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まいそうる  作者: 魯迅Z
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この小説はフィクションなので、でてくるものもみんなフィクションです。


賑わう街とリア充たちを後目に、息が切れるほどに声を張り上げ、叫んだ。

「爆発しろ!」

一瞬だけ周囲が静まり返った。かと思いきや、すぐに周囲はざわめきだした。

「え、やだぁなにあれ?オタク?キモいんですけどぉ」

「犯罪者予備軍」

「うっわまじきめぇ。ちょーありえねぇしぃ」

なんていう嘲笑の声が聞こえてくる頃には、俺は涙目になり、耳と目を閉じ前のめりになりながら前方へ駆け抜けた。

街の喧騒から離れ、周囲の嘲りも耳に入らない静かな場所まで逃げきったころだろう。痛む胸と切れた息を整え、ついに耐えきれなくなった涙腺が弛んだ。

「アハハぁハアハア。ついにやったぞ。やったんだ。これで俺は無敵だはははぁ……はあ」

なんて心にもない無意味な呟きを口にする。積もった雪に顔をうずめ、呼吸を止める。

――嫌なこと続きだった。

もうどうにでもなってしまえと思った。そして本当にどうにかしてしまったんだからどうかしてる。

息を止めるのもそろそろつらくなってきたので、仰向けになった。そして上着のポケットから哀フォンもとい愛フォーンを取り出してツイッターを開いた。

『なんかキモい奴いたwww「爆発しろ」とか叫んでたwww』

『うるせえよwwwRT@tarakocyanなんかキモい奴いたwww「爆発しろ」とか叫んでたwww』

『お前かよwwww何やってんのwwwRT@hyakkinうるせえよwww』

なんてフォロワーとくだらないやり取りをやりとりをして顔が弛緩する。最高にキモいだろうな俺の顔。

『@hyakkinで、いまどこに居んの?なんなら行くけど』

『@tarakochanちょっと街から離れたところにいる公園で一息ついてるけどやめとけ。池面過ぎてヌレヌレになんぞ』

『@hyakkinおk今から行くわ。ちょっとまっとれ』

『@tarakochanマジでくんのかよやめとけ。マジレスすると本気で不細工だから』

そこでTL上でのやりとりは途切れた。正直、ちょっと期待した。けどそんな期待はすぐに絶望になった。

成績は中の中。進行形で落下中。顔も悪いし、運動もできない。蔭では透明人間なんて呼ばれてることだって知ってる。空気だった。

――死ぬのも時間の問題かな。

そう考えて、呼吸が荒くなったこともある。日々が惰性だった。つまらないつまらないつまらないつまらない……。

そんな人間とあっても絶望するだけだ。面白いのもネットの上だけで、リアルではただただつまらない人間なんだから。

でも、どうせフォロワーが一人減るだけか。なんて考えると少しは気が楽になった……かもしれない。なんだかんだ言っても実際に人から嫌われるには馴れてない。

額に腕をかぶせ、嘆息する。

「ほんとに、なにやってんの?こんなとこで」

「うるさいよ」

「恥ずかしくないの?」

「恥の多い生涯だったからね。どうでもいいよ、もう」

「でも結局アレの主人公だって『リア充』だよね。非リア充が言っても意味ないんじゃないの?」

「うるさいよ。あんな文学的な気分に浸りてぇんだよ。邪魔スンナ」

瞼を開いて、見上げる。知らない、天井だ。うん、嘘だけど。天井なんてねぇよ。

傍らに誰かが屈んでいる気配がした。ていうかいる。

「んじゃあさ、ちょっとだけ付き合ってよ。私もいま一人だからさ」

弱弱しいか細い声に聞こえた。厚い、またすぐ降り出してきそうな冬空の下で。吐息の音だけが空間の面積を割り出していた―――


 匿名をかさにきて、思ってもみないことを呟いてみたり、犯罪予告をしてつかまったりなんかしてた。ちょっと前に駅で人を殺す旨の犯罪予告があったことを思い出した。本当に殺すつもりなんかないのに得意げにチキンレースに参加してみたりして、つかまってしまうのは本当に馬鹿だと思った。

 彼女のメガネは伊達だった。かくいう俺だってネットの上より饒舌だったかもしれなかったし、そうじゃないのかもしれなかった。あれからずっと彼女に付き合わされていたのだ。


「わたし今おなかん中に赤ちゃん居んの」

「嘘」「マジ」「父親は?」「うちの親父」「うげえ」「パパにしておじいちゃんになるんだよ笑っちゃうよね」「堕ろさないの?」「うん」「どうして」「なんかさーむかつくじゃん」「なにが?」「孕まされたこと。決まってんじゃん」「だったらなおさら堕ろしたほうがいいんじゃねえの?」「だってさ、そんなことしたら全部無かったことにされんだよ?だったら『これはお前の子供だ』ってつきつけてやったほうが裁判でも有利になる感じじゃん」「子供のこととか考えてねえの?生きてんだよ、それ」「モチ押しつける」「虐待とかされたらどうすんの?お前の親父ぜってえ子供殺しちゃうよ?責任とれんの?」「とれるわけないじゃん、あたりまえだけど」

 俺は唖然として彼女の顔を見遣った。TLでも一切仄めかされなかった新事実にさすがにおどろいていた。彼女は自分の父親にレイプされたところで毅然とした態度をとれるほどにはタフなようだった。でもやっぱりありえねえよ。ホントどうなっちまってるんだこの国は。精神病んで自殺する奴は3万人もいるわ、女であれば自分の娘とでもやっちまうような父親はでてくるわ。そういった意味では彼女のタフさは現代日本においては類稀なるものでアンチテーゼらしかった。

ワーオ

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