすら首を振って立ち上がらない。

「だ、ダメ、も」

 

 ズルリ、ベチャ、と引き摺り、湿った音を立たせながら、背後の廊下から何かが近づいてくる。


「サキ、見たら駄目だ、僕を見て」

「コ、コウイチ、でも、私、あれ」

 

 ガタガタと震えながらサキが僕と背後を交互に見る。

 


 ズルリ、ベチャ



「や、だ、コウイチ」



 ズルリ、ドチャ



「見たらダメだサキ、目を瞑って!」



 ズルリ、ズル



「だ、ってだって、それ」



 ズルリ、ヒタリ




 トン




「わた、し」



 僕の意識は、そこで途切れた。



ジャンルホラーですが特に怖くはないかもしれません。

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