第6話 ライバルの出現
学院の広間で、ティアは昨日の調合競技の余韻に浸っていた。
隣にはいつもの仲間、ミナとアイラ。二人の静かな笑顔が、心の支えになる。
「ティア、今日の授業は何かな?」
ミナが元気よく聞く。ティアは少し肩をすくめながら、廊下を歩き始めた。
◆◆◆◆
教室に入ると、先輩が黒板の前に立っていた。
「今日は特別授業だ。――新入生同士の『調合競争』を行う。互いに相手の作業を見ながら、誰がより正確に、効率的に合金を作れるかを競え」
ティアの心臓が小さく跳ねる。競争……しかも見られながら?
「……ドキドキするね」
ミナが小声でつぶやく。アイラは淡々と準備を整える。
教室の一角、窓際に座る少女が視線を向けてきた。黒髪を長く垂らし、深い緑の瞳――ティアを意識しているのが一目でわかる。
「……あの子、新入生よね」
ティアは軽く頭を下げる。
「はじめまして、ティアです」
少女は冷ややかに笑みを浮かべ、フラスコに指を触れる。
「私はリセ。今日から、あなたが私の相手になるわ」
――その瞳には、明らかな挑戦の色が宿っていた。
◆◆◆◆
競争開始の合図が鳴る。ティアはフラスコを手に、慎重に材料を計量する。
リセも同じく作業を始め、魔力を注ぐ手つきは熟練者のように見える。
ミナが小声で囁く。
「ティア、負けないで。落ち着いてやれば大丈夫」
アイラも静かに頷く。
「観察と反応。焦らなければ必ず勝機はある」
ティアは息を整え、粉状の金属と液体触媒を混ぜる。フラスコ内の反応は少し揺らぐが、深呼吸して魔力の流れを調整。
リセは優雅な手つきで混合し、フラスコは美しい光を放つ。ティアはその輝きに少し焦りを覚えるが、仲間の声を思い出す。
「大丈夫……私もできる」
◆◆◆◆
競争が終わり、評価が始まった。先輩たちは厳しい目で成果を見つめる。
「ティア……精度は悪くない。しかし、魔力の注ぎ方がまだ荒い。リセとの差は明確だ」
ティアは肩を落とす。ミナがそっと肩を叩き、励ます。
「大丈夫! ティア、今日も頑張ったんだから!」
アイラも静かに微笑む。
「経験は力になる。今回の負けも、次に生かせばいい」
ティアは胸の奥で、小さくうなずいた。負けたことは悔しい。でも、この悔しさが自分を強くする。
◆◆◆◆
放課後、校庭で三人は歩く。夕日に塔が長く影を落とす。
「リセ……強いね」
「ええ。でも、私も負けてはいられない」
ティアは心に決意を刻む。
「次は、もっと正確に、もっと早く。絶対に追いついてみせる」
ミナとアイラの笑顔を見て、ティアは力強く前を向く。
――こうして、ティアの錬金術師としての挑戦は、新たなライバルとの出会いによって加速するのだった。




