ー1ー 地縛霊の幽霊少女
『ーーーーーーー』
瞼が重い。
誰かの声が聞こえてくる。
『ーーおーてーー』
おきてーーそう言われている気がした。
私はその声に従うように目をゆっくりと開ける。
(ベット?)
私が眠っていたのは、大きい木製のベットだった。
(……う…ぅ…)
突然、私の頭の中に大量の情報が流れ込んで来て頭を抱える。
しかし、その痛みはすぐに治った。
……それにしても暗い。
暗いのに、辺りが何故かよく見える。
辺り見たところ、此処は大きな部屋の中……らしい。
おもちゃや絵本がたくさんあって、かわいいぬいぐるみもいっぱいある。
女の子の部屋?
所々に絵画や金色の装飾などもあって、子供らしい部屋と言うより“少し豪華でおしゃれな子供部屋”とでも言えばしっくりくる。
ベットから降りる。
目の端で白のスカートがふわりと浮いた。
その布には、半透明の白にたくさんの花模様ーー
ーー私は真っ白なワンピースを着ていた。
どこにも汚れが無く、とても綺麗な白色を保っている。
そこで、ふと、疑問が浮かぶ。
どうして私は白いワンピースを着ているのだろうかーーー
よくよく考えてみれば、暗くて何も見えない筈なのになぜ見えるのだろうか。
その時点で気付かなきゃおかしいのに、それが自然体であるかのようであった……
私はもう一度自分の体を見渡す。
腕から順に足へと目を流していくとーーー足が透けていた。
私は驚き、尻餅をついてしまった。
恐る恐る自分の足に手を伸ばす。
ピタ。
冷たい感触…まるで生きてないかのようで…
……不思議と違和感は無い。
逆にこれがしっくり来ていた。
カーテンを少し開くと広いお庭が見えた。
その時に不思議と此処が大きなお屋敷の中だとわかった………いや、感じた?
何というか、このお家全部が私の頭の中と繋がっている感じがする……
ふと、歩き回っていると妙に体が軽いことに気付いた。
下を向いて見れば足が透けていた。
私は混乱する。
足の感覚が無くて、見てみると透けてました…なんて誰でも戸惑う。
だけど、不意に頭の中から「あなたは幽霊……地縛霊」なんていう言葉が聞こえて来た。
気付けば、私はその事実に自然と納得しているらしかった。
なぜさっきまで混乱していた私がいきなり納得出来たのかはわからない。
けど、なんとなく無理矢理納得した感があった。
さっきの声は誰だったのだろうか。
男か女かよくわからない不気味な声だった。
ふと、
部屋の壁に掛けてあった装飾の綺麗な鏡で自分の姿を見てみる。
『少女?』
もっちりしたほっぺに、腰まで伸びた黒髪。
目はぱっちりとしていて、自分でも可愛いと思える程に顔が整っていた。
その時、自然と『11』という数字が頭の中に浮かんだ。
11…?あ…自分の年齢か…
自分の姿を見た瞬間に私は11歳だったなって不思議としっくり来た。
自分の感覚では16辺りだと思ってた。
色々と思い出そうとした時…突然目の前に黒いモヤが現れた。
(!?)
咄嗟に後ろに下がろうとするが何故か動かない。
その黒いモヤは大きな口を見せると、私は自分の中にある大事なナニカを吸わる。
そして、私はその場に倒れた。
ーーーーーーーーーー
ふと、目が覚めた。
暗い部屋。冷たい床。
軽い体。
私、幽霊らしいの。
あれ?私、幽霊…?
まぁいっか…なの!
それにしても幽霊なら空飛びたいの。
鳥さんのように飛べたらなぁ〜。
やっぱり、私、なにか大切な事を忘れてる気がするの。
口調も何か違和感を感じるし…
死んじゃう前の記憶。なにかやり残した事が……あれ、まず私って誰なんだっけ?
う〜ん。え〜と。わかんないの!
何も思い出せないの。
……まあ、それより、この部屋を出てみるの。
ガチャ。
わっ! 光が眩しいのっ!
というか、めちゃくちゃ広い廊下なの!
夕日の影で辺りが照らされていて、夕日の光の反射で輝いてる装飾品も合わさってとっても神秘的なの…
シャンデリアがたくさんあってお城みたい。
でも、ほこりとか物とかが散らばっていて汚いの。
まるで誰も使ってないみたいなの。
トテトテ。
まずは少し、このお家の中を探検してみることにするの。
もしかしたら人がいるかもしれないの。
トテトテ。
(それにしてもすごい廊下なの)
おひさまの光が中に差し込んできてきれいなの。
なんかしんぴてき。
ガチャ。
(わ〜広い部屋)
ガチャ。
(わっ! 服がたくさんなの!)
他にもいろいろ見てみたの。
食器がたくさんある部屋、写真が沢山飾ってある部屋、書類がいっぱいある部屋、色々とあって面白かったの。
3階もあったけど、外に出たいから上には上がっていないの。
それにしても、どこもとっても広くて驚きすぎちゃったの。
でも、物はたくさんあったのに、人はひとりも居なかったの。
ほこりもたくさん散らばっていて、いろんな所に蜘蛛の巣がいっぱいあったの。
途中、椅子の上にホコリをかぶったくまのお人形さんを見つけたの。
小さくて可愛くて思わず『ぎゅー』ってしちゃって、幽霊なのにほこりを被っちゃったの。
ちなみにこのお人形の名前は「くまさん」なの。
そのあと、くまさんと一緒に地下に続く階段を降ったの。
そこは暗かったのによく見えて、不思議とこわくなかったの。
やっぱり私幽霊だからかな〜。
つまり、今ならどんな脅かしもヘッチャラなの!
さぁ、ばっちこいなの!
外にやって来たの。
あ、怖そうなワンちゃんなの。
ワンっ!
(きゃぁぁぁ!!)
ワンっ! ワンっ!
(きゃぁ!! 野生のお犬さんが吠えてきたの! 逃げるのぉ!)
ワンっ!!!
(怖いの!お犬さん苦手なのぉ!!!)
ーーーーーーーーーー
(ふえぇぇ〜。ここまで来ればもう大丈夫なの〜)
キョロキョロ
ここは花が沢山咲いていているの。
真ん中には噴水もあるし多分お庭なの。
あ、このオレンジ色の花、とっても綺麗なの。
あれ、もしかしたら白色かもしれないの。夕日で見間違えたの…
それにしても、このお庭広いの。
お庭じゃなくて、もう公園なの!
(ん…どこまであるのか気になるの!)
トテトテトテトテ。
(花の道なの。雑草がいっぱいだけど、バラが綺麗なの)
トテトテトテトテ。
大きい鉄の柵を超えたの。
トテトテ…ゴンッ!
何かにぶつかったのー!
(うぅー! 見えない壁なの! おでこが痛いのぉ…)
大きい柵から離れた所にこんなものがあるなんて知らないの。
眼をいくら凝らしてもなにも見えないのに、なぜか強く押し返されるの。
もっと先を冒険したかったの…。
不定期でゆっくり書いていきます。