金月と一華の場合。=3=
金月は大通りへ出ると、秋紅に言われたスーパーを目指していた。
カランコロンと歩く度に下駄が音を鳴らしており、涼しげだ。
ふと、路地から複数の人の気配がし、立ち止まった。
その瞬間、金月より背の少し高い人が横の路地から飛び出して来て、勢いよく曲がった拍子にぶつかった。
「いったー…って、ヤバい。ごめん!」
ぶつかった拍子に押し倒された金月は上に乗っていた人間が立ち上がると同時にゆっくりと起き上がった。
「大丈夫?」
差し出された手を取り、立ち上がる。
「お詫びをしたいけど、今時間も余裕も無いんだ。ごめんなさい。」
周りをちらちらと気にしている人は金月に申しわけなさそうにそう言うと再び駆け出そうとした。
が、金月が腕を掴み止める。
「駄目。」
「え…」
「こっち。」
金月は腕を引っ張り、もう一つ先にある路地へ入った。そして、壁に人を押し付けて固定する。
「ちょっと!何よ、放して!!このチビっ!」
暴れる人の口を抑え、耳元に口を寄せた。
「静かに。」
途端、身体に力が入らなくなった。慌て出す人は信じられないという目で金月を見た。が、横を黒服が通り過ぎ、金月が手を放すと今度は金月へ先程とは違う目を向けた。
「あなた…何で…」
「…何したか知んないけど、気を付けて。」
無表情で人を見ると、金月はその場を去ろうとした。
三ツ葉屋、特売終わる。
金月の頭の中にはもうそれだけだった。だが、腕を掴まれ再び視線を戻す。
「私は藤堂一華。あなたは…いえ、名前を聞く前にちょっと一緒に来てくれる?…異論は認めないわ。」
強引に手を引っ張られ、金月と帽子を取った人…一華は走り出した。
だから、それ頼みじゃないじゃん。