金月と一華の場合。=2=
神無月神社の裏にある家の中。とある一室に一人の青年がいた。髪の先に成る程赤髪へと変化している銀の長髪を一つに纏め三つ編みにしており、金色に近い茶色の瞳だ。そんな青年は机に突っ伏し、寝ていた。
「おい、金月。ちょっと遣いを頼んでいいか?」
庭と部屋を分ける障子を開け、銀髪の青年が入って来た。金月はピクリと反応するとゆっくり顔を上げた。
「何…雪音兄さん。」
雪音と呼ばれた青年は寝ぼけた金月を見ると慣れた様子で一度溜め息をついた
「遣い。金渡すからこれに書いてあるやつ買って来い。」
一枚の紙と財布を差し出し、金月を促す。
「頼みじゃないじゃん。」
「うっさい。鍋、火に掛けちまったから離れらんねぇんだよ。第一、暇だろ?暇人だろ?暇人だよな。よし、行って来い。」
雪音と金月は桜山に住む鬼の五兄弟の次男と四男である。
長男以外は人と鬼の間に生まれた所謂、半妖というやつで今は長男を除く兄弟4人で人と妖怪の世界に繋がる神無月神社を切り盛りしている。食事当番何かも回しており、今週は雪音の当番であった。
雪音は機械が苦手だ。昔から七輪と釜戸が限界で近代的な料理でも昔ながらの物を使う。
なので時たまこのように途中で買い出しを頼みに来るなんてことがある。
「分かった。」
飯は美味いからいいや。と金月は思い素直に雪音から物を受け取る。
「お、買い出し行くんけ?」
洋服に着替え、玄関で下駄を穿いていると紅い髪の青年がやってきた。
「秋紅兄さん。」
「買い出し行くんやったら、三ツ葉屋行き。今日、六時まで特売やっとるで。」
けらけらと笑いながら言ってくる三男、秋紅を横目にちらりと見ると、金月は玄関の戸を開けた。
「行って来ます。」
「いってらー」
現代的な話し方をする秋紅は玄関が閉まるまで金月に手を振っていた。