第5話 知識と実技の調合競技
普段とは違い、静かな教室。
ティアは緊張しつつ、自身の席についた。
今日は学院での「調合競技」。知識と実技の両方が試される、一種の能力評価だ。
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教室にはフラスコ、秤、色とりどりの薬品が整然と並んでいる。
「おはよう、ティア」
振り向くと、ミナ・アルテアが元気よく手を振っていた。
「おはよう、ミナ」
隣にはアイラ・ヴァレンタイン。静かに本をめくり、落ち着いた紫色の瞳でティアを見つめる。
「今日の競技は、焦らず正確に。魔力の調整を間違えれば、結果は予測不能になる」
ティアは背筋を伸ばし、深くうなずいた。
「……はい、頑張ります」
「ティア、大丈夫! 私たち、ついてるから」
――仲間がいる。少し勇気が湧く。
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試合開始。今回の課題は二種類の金属を正確に調合し、指定された新しい合金を作ること。
ティアは粉状の金属、液体状の触媒を慎重にフラスコに入れ、魔力を少しずつ注ぐ。
「火力を少し落として。温度が上がりすぎると化学反応が不安定になる」
アイラの指示に従い、フラスコ内の化学反応を見守る。淡い光が揺らめき、やがて安定した色合いと光沢が現れた。
「……できた?」
隣のミナが拍手しながら笑顔を向ける。ティアも思わず笑みがこぼれる。
「よくやった、ティア。焦らず進めたのが良かった」
アイラも静かに微笑む。
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午後は講評。先輩たちからの評価は厳しいものもあった。
「ティア・ルーシェ、調合の精度は悪くない。だが、魔力の注ぎ方にまだ粗さがある」
指摘に少し顔をしかめるティア。
「……はい、次はもっと気をつけます」
「気にしすぎないで! ティア、今日本当に頑張ったんだから!」
ミナの励まし、アイラの言葉にうなずき、ティアは小さく胸を張る。
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競技を終えた三人は、塔を背に歩く。
「今日の調合、ちょっと緊張したけど楽しかったね」
「ええ。少しずつだけど、理解できるようになってきた気がする」
ティアは胸の中で決意を新たにする。
「……錬金術師として、少しずつでも成長するんだ。失敗しても、仲間となら乗り越えられる」




